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平成十一年三月九日受領
答弁第六号

  内閣衆質一四五第六号
    平成十一年三月九日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員鍵田節哉君提出野宿生活者等への国の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員鍵田節哉君提出野宿生活者等への国の対応に関する質問に対する答弁書



1について

 御指摘の定住場所が確保されず、路上、公園、河川沿い、駅等で暮らす野宿生活者、車中生活者、一時収容施設又は安宿に滞在する者(以下「野宿生活者等」という。)の毎年の総数については、これまで全国的に把握することは行っていないが、人口密集地域であり、簡易宿所が密集する地域を抱えていることから、全国的に見ても野宿生活者等の数が多い地域であると推測される東京都(特別区の区域に限る。以下同じ。)、川崎市、横浜市、名古屋市及び大阪市について各地方公共団体に聴取したところ、それぞれの地方公共団体で「野宿生活者」、「屋外生活者」、「路上生活者」等の異なる名称及び定義並びに方法により調査した結果であるが、平成十年八月において、東京都で四千三百人、川崎市で七百四十六人、横浜市で四百三十九人、名古屋市で七百五十八人及び大阪市で八千六百六十人との報告を得ている。

2及び3について

 1についてで述べた人数とその前年の調査結果とを比較すると、大阪市の調査については調査の対象の区域が異なり比較することはできないが、東京都で六百人、川崎市で三百十八人、横浜市で六十八人及び名古屋市で百十三人の増加である。
 野宿生活者等の増加の原因については、各地方公共団体から聴取したところ、主たる原因としては近年の景気の悪化等による失業者の増加であるが、最近では、社会生活への不適応、借金による生活破綻、アルコール依存症等の個人的原因によるものも増加しているとの回答があり、様々な要素が複雑に絡み合っていると考えられることから、お尋ねの本人の意に反して野宿生活等を余儀なくされている場合についての主たる原因を一概に答えることは困難である。

4について

 御指摘の大阪市による野宿生活者等のテント等の道路からの撤去については、同市が、道路管理者として、野宿生活者等が当該道路の歩道部分にテント等を設置して起居することにより交通に危険を及ぼしている等と判断した上で実施することを決定し、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第六条の規定に基づく異議申立ての棄却並びに行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第二十五条第二項の規定に基づく執行停止申立ての却下及び同条第六項の規定に基づく即時抗告の棄却を経て実施に至ったものと承知しており、当該措置は適法であったと認識している。
 野宿生活者等の問題については、雇用、福祉、住宅等の各分野にわたって、国と地方公共団体の連携の下に取り組む必要があると認識している。このため、本年二月十二日に内閣内政審議室並びに厚生省、労働省、建設省、自治省及び警察庁の各省庁(以下「関係省庁」という。)並びに地方公共団体の職員で構成するホームレス問題連絡会議を開催したところであり、同連絡会議において、その対策について検討を行うこととしている。

5について

 野宿生活者等に関しては、雇用の確保、自立に向けての生活相談、保健医療、居住場所の確保、地域住民の安全確保等多岐にわたる問題が生じていることから、関係省庁において連携を図りつつ野宿生活者等に関する問題に総合的に取り組むこととしているところであり、これを一層推進するため、ホームレス問題連絡会議を内閣内政審議室の協力の下、厚生省及び労働省を中心に開催することとしたところである。
 お尋ねの野宿生活者等への対応のための予算額については、野宿生活者等のみを対象とした特別対策は講じていないが、野宿生活者等に特に関連すると考えられる施策についての平成十年度の第三次補正後の予算額は、いずれも野宿生活者等に係る内訳を示すことは困難であるが、厚生省関係では、生活保護費負担金一兆二千八百八十四億四千三百二十二万二千円であり、労働省関係では、緊急日雇労働者多数雇用奨励金二億二千二百二十九万六千円及び日雇労働求職者給付金二百八十七億四千七百八十万円である。

6について

 御指摘の野宿生活者等に対する食料支援については、一部の地方公共団体の独自の施策として、野宿生活者等に緊急に直接食料を提供する等の施策が実施されていると承知しているが、政府において野宿生活者等に対して直接食料を提供することは行っていない。

7について

 御指摘の野宿生活者等を含め、生活に困窮する者の居住場所に関する対策については、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第三十条第一項又は第三十三条第二項の規定に基づく更生施設、宿所提供施設等への入所の対応を行っているところであるが、同法の適用に当たっては、同法第四条の規定により、要保護者の就労能力の活用等が要件とされるとともに、扶養義務者の扶養及び他の施策の適用がすべて同法による保護に優先するとされているところである。野宿生活者等についても、これらの条件を満たさない場合には、原則として、保護を行わないものであるが、急迫した状況にある場合には、保護の条件の調査の結果を待たずに、施設への入所の対応を行っているところである。

