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平成十一年二月二十三日受領
答弁第四号

  内閣衆質一四五第四号
    平成十一年二月二十三日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員東順治君提出我が国の政府開発援助(ODA)に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員東順治君提出我が国の政府開発援助(ODA)に関する質問に対する答弁書



一の1及び2について

 政府開発援助(以下「ODA」という。)は、開発途上国の安定と発展のための支援を通じて、国際社会の平和と繁栄に重要な役割を果たすとともに、開発途上国との友好関係を一層増進し、資源や市場を海外に大きく依存する我が国の国益の増進にも資するものである。また、世界で今なお多数の人々が飢餓と貧困に苦しんでおり、環境、人口等地球規模の問題が山積している状況で、ODAを通じてこれらの問題に取り組んでいくことは、国際社会における我が国の重要な責務でもあると考える。
 このようなODAの重要性にかんがみ、政府としては、厳しい財政事情の下ではあるが、今後とも二国間援助及び国際機関を通じてこれらの問題に取り組んでいくのに必要なODA予算を確保していくことが重要であると考える。今後とも、国民の理解を得つつ、ODAの一層効率的かつ効果的な実施に努めてまいりたい。

一の3について

 援助の重複を避け、被援助国のニーズの全体像をとらえた上で、きめ細かい援助を進めていく必要があるとの点は、御指摘のとおりである。政府としては、昨年、小渕内閣総理大臣の指示により関係省庁間で申し合わせた「ODAの透明性・効率性の向上について」(平成十年十一月二十七日対外経済協力関係閣僚会議幹事会申合せ)に基づき、各被援助国に対する援助の重点課題、分野等を明確にし、案件選定に当たっての指針となる「国別援助計画」を順次策定し公表することとしており、当面、主要十か国程度について本年のできるだけ早い時期に策定すべく作業を進めているところである。また、ODA関係省庁間の効果的かつ効率的な連携及び調整を図り、各省庁、実施機関による事前調査に重複がある場合には必要な調整を行うこととしている。さらに、各種援助形態間の連携の強化、民間援助団体(NGO)、地方自治体等との連携の強化、民間の人材の一層の活用等を通じ、きめ細かい援助に努めていく考えである。
 なお、現在十七の省庁がODA事業を行っているが、中央省庁等改革基本法(平成十年法律第百三号)第十九条は、外務省の編成方針として、政府開発援助のより効果的かつ効率的な推進を図ること、対象国に関する総合的な援助方針の策定その他の政府開発援助に関する全体的な企画及び有償資金協力に関する企画立案について、政府全体を通ずる調整の中核としての機能を担うこと、技術協力に関する企画立案について、政府全体を通ずる一元的な調整の中核としての機能を担うこと等を規定しており、中央省庁等改
革による新たな体制への移行後は、この規定を踏まえ、外務省を中核とした関係省庁間の調整を行っていく考えである。

二の1について

 政府は、平成九年九月に発表された環境配慮のための円借款金利低減策により、金利年〇・七五パーセント、償還期間四十年(うち据置期間十年)という極めて緩やかな円借款供与条件を導入した。この供与条件が適用される案件については、経済協力開発機構(以下「OECD」という。)の輸出信用アレンジメント上認められる範囲内で我が国企業の事業参加機会の拡大を図ることとしている。
 さらに、昨年十二月には、緊急経済対策の一環として、アジア諸国等における経済構造改革支援を目的とする特別円借款を導入した。これは、三年間で六千億円を上限としてアジア諸国を中心とする経済危機の影響を受けた途上国に対して供与される円借款であり、被援助国の経済、社会基盤整備を通じて雇用促進及び景気浮揚を図ると同時に、OECDの輸出信用アレンジメント上認められる範囲内で主契約者を我が国企業に限定する調達条件を援用することにより我が国企業の事業参加機会の拡大を図ることとしており、アジア経済の再生とともに我が国国内景気対策に資することが期待される。

