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平成十一年八月五日受領
答弁第三五号

  内閣衆質一四五第三五号
    平成十一年八月五日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員中川智子君提出薬害クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員中川智子君提出薬害クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する再質問に対する答弁書



一の1、2及び4について

 ヒト乾燥硬膜が薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医療用具であることについては、厚生省において、御指摘のヒト乾燥硬膜について同法第二十三条において準用する同法第十四条の規定に基づく輸入の承認を行うに当たり、先の答弁書(平成十一年三月二十六日内閣衆質一四五第九号)の一から三までについてで述べたとおり、ヒト乾燥硬膜は開頭手術等により硬膜等に欠損が生じた場合において当該欠損部位の補てん等の整形の目的で直接身体に縫合する等の方法で用いられる医療用品として同法第二条第一項第二号において定義される器具器械に該当することから、同条第四項に規定する医療用具に該当するものであり、また骨接合板、骨接合用ねじ等の用品類と同様に身体の整形に直接使用される物であることから、薬事法第二条第四項に規定する医療用具のうち、薬事法施行令(昭和三十六年政令第十一号)別表第一医療用品の項第四号の整形用品に該当すると判断したものである。この場合の医療用具については、御指摘のように、人工物又は手術等における一時的、補助的用具に限定されるものではなく、またヒト組織を素材とするものが除外されるものでもない。
 御指摘の絆創膏については、薬事法第二条第一項第一号において日本薬局方に収められている物を医薬品と規定しており、日本薬局方(平成八年三月十三日厚生省告示第七十三号)において従来からの沿革的な理由により絆創膏の性状及び品質の規格を定めていることから、当該規格に適合するものは同法にいう医薬品とされているものである。

一の3について

 先の答弁書の一から三までについてで述べたとおり、薬事法及びこれに基づく法令において、医療用具の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する報告義務が課されたのは、平成九年四月一日からであり、御指摘の昭和六十二年当時においては、輸入販売業者が米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)の安全警告について報告を行う義務はなかったところである。
 また、ヒト乾燥硬膜の製造工程における洗浄方法については、御指摘の「ライオデュラ」に係る薬事法第二十三条において準用する同法第十四条第一項に基づく輸入の承認の際の承認事項ではなかったことから、「ライオデュラ」の洗浄方法にアルカリ処理工程を導入したことは、同条第六項の輸入の承認事項の一部変更を行うべき場合には該当しなかったものである。
 医薬品についての感染症に係る報告義務が課された時期は、医療用具と同じ平成九年四月一日からであり、また輸入の承認事項の一部変更については従来から医薬品と医療用具の間で取扱いに違いはないことから、御指摘のようにヒト乾燥硬膜が医薬品であった場合でも報告義務等について違いはない。

二の1及び2について

 ヒト乾燥硬膜については、一の1、2及び4についてで述べたとおり、薬事法の医療用具に該当するものであり、厚生省においては、同法第二十三条において準用する同法第十四条第二項の規定に基づいて医療用具としての有効性、安全性等について適正に審査を行った上で、同条第一項の規定に基づき輸入の承認を行ったところである。このことと御指摘の被害の救済における厚生省の責任の有無との関係については、現在、ヒト乾燥硬膜の移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)を発症したと主張する患者、遺族等から国、輸入販売業者等に対し損害賠償を求める訴訟が提起されているところであり、これらの訴訟において裁判所の判断を仰ぐべき問題と考えている。
 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号)に基づく救済制度(以下「副作用被害救済制度」という。)は、御指摘のような医療を介した感染を救済することを目的とするものではなく、同法第一条第一項に規定するように医薬品の副作用による健康被害を救済することを目的とするものである。同法の医薬品の副作用については、第二条第三項において「医薬品により人に発現する有害な反応」と規定されており、医薬品に混入したウイルス等による健康被害は医薬品の有する薬理作用によるものではないことから、同項の医薬品の副作用による健康被害には該当しない。したがって、仮に、御指摘のようにヒト乾燥硬膜が医薬品であるとした場合においても、ヒト乾燥硬膜の移植手術に伴うCJD感染についての救済は、副作用被害救済制度の対象とはならないものである。

二の3及び4について

 副作用被害救済制度は、二の1及び2についてで述べたとおり、医薬品の副作用による健康被害を救済することを目的とするものであることから、血液製剤に混入した後天性免疫不全症候群の病原体による健康被害の救済は副作用被害救済制度の対象ではない。
 一方、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法附則第八条第一項の規定に基づき、財団法人友愛福祉財団からの委託を受けて血液製剤に混入した後天性免疫不全症候群の病原体による健康被害の救済のため、副作用被害救済制度に準ずる給付の事業を行ってきているところであるが、当該事業は、いわゆるHIV訴訟が提起される以前の段階から、同財団において、血液製剤の輸入販売業者等から、その民事責任とはかかわりなく血液製剤によるエイズ患者等の救済のための共同の拠出を受け、これを財源として行われているものであり、ヒト乾燥硬膜の移植手術に伴うCJD患者を当該救済事業の対象とすることはできないと考えている。
 御指摘の被害者の救済については、先の答弁書、本答弁書の二の1及び2について等で繰り返し述べているとおり、ヒト乾燥硬膜の移植によってCJDを発症したと主張する患者等に対する国家賠償の問題に係る民事訴訟における裁判所の判断を仰ぐべき問題と考えている。