8について

 御指摘の野宿生活者等に対する政府としての雇用創出については、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第六十二条第一項第四号の規定に基づく雇用安定事業における本年一月一日から平成十二年三月三十一日までの十五か月間の暫定措置として、日雇労働者を常用労働者の十分の一を超えて雇い入れる事業主に対してその雇入れ人数に応じて一定額を支給する緊急日雇労働者多数雇用奨励金制度を平成十年度特別会計補正予算(特第2号)において創設するとともに、公共職業安定所に配置している求人開拓推進員について本年一月から新たに配置するものの一部を主として日雇労働者及び建設業関係を取り扱う日雇労働者等求人開拓推進員として活用し、日雇労働者の雇用状況の改善に努めているところである。

9について

 野宿生活者等の医療保険への加入状況については、把握していない。
 また、生活保護法が適用される場合の同法第十五条の規定に基づく医療扶助については、7についてで述べたとおり、原則として、生活保護を受ける条件を満たしていることが必要であるが、急迫した状況にあるときは、保護の条件の調査の結果を待たずに、医療扶助が行われているところである。
 このほか、野宿生活者等に対する医療サービス等については、一部の医療機関による社会福祉事業としての無料又は低額な料金での診療並びに地方公共団体における各種の健康診断、保健所と福祉事業所等が連携して行う保健婦の面接相談及び保健指導等の地域の実情に応じた施策が行われている。

10について

 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第九条第二項において、日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有することとされているため、住所を有しない野宿生活者等は地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有しない。
 また、公職選挙法第四十二条第一項において、選挙人名簿に登録されていない者は、投票をすることができないこととされており、同法第二十一条第一項において、選挙人名簿への登録は引き続き三箇月以上市町村の住民基本台帳に記録されている者について行うこととされているため、住所を有しない野宿生活者等は、衆議院議員及び参議院議員の選挙において投票をすることはできない。
 したがって、野宿生活者等が選挙権を行使するためには、住所を定めることが必要であるが、選挙権の行使の確保との関係で住所に関する特段の措置を講じたことはない。

11について

 御指摘の連絡協議会は、大阪市におけるいわゆるあいりん地区に関し、大阪市、大阪府の取組を踏まえつつ、今後のあいりん対策及びこれに関連する事項について、情報及び意見の交換を行うことを目的とし、労働省、厚生省、建設省及び自治省の四省の関係課長等を構成員として設置したあいりん対策等連絡協議会(以下「協議会」という。)である。協議会は、平成十年十月十四日に第一回会合を開催し、同年十二月十一日に、協議会の構成員があいりん地区の視察を行うとともに、大阪市、大阪府等の関係者と情報及び意見の交換を行ったところであり、今後も必要に応じて開催してまいりたいと考えている。

12について

 昨今の野宿生活者等の増加を踏まえ、現行の諸施策をより効果的に実施する観点から、平成十年十二月九日に、厚生省、労働省、建設省、自治省及び警察庁の各省庁が合同で、東京都、川崎市、横浜市、名古屋市及び大阪市から野宿生活者等の問題の現状及び要望について聴取した結果、この問題への取組を一層推進する必要があることから、ホームレス問題連絡会議を設置し、具体的な対策について検討を開始したところである。
 今後、同連絡会議において、関係者からの意見聴取も行いつつ、具体的な課題について整理を行い、直ちに対応できるものは速やかに実行に移していくとともに、更に検討を要する課題についても、遅くとも夏までには、その対応策について取りまとめを行ってまいりたい。

13について

 野宿生活者等に関する施策については、雇用、福祉、住宅等各分野にわたる総合的な対策が必要であり、今後更に関係省庁が所管している施策の連携を強化し、効果的な推進を図ることが重要であると認識しているが、このために必ずしも特別法の制定が必要であるとは考えていない。なお、支援方策等の具体的な施策については、今後、ホームレス問題連絡会議において検討してまいりたい。
 また、御指摘の野宿生活者等に特に関連すると考えられる施策に関する根拠法及び該当する条文としては、雇入れの促進等の雇用の安定については、雇用保険法第四十三条第一項及び第六十二条第一項第四号、福祉に関する相談及び保護については、生活保護法第十二条から第十七条まで並びに第二十四条及び第二十五条、医療の提供及び健康診断については、同法第十五条、第二十四条及び第二十五条、伝染病予防法(明治三十年法律第三十六号)第十九条第一項第一号並びに結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)第五条、でい酔や病人等で応急の救護を要する場合の保護については、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第三条第一項等がある。





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