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答弁本文情報

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平成十二年一月二十八日受領
答弁第一八号

  内閣衆質一四六第一八号
    平成十二年一月二十八日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出国際世論の注視を集める入管行政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出国際世論の注視を集める入管行政に関する質問に対する答弁書



(一)について

 御指摘の共同声明については、法務省において、イラン人等二十一名の不法残留者が昨年九月一日に東京入国管理局に集団で出頭した事案に関して寄せられた他の意見とも併せて検討した。
 また、御指摘の三名の者の参考意見についても、西欧諸国及びオーストラリアを例として言及している部分については、これらの国と我が国とでは出入国管理行政を取り巻く諸情勢が異なっており、そのまま我が国に当てはめることはできないと考えるが、前記二十一名の者に在留特別許可を与えるか否かを検討するに当たり、有識者の意見の一つとして参考にしている。

(二)について

 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第二十四条に規定する退去強制事由に該当する児童につき退去強制手続を執るに当たっても、児童の権利に関する条約(平成六年条約第二号)第三条1の規定により、「児童の最善の利益が主として考慮される」必要がある。
 退去強制事由に該当する児童については、我が国の学校で長期にわたって教育を受け、親の出身国の言葉を習得していない場合であっても、当該児童の在留を特別に許可すべき事情があると認められないときはその退去を強制しているが、当該児童の退去強制手続においても、「児童の最善の利益が主として考慮され」ているので、当該児童の退去を強制することが同条約に違反することはなく、国際的な批判を受けることはないと考える。

(三)について

 お尋ねの出稼ぎ目的の韓国人の在留を特別に許可した件数については、統計がなく、記録が既に廃棄されているなどの事情により回答できないが、これらの韓国人でその在留を特別に許可されたのは、我が国において同国人の永住者や日本人等と婚姻した場合又は不法入国者同士の夫婦がいずれも十数年以上という長期にわたり我が国に在留していた場合等である。
 昨年九月一日に東京入国管理局に出頭した二十一名の者はもちろん、約二十七万人の不法残留者の多くは、我が国において、そのような家族を形成した者でも長期間在留している者でもないので、この種の事案と同列に扱うことはできないと考える。

(四)について

 労働災害による傷病を治療中の不法残留者等については、本国における医療事情から見て我が国における治療が不可欠な場合には、退去を強制することに人道上問題があると考えるが、労働災害に対する補償のための手続が終了していて、しかも、本国においても治療が可能である場合には、退去を強制することに人道上問題があるとは思われない。なお、我が国では、退去強制令書が発付された者であっても、傷病のために送還に支障が生じると認められる場合には、我が国で必要な治療が終了した後に送還するなどの措置を執っており、人権保障の観点にも十分配慮している。

(五)について

 退去強制手続は身柄を収容して進めることとされているところ、これは子供であっても例外ではなく、お尋ねの中国人一家の次女及び長男については、退去強制令書の執行により収容場に収容したものであって、そのこと自体をもって人権侵害というのは当たらない。ただし、子供を収容した場合には特別な配慮をしており、さらに、被収容者の年齢、健康状態等にかんがみて身柄の拘束をいったん解く必要が生じたときには仮放免を許可することとしているところ、本件については、昨年十一月三十日に次女及び長男に加えその母親の合計三名の者を仮放免したところである。
 なお、収容中、次女及び長男については、いずれも医師による所要の診療を受けさせており、また、長男については、収容中に気管支ぜん息の発作を起こすようなことはなかった上、父親と同室に収容したものの、土曜日及び日曜日を除くほぼ毎日、日中は母親と同室させるなど、人権に配慮した処遇を心がけてきたところである。

(六)について

 政府としては、各国が、その歴史、政治、社会、不法に滞在する外国人の状況、周辺諸国との経済を含めた諸関係等、出入国管理行政を取り巻くそれぞれに異なった諸情勢を踏まえ、それぞれの国の実情に合った出入国管理制度を採用し、これを運用しているものと理解しており、その意味で、諸外国の制度及びその運用を直ちに我が国に当てはめることはできないと考えているものの、我が国の出入国管理行政をより適切ならしめる上で参考になるという視点から、これらの実情の把握に努めているところであり、在留特別許可の運用に当たっては、諸般の事情を総合的に考慮し、人権に関する各種の国際法規の趣旨をも踏まえつつ慎重に検討し、適正な判断に努めているところである。

(七)について

 在留特別許可を与えるか否かについては、法務大臣が、個々の事案ごとに、本邦に在留を希望する理由、家族の状況、素行、内外の諸情勢等を総合的に考慮して判断しているところ、個々の事案について御指摘のようなオープンな議論を行うことは、関係者のプライバシーを侵害するおそれ等があり、適当ではないと考えているが、在留特別許可制度そのものの在り方等に関しては、法務省に寄せられる意見等をも参考にしつつ、在留特別許可制度の適正な運用に努めている。
 本邦に在留する外国人は、原則として、上陸許可若しくは取得に係る在留資格又はそれらの変更に係る在留資格をもって在留するものとされている。この在留資格は、本邦に上陸又は在留する外国人が本邦において行うことができる活動又は特定の身分若しくは地位を有する者として行うことができる活動を類型化したものであり、入管法別表の上欄に在留資格、下欄にそれぞれの在留資格に該当する活動を掲げているが、同別表の下欄に掲げる活動のいずれかを行うものでなければ、本邦に上陸又は在留することができないことから、同別表は上陸又は在留が許される条件を明示したものである。
 上陸許可については、同別表の明示に加えて、同別表第一の二の表及び四の表の上欄に掲げる在留資格に関し、出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成二年法務省令第十六号)において許可の条件となる基準を定めており、外国人の上陸に関しては、これら在留資格に係る条件を含めた入管法第七条第一項に掲げる上陸のための条件を満たすことによってその上陸が許可されることとなっており、基準は明確に示されている。
 一方、在留資格の変更の許可、在留期間の更新の許可、永住許可、在留資格の取得の許可及び資格外活動の許可については、過去の在留状況等広範な事情を総合的に考慮する必要があり、画一的な基準のみにより許否を決することは適当ではない。ただし、資格外活動の許可以外の許可については、在留資格に該当する活動を行うことが許可の基本的な条件となるほか、在留資格の変更の許可については、一部の在留資格に関してその取扱いの指針を告示しており、永住許可については、入管法第二十二条第二項に一定の条件を定め、更にその運用方針を公に示しており、資格外活動の許可については、入管法第十九条第二項で一定の条件を定めている。
 永住許可者の数等については、法務省が毎年発行している「出入国管理統計年報」において公表している。
 帰化の問題については、出入国管理行政と直接は関係しないが、その許否の決定は、国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)に定められている帰化条件の充足の有無を中心としつつ、個別の事案における具体的な事情を踏まえた上での総合的な判断に基づいて行っているものであり、画一的な基準を示すことはできない。
 帰化許可者の数については、法務省が毎年発行している「法務年鑑」において公表している。
 出入国管理行政全般の在り方については、法務大臣が出入国管理基本計画を定めてこれを明らかにしており、また、これまでも、法務省において、平成二年以降会合を重ねてきた出入国管理政策懇談会及び平成三年以降の全国各地における出入国管理行政関係意見聴取会の開催等を通じて、学者や関係団体等からの意見聴取及びこれらの人々との意見交換を行っており、今後もこうした機会を活用し、社会の各方面の意見を参考にしてまいりたい。





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