三の1について

 厚生省においては、FDA等の米国政府に関する種々の情報については、御指摘の厚生省から出向している者が勤務している在米国日本国大使館からの情報も含む様々な方法により入手に努めてきているところである。御指摘の昭和六十二年当時の厚生省の認識については、平成九年に厚生省において調査を行ったが、厚生省内の関係職員の中で同年四月のFDA安全警告等のヒト乾燥硬膜とCJDとの関係に関する情報について何らかの認識を有していた者は確認されていない。

三の2について

 国立国会図書館は、政府とアメリカ合衆国政府との間の昭和三十一年九月五日付け書簡の交換による「公の刊行物の交換に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の取極」に基づき、米国政府の刊行物を受領すると承知しているが、厚生省において国立国会図書館に照会したところ、御指摘のFDA安全警告は入手していないと回答があったところである。

四の1について

 ヒト乾燥硬膜の輸入の承認については、承認の時点における薬事法第二十三条において準用する同法第十四条第一項の規定に基づき、厚生省において、その有効性、安全性等を審査して行ったものである。ヒト乾燥硬膜の輸入を承認した当時においては、異常プリオンたんぱく質に汚染されたヒト乾燥硬膜によってCJDが伝播するおそれがあることについての知見は全くなかったものである。

四の2について

 厚生省においては、B・ブラウン社の水酸化ナトリウム処理工程の導入については、平成八年四月から同年六月までの間に「ライオデュラ」の輸入販売業者である日本ビー・エス・エス株式会社に対して、厚生省が行った調査の際に同社から報告を受けている。また、B・ブラウン社における「ライオデュラ」の製造中止については、同社がドイツ国内で「ライオデュラ」の原料である硬膜の確保が困難になったことから、「ライオデュラ」の製造及び販売を中止した旨の報告を、平成八年七月に日本ビー・エス・エス株式会社から受けている。日本ビー・エス・エス株式会社の「ライオデュラ」の自主回収については、同社がB・ブラウン社から原料となる硬膜の提供者が製品に記載されている提供者の登録番号から追跡できないケースがあることを理由として、平成三年七月から平成八年二月までの間に輸入した製品の自主回収の指示を受け、これに着手した旨の報告を、平成八年六月に日本ビー・エス・エス株式会社から受けている。

四の3について

 厚生省においては、平成八年七月にヒト乾燥硬膜の輸入販売業者である日本ビー・エス・エス株式会社及び株式会社佐多商会の両社から日本国内にアルカリ(水酸化ナトリウム)未処理製品は存在しない旨の報告を受けている。

五の1について

 お尋ねの世界保健機関(以下「WHO」という。)が平成九年三月二十七日に行った勧告において「五十例以上」とした際の症例数の国別の内訳については、承知していない。なお、当該勧告に先立って同月二十四日から同月二十六日までの間開催されたWHOの医薬品等に関する伝達性海綿状脳症専門家会合に日本から出席した専門家が、日本において二十八例のCJD患者がヒト乾燥硬膜の移植を受けていることが明らかになった旨の報告を行ったと承知している。

五の2について

 厚生省においては、平成八年八月一日の中央薬事審議会伝達性海綿状脳症対策特別部会において、資料として提出された米国疾病対策予防センター(以下「CDC」という。)によるヒト乾燥硬膜によるCJDの第一症例等に係る報告及びFDA安全警告も審議の対象とした上で、ヒト乾燥硬膜の安全性に関して審議をした結果、同特別部会から、現在は、「クロイツフェルト・ヤコブ病の病原物質と考えられるたんぱく質の一種であるプリオンを不活化する水酸化ナトリウム処理工程を導入して」おり、「データ、プロセス及び両社からの説明による限り、現在適用されている安全対策により、現在供給されているヒト乾燥硬膜は、臨床的には安全と考えられる」との評価を得たものと考えている。しかしながら、厚生省においては、平成九年三月二十七日に保健衛生分野の国連専門機関たるWHOが「ヒト硬膜の移植例から五十例以上のクロイツフェルト・ヤコブ病が発症していることにかんがみ、今後ヒト硬膜を使用しないこと」との勧告を行ったことを重く受け止めて、直ちに同月二十八日付けでヒト乾燥硬膜の輸入販売業者に対し、薬事法第六十九条の二の規定に基づき、ヒト乾燥硬膜の販売の一時停止、回収及び納入医療機関に対して直ちにヒト乾燥硬膜の使用を停止すべき旨の連絡を行うことを内容とする緊急命令を発したところである。