二の2について

 我が国の無償資金協力予算の過半を占めるプロジェクト型無償資金協力(一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力)においては、供与資金の効率的な利用の観点から、その供与資金により調達される生産物及び役務の調達先に関し、我が国と被援助国との間で締結される交換公文において、供与資金は基本的に日本国又は被援助国の生産物及び日本国民又は被援助国民の役務を購入するために使用される(国民という語は、日本国民の場合は日本国の自然人又はその支配する日本国の法人を意味し、被援助国民の場合は被援助国の自然人又は法人を意味する。以下同じ。)としつつ、両政府が必要と認める場合には、日本国又は被援助国以外の生産物及び日本国民又は被援助国民以外の役務の購入に使用することができる旨規定している。この規定に従い、プロジェクト型無償資金協力においては、日本国の生産物又は日本国民の役務のみならず、被援助国又は第三国の生産物及び被援助国民又は第三国国民の役務も購入されている。
 他方、我が国の経済協力の実施に当たり、被援助国において我が国の援助であることが十分に認識されるよう努めるべきであるとの点は、御指摘のとおりである。この観点から、プロジェクト型無償資金協力においては、その供与資金による生産物及び役務の購入について、通常、被援助国政府は日本国民と契約を締結することとしており、日本国民が援助の実施に重要な役割を果たすことを通じ、我が国の援助であることが被援助国において認識されやすいよう配慮されている。
 なお、無償資金協力の目的は、開発途上国の自助努力を支援することによって、その経済及び社会の発展、国民の福祉の向上並びに民生の安定に寄与することにあるが、特に現下の我が国経済の厳しい状況にかんがみ、緊急経済対策の一環として平成十年度第三次補正予算において計上されたアジア諸国等復旧、防災等支援及びアジア諸国経済構造改革支援のための無償資金協力予算の執行に当たっては、可能な限り我が国の生産物の購入を促すよう努める考えである。

二の3について

 政府は、被援助国の主体性を重視し、その自助努力を支援するとの考えを援助の基本理念としており、相手国からの要請を確認して援助の実施を検討することを原則としているが、近年は単に要請を受け身に待つのではなく、相手国に積極的に助言を行い、相手国政府との緊密な意見交換及び協議を通じて援助案件を共同で形成するよう努めている。また、各被援助国に対する我が国援助の重点課題、分野等を明確にし、案件選定に当たっての指針となる「国別援助計画」を順次策定し公表することとしており、当面、主要十か国程度について本年のできるだけ早い時期に策定すべく作業を進めているところである。
 このような努力を通じて、御指摘の貧困対策、環境、衛生問題等についても、相手国のニーズや援助吸収能力を的確に把握して、効率的かつ効果的なODAを推進していく考えである。

二の4について

 ODAプロジェクトは、我が国の資金的又は技術的支援を受けて、開発途上国自らが行うものであり、会計検査院が相手国のこのような事業に関して会計検査を行うことは、相手国の立場及び権利の尊重との関係から不適当である。
 ただし、会計検査院においては、援助実施機関である外務省、国際協力事業団(以下「JICA」という。)、海外経済協力基金(以下「基金」という。)等に対する検査を行うとともに、その活動の一環として、これら機関の職員立会いの下に相手国の協力が得られた範囲内で海外の案件視察を行い、ODAプロジェクトの実態の把握に遺漏なきを期していると承知している。
 御指摘の中華人民共和国(以下「中国」という。)の鰻の養殖の件は、基金による民間企業に対する貸付けの事例であるが、会計検査院から、平成八年度決算検査報告において、基金が「有効な債権保全措置を執らないまま貸付けを実行したため、貸付金十億五千万円の回収が困難となっていて、不当と認められる」旨指摘されたものである。会計検査は、日本側援助実施機関の行為に対して実施されるものであり、これまでにこの事例を除き不当事項として指摘されたものはないと承知している。

三の1について

 我が国の度重なる抗議にもかかわらず中国の核実験が継続されたため、我が国は、政府開発援助大綱(平成四年六月三十日閣議決定)を踏まえ、平成七年八月、対中国無償資金協力について、新規の供与を原則として停止した。その後、平成八年七月の核実験を最後に、中国は核実験を停止し、また、包括的核実験禁止条約に署名した。こうした中で、我が国は、平成九年三月に無償資金協力を再開した。
 一方、インド及びパキスタン・イスラム共和国(以下「パキスタン」という。)は、国際的な平和と安全を支える主要な柱の一つであり、中国を含め国際社会のほとんどの国が参加している核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)への加入を拒み続けており、また、包括的核実験禁止条約に未署名である上、国際社会のほとんどの国の支持による包括的核実験禁止条約の採択等の近年の国際社会の流れに反し、平成十年五月に核実験を強行した。すなわち、インドは、一度目の核実験の後、我が国を始めとする国際社会が核開発の早期停止、核実験の即時停止等について強く申し入れたにもかかわらず、二度目の核実験を強行したものであり、また、パキスタンは、インドの核実験を受けて我が国を始めとする国際社会が強く自制を申し入れたにもかかわらず、核実験を強行したものである。これらの点を勘案し、インド及びパキスタンについては、無償資金協力の新規の協力の原則停止に加え、新規円借款の停止を決定した。このように、政府としては、政府開発援助大綱にのっとり、種々の要素を勘案して適切な対応を行っている。

