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平成十二年五月三十日受領
答弁第二七号

  内閣衆質一四七第二七号
  平成十二年五月三十日
内閣総理大臣 森 喜朗

       衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員矢島恒夫君提出入間基地の自衛隊機墜落事故に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員矢島恒夫君提出入間基地の自衛隊機墜落事故に関する質問に対する答弁書



第一の一の1について

 防衛庁の作成する航空事故調査報告書は、自衛隊の使用する航空機(以下「自衛隊機」という。)について発生した航空事故(自衛隊機が自衛隊以外の者が使用する航空機と衝突し、又は接触したことにより発生したものを除く。以下同じ。)の実態を明らかにし、航空事故の防止に資することを目的として、自衛隊機の運航方法、構造等に係る特殊性を考慮に入れ検討し、それを踏まえて作成する部内用のものであり、その全文を明らかにすることは自衛隊の能力等が明らかになることにつながるので、一般的にこれを公表することは適当でないと考えている。
 ただし、大事故(死亡又は破壊を伴ったもの。以下同じ。)及び民間への被害等が発生した社会的影響の大きい事故については、航空事故調査報告書の概要をもって公表を行っているところである。

第一の一の2について

 防衛庁が公表した「T−33A墜落事故の航空事故調査結果の概要について」(以下「概要」という。)の別紙「事故の経過」は、事故機と入間タワーとの交信記録等に基づき事故の主要な経過を示したものであるが、事故機が入間飛行場に帰投を開始した後の事故機と入間タワーとの生の全交信記録は、別紙1のとおりである。

第一の一の3について

 御指摘の「飛行に関する基本データ」が何を指すのか明らかではないが、事故機の推定高度を明示した「経過」は、別紙2のとおりである。
 なお、機首方位のデータについては、保有していない。

第一の一の4について

 「状況」は、入間飛行場の管制用レーダーにより記録された航跡記録、事故機と入間タワーとの交信記録等に基づき、平成七年五月に撮影された航空写真を使用して作成したものである。
 また、「状況」記載の図面の方位は、図面上の升目の垂直線の上方が磁北を示している。

第一の一の5について

 「概要」に添付した資料「事故機墜落時の状況」では、入間タワーの着陸許可に対し、脚下げ確認を応答した時点からの飛行経路を示したところであるが、マイナートラブル発生の通報時から墜落までの飛行経路は、別紙3のとおりである。

第一の一の6の@及びAについて

 事故調査において回収された器材の調査を行った結果、次の理由により、主燃料コントロールユニット及び緊急燃料コントロールユニット(以下「両燃料コントロールユニット」という。)付近にある燃料ホース又はフィッティングの一部から漏洩した燃料が両燃料コントロールユニット付近で発火し、同ユニットを加熱、溶融させたことにより、エンジンへの燃料供給が絶たれ急激に事故機の推力が低下したと推定したものである。
(1) エンジン後部エグゾーストコーン等(エンジン燃焼ガス排出部)の内側円周部全体に、両燃料コントロールユニット等に使用されているアルミニウム等を成分とする付着物が薄膜状に検出されたことから、飛行中において、当該部位の溶損が発生した可能性があると考えられること。
(2) 燃料ポンプ及び両燃料コントロールユニットは、墜落後、同一場所から回収されたにもかかわらず、燃料ポンプは表面塗装の焼損状況から摂氏約三百度の温度環境にさらされていたのに対し、両燃料コントロールユニットはアルミ合金の溶損状態から摂氏約六百度から約千度の温度環境にさらされていたものと考えられ、両燃料コントロールユニットの溶損は、墜落後の火災によるものではない可能性があると考えられること。
(3) 両燃料コントロールユニットの溶損部位が隣接していたこと等から、両燃料コントロールユニット付近にある燃料ホース又はフィッティングの一部から漏洩した燃料が火災を引き起こし、当該部位を中心に燃焼したものと考えられること。
 なお、燃料ホース又はフィッティングから燃料が漏洩した原因については、回収した燃料ホース等が著しく焼損しており、燃料漏洩の有無を含め特定するには至らなかった。また、発火源については、エンジン室内の機器に接続されている電気配線の漏電又はコネクターの短絡の可能性が考えられるが、これらも焼失していたため、特定するには至らなかった。

第一の一の6のBについて

 燃料ホース及びフィッティングについては、飛行前後の点検時、二十五及び五十飛行時間ごとの定時飛行後点検時等に、主として目視点検によって、漏れの有無、取り付け状態、損傷及びこすれの有無を確認するとともに、百飛行時間ごとの定時飛行後点検時、二百飛行時間ごとの定期検査時等に、エンジンを取り外して入念な点検を行うこととしている。

第一の一の6のCについて

 事故機の最近の整備履歴等については、別紙4のとおりである。
 なお、事故前の直近の整備について述べれば、平成十一年十月下旬に二百飛行時間ごとの定期検査、十一月中旬には二十五飛行時間ごとの定時飛行後点検が行われ、飛行前後の点検も確実に行われている。これらの点検整備において、事故に関連する兆候等は確認されておらず、また、当日の飛行前点検等においても異常は認められていない。