五の3について

 合成樹脂製の人工硬膜である「ゴアテックス」が脳外科手術用として薬事法に基づく医療用具の輸入の承認を受けたのは、平成五年九月二十八日である。また、自己の大腿筋膜を剥離し硬膜の欠損部位に補てんする脳外科手術は、ヒト乾燥硬膜の薬事法に基づく医療用具の輸入の承認以前から行われていたと承知している。

六及び七の4について

 現在、ヒト乾燥硬膜の移植によってCJDを発症したと主張する患者、遺族等から国、輸入販売業者等に対して損害賠償を求める訴訟が東京地方裁判所及び大津地方裁判所に提起されているところであるが、ヒト乾燥硬膜の移植手術が平成元年に行われたとする事例に係る訴訟において、被告である国は、世界で一例しか報告されていない等の当時の医学的及び薬学的な知見ではヒト乾燥硬膜とCJD発症との関連を予見することは不可能であった旨の主張を行っているところである。御指摘のヒト乾燥硬膜を介したCJD伝播の危険性に係る予見可能性の問題については、これらの訴訟において裁判所により判断が示されるものと考えている。
 なお、FDA安全警告及びカナダ保健福祉省の警告は、すべての「ライオデュラ」又はすべてのヒト乾燥硬膜に関するものではなく、「ライオデュラ」に関する特定のロットについてのみ廃棄、不使用等を医療機関に対し勧告したものであり、また、米国においては、現在もヒト乾燥硬膜が使用されていると承知している。

七の1から3までについて

 お尋ねのガイジュセクらが発表した論文が掲載されたニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(以下「NEJM」という。)の千九百七十七年十二月八日号については、当時の国立予防衛生研究所(現在の国立感染症研究所)及び当時の国立衛生試験所(現在の国立医薬品食品衛生研究所)において昭和五十三年一月に入手している。また、お尋ねのポール・ブラウンやガイジュセクらが発表した論文が掲載されたNEJMの千九百八十二年五月二十七日号については、これらの研究所において昭和五十七年六月に入手している。
 お尋ねの米国神経学会ヘルスケア問題委員会の「CJD及びその疑いのある患者の組織、体液その他の汚染物質の取扱いに関する注意事項」が掲載された千九百八十六年一月発行のアナルズ・オブ.ニューロロジー誌については、国立感染症研究所及び国立医薬品食品衛生研究所では所蔵しておらず、また、現時点において、厚生省の関係する内部部局及び両研究所において、同誌を定期的に購入していないことから、これらの部局及び研究所においては千九百八十六年当時も同誌を入手していなかったと推測される。

八について

 お尋ねの「ライオデュラ」に係る昭和五十四年の承認事項の一部変更は、寸法の異なる製品を追加することに伴い、承認事項のうち構造について一部変更を行ったものであり、昭和六十二年の一部変更は、寸法及び形状の異なる製品を追加したこと及び開封後生理食塩液に浸せきせずに直ちに使用できる軟質の製品を追加したことに伴い、承認事項のうち構造、成分、分量及び使用方法について一部変更を行ったものである。
 また、昭和六十二年の一部変更に際し提出されたものは、製品の名称、形状・構造及び寸法、原材料又は成分及び分量、操作方法又は使用方法、製造方法、規格及び試験方法等を記載した医療用具輸入承認一部変更承認申請書並びに添付資料である軟質の製品に係る規格に対する適合性に関する試験成績書である。

九の1及び3について

 御指摘の当時の国立予防衛生研究所(以下「旧予研」という。)の任務は、当時の厚生省組織令(昭和二十七年政令第三百八十八号)及びこれに基づく法令において、感染症その他の特定疾病及び食品衛生に関して、病原及び病因の検索並びに予防治療方法の研究及び講習を行うこと、予防衛生に関する試験研究の総合調整を行うこと等の事務をつかさどることとされており、これらの事務については、所長が厚生大臣の指揮監督を受け、所務を掌理することとされていた。

九の2について

 CJDの第一症例報告が「病原微生物検出情報」誌に掲載されなかった理由については、先の答弁書の七についてで述べたとおりである。その後、旧予研においては、同誌の平成元年四月号において、ヒト乾燥硬膜によるCJD感染の第二症例報告等に係るCDCの週報(MMWR)の記事の要約を掲載したところである。
 なお、平成九年四月には、旧予研を国立感染症研究所に改組し、同研究所に感染症その他の特定疾病に関する情報の収集、分析及び提供等をつかさどる感染症情報センターを設置したところである。

九の4について

 厚生省に御指摘のような責任があるか否かについては、二の1及び2についてで述べた現在係属中の訴訟において、裁判所の判断を仰ぐべき問題と考えている。





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