三の2について

 平成十年三月、「ヤンゴン国際空港拡張計画」に関して、約束額(総額約二百七十二億円)の一部(二十五億円規模)の貸付けを行う旨、ミャンマー連邦(以下「ミャンマー」という。)に対し通報を行った。我が国としては、「ヤンゴン国際空港拡張計画」は既に円借款による協力を約束していた案件であること、また、利用者が増加した一方で施設の老朽化が著しく、今後の同空港の安全維持のためには緊急な対応が必要であることから、滑走路のひび割れ等の補正、灯火施設の改善等応急的な措置に対し必要最低限かつ限定的に貸付けを再開することとした。
 他方、我が国としては、その時点で、ミャンマーにおける民主化及び人権状況に決して満足していたものではなく、状況の改善のためにはミャンマー政府と国民民主連盟との間で意味のある対話が行われることが重要であると認識していた。したがって、本件通報に際しては、同国政府に対し、今回の措置が前記のような事情による限定的なものであることを伝えるとともに、状況改善への努力を強く申し入れた。
 対ミャンマー経済協力については、民主化及び人権状況の改善を見守りつつ、当面は既往継続案件や民衆に直接裨益する基礎生活分野の案件を中心にケース・バイ・ケースで検討の上、実施する方針である。しかし、現時点では、同国には民主化や人権状況の面で問題があると認識していることから、ミャンマーへの新規の円借款の供与は適当でないと考えている。

三の3について

 我が国は、昭和六十三年以来、セクタープログラムローン(以下「SPL」という。)をインドネシア共和国(以下「インドネシア」という。)に対して供与しており、平成十年度は、十月及び十二月にそれぞれ五百億円及び一千億円のSPLの供与に係る交換公文の署名を行い、それぞれ貸付けを実行してい
る。
 SPLは、これまで、フィリピン共和国に対して供与された実績があり、また、今後、必要性等が認められれば、他国に対しても供与を検討し得るものであり、インドネシア一国だけに供与されるものではない。
 SPLの見返り資金については、交換公文において、インドネシア政府は、適正にかつ専ら合意されたセクターの開発のための現地通貨の需要に充てるために使用することが義務付けられている。さらに、インドネシア政府は、基金に対し、SPL見返り資金の使用について通知を提出することとなっており、各借款契約ごとにSPL見返り資金プログラムの事業完了報告書を提出している。以上を踏まえ、見返り資金は、これまで目的に沿って適正に使用されており、御指摘のインドネシアの銀行の不良債権返済等に利用されていることはない。また、平成十年度分については、通貨経済危機への対応のため、一千五百億円という規模での供与としたことから、第三者機関である国連プロジェクトサービス機関を活用し、SPL見返り資金により実施される案件の進捗状況のモニタリング、財務管理の補助も行っている。

四の1について

 御指摘の中国建設銀行への工業用水事業のための融資については、基金は、国家計画委員会の認可を取得した長春工業用水事業(事業主体は日中合弁企業である長春工業供水有限公司)向けに、平成七年十一月に四大国有商業銀行の一つである中国建設銀行を経由して五十七億円の貸付けを行っている。
 本事業は、長春市の水不足に対応するため工業用水網を整備するものであり、平成八年十月に竣工し、試運転を経て平成九年一月から営業を開始している。本事業については、一時的な渇水等のため原水が不足しており、現在のところ供給実績量は計画量と比べ約半分の水準にとどまっているが、長春市が別途実施している導水事業の完成により、今後は原水供給基盤の強化が見込まれているところである。
 融資の返済は、直接の貸付先である中国建設銀行から受けることとなっており、元本の返済は平成十二年七月から開始されることとなっている。なお、利息については、平成八年一月から約定どおり支払われている。
 また、基金の海外投融資における貸付金の焦げ付きについては、基金の海外投融資の貸付実行累計額は平成十年十二月末時点で二千六百三十億円であるが、このうち回収不能により償却を余儀なくされた金額は八億六千万円である。

四の2について

 我が国の無償資金協力においては、交換公文署名後の案件の実施段階で案件の内容の一部につき当初計画からの変更が必要となった場合には、被援助国政府とコンサルタント契約を締結したコンサルタント会社が被援助国政府に代わってJICAを通じて日本国政府に報告し、変更の承認を得ることとしている。対ブータン王国無償資金協力「通信網整備計画」に関しては、かかる所要の手続が一切とられず、一部の調達機材、施設の工法等が無断で変更されたものである。
 調査結果に基づき、外務省及びJICAにおいて、本件コンサルタント会社との関連では、次の措置を採った。
 (一) JICAの契約について九か月の指名停止を行った。
 (二) 問題と判断される無断変更等に係る総額約一億九千五百六十万円について無償資金協力からの支弁を行わないこととし、右金額については、ブータン王国政府、コンサルタント会社及び請負業者の間の協議により精算すべき旨申し入れた。
 (三) 不実の計画に基づき支払われた調査費用二百二十万円をJICAへ返還せしめた。
 (四) 外務省及びJICAから厳重注意を行った。
 (五) コンサルタント会社からの外務省及びJICAに対する「無償資金協力関連の業務への参加を無期限に自粛したい」との申出を認めた。
 政府としては、無償資金協力の適正な実施が行われるよう、被援助国政府に対しガイドラインを提示すること等を通じて注意喚起し、JICAをして無償資金協力の交換公文署名後の実施促進業務に当たらせるとともに、外務省においても、契約内容が交換公文の範囲内であることを確認の上、契約認証を行ってきている。また、案件の実施段階においては、在外公館やJICA事務所によるモニターや施工状況の調査等により施工状況の把握に努めている。
 なお、政府としては、御指摘のような問題が発生したことを踏まえ、無償資金協力の適正な実施のための取組を更に強化していく考えであり、コンサルタントの業務に対する審査の強化、入札プロセスに関する一層の情報開示等の一連の改善措置を講ずることとしている。

五について

 我が国の化学肥料製造業は、昭和五十三年五月施行の特定不況産業安定臨時措置法(昭和五十三年法律第四十四号)及び同法を改正した昭和五十八年五月施行の特定産業構造改善臨時措置法(昭和五十三年法律第四十四号)に基づき不況業種に指定され合理化を推進していた状況等にかんがみ、昭和五十二年に開始した食糧増産援助において肥料購入のための資金を供与する場合には、我が国の産品を購入するものとしていた。しかし、総務庁から、「経済協力(政府開発援助)に関する行政監察(第一次)結果に基づく勧告」(昭和六十三年七月)において、「外務省及び大蔵省は、援助の適正かつ効果的・効率的実施の確保を図る観点から、化学肥料製造業の合理化の進捗状況を踏まえ、肥料援助のアンタイド化等効果的・効率的援助方策について関係省庁と協議する必要がある」との勧告を受けたことから、我が国の化学肥料製造業の構造改善状況も踏まえつつ、平成元年度から段階的に調達先のアンタイド化を進め、平成四年度には全面的にアンタイド化するに至った。また、平成二年度から、被援助国政府が締結する肥料の調達に係る契約について、原則として随意契約を認めず一般競争入札を行うこととした。
 こうしたアンタイド化及び一般競争入札への移行により、食糧増産援助においては公正な入札及び競争が実施されていると考えており、実際、肥料の第三国調達の割合も増えている。
 また、食糧増産援助における談合に関する報道がなされたことを受け、関係企業等に対する事情聴取等を行ったが、政府としては談合の存在を示す具体的情報や証拠を承知するに至っていない。
 いずれにせよ、我が国の援助において談合等が行われてはならないのであり、今後とも公正な入札及び競争の実施の確保に努めていく考えである。

六について

 円借款の平成九年度末時点の貸付累計額は貸付実行ベースで十一兆八千四百七十一億円であり、回収額累計は二兆六千八百六十三億円となっている。
 返済状況についてはおおむね順調であり、特に中国、インドネシア、タイ王国、インド、フィリピン共和国等アジアの主要な円借款供与国については返済の延滞は発生していない。なお、円借款全体での延滞債権額(弁済期限を六か月以上経過して延滞となっている貸付けの元金残高額)は、平成九年度末時点で四千三百九十八億円となっている。
 なお、これまで債務返済困難に直面した国に対しては、パリクラブ(債務国と国際通貨基金との間の融資取決めの成立を前提として公的債務についての繰延交渉を行う債権国会議)やその他の国際的枠組みの下で債務繰延等の措置を講じてきている。





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