第一の一の6のDについて

 今回の事故に関しては、第一の一の6のCについてで述べたように、直近の定期検査、定時飛行後点検、飛行前点検等において、当該箇所に関する異常は確認されていないため、飛行中に何らかの原因で不具合が発生した可能性が高いものと推定している。すなわち、当該箇所の整備の基準と今回の故障との間に明確な因果関係があるとは考えていない。
 なお、T−33Aの飛行を再開する場合の燃料供給系統等に関する再発防止策としては、エンジン室内の燃料ホース及びフィッティングに対する非破壊検査の実施並びに電気配線及びコネクターの導通及び絶縁点検の実施が考えられるが、第二の二についてで述べるとおり、T−33Aについては、今後、全機飛行を再開しないこととしている。

第一の一の7について

 交信記録、航跡記録等から調査した事実に基づけば、事故機操縦者は、マイナートラブルの発生及びイニシャル(滑走路延長線上に設定された飛行場上空への進入のための通過点。以下同じ。)に直行する旨を通報した十三時三十八分三十九秒から、入間タワーの着陸許可に対して脚下げを確認した旨応答した十三時四十二分三秒までは、着陸が可能との判断のもとで飛行を継続しており、その後、急激な推力の低下が発生したため緊急脱出する判断を行ったものと推定される。
 緊急脱出は、十三時四十二分十四秒及び同二十七秒に通報されたが、この時点では、事故機は住宅密集地上空を飛行していたことから、事故機操縦者は、脱出によってコントロールを失った航空機が民家等に被害を与える可能性を局限するため、直ちに脱出することなく、入間川河川敷に接近するまで操縦を継続し、送電線接触直前の十三時四十二分三十五秒前後に脱出したものと考えられる。
 「概要」は、事故機がイニシャルに直行したことが、被害局限を図るためであったと述べているのではなく、操縦者が住宅密集地上空で直ちに脱出をせず、入間川河川敷に接近するまで操縦を継続した後に脱出したことをもって、被害局限を図るためであったと述べているものである。

第一の一の8について

 次の事実に基づき、事故機操縦者は、脱出によってコントロールを失った航空機が民家等に被害を与える可能性の局限を図ろうとしたと推定される。
(1) 緊急脱出は、十三時四十二分十四秒及び同二十七秒に通報されたが、この時点では、事故機は住宅密集地上空を飛行していたこと。
(2) 事故機操縦者は、その時点で脱出することなく、入間川河川敷に接近するまで操縦を継続し、送電線接触直前の十三時四十二分三十五秒前後に脱出したこと。

第一の二の1及び第一の二の2のBについて

 自衛隊における航空事故の事故調査に関しては、防衛庁長官が定める航空事故調査及び報告等に関する訓令(昭和三十年防衛庁訓令第三十五号)等において必要な事項が定められている。
 自衛隊における航空事故調査委員会は、各幕僚長が、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊にそれぞれ設置しなければならないものとされており、それぞれ陸上幕僚監部、海上幕僚監部及び航空幕僚監部に設置されている。
 航空事故調査委員会の委員長については、各幕僚長の定める達により、陸上自衛隊においては陸上幕僚副長、海上自衛隊及び航空自衛隊においては各幕僚監部監察官の職にある隊員をもって充てることとされているが、それらの階級及び専門分野についての規定は特に定められていない。各自衛隊の航空事故調査委員会の構成については、別紙5のとおりである。
 航空事故調査委員会は、航空事故調査を行い、航空事故調査報告書を作成し、これを各幕僚長に提出しなければならないものとされている。また、各幕僚長は、大事故又は中事故(重傷又は大破を伴ったもの)に関する航空事故調査報告書については、自己の所見を添えて長官に提出しなければならないものとされている。
 航空事故調査報告書には、事故の概要、事故の原因、事故防止方法に関する意見その他について記載するものとされており、その目的については、航空事故の実態を明らかにし、航空事故の防止に資することを目的とするものであって、航空事故に関する隊員の責任を究明することを目的とするものではないとされている。
 なお、事故調査についての規定は特に定められていないが、一般に、事故機の交信状況、回収された機体及び機材等の調査による事実認定、それらの分析及び評価、原因の究明等を行なうこととしている。

第一の二の2の@及びAについて

 別紙6のとおりである。

第一の二の3について

 自衛隊機について発生した航空事故については、民間航空とは特段のかかわりがないほか、自衛隊機の運航方法、構造等に係る特殊性から、その取扱いには一般の航空事故とは異なる特別の配慮を要することから、専門的な知識及び資料を有し、秘密保全に問題のない各自衛隊において調査しているものである。
 なお、事故調査に当たっては、必要に応じ、専門的知見を有する部外の者の協力を得ることは当然である。

第一の三の1について

 今回の事故に際しては、航空自衛隊として、入間基地保有の航空機のみならず、保有全機種に対し、入念な飛行前後の点検、プリタクシーチェック、エンジン試運転等を実施し、広く、機体全般について異常がないことを確認した上で飛行を再開したものである。

第一の三の2について

 他の機種については、それぞれの機種特有の運用条件、構造、材質等に応じて飛行安全の確保等に必要な整備計画が構築されていることから、これらの整備計画に基づく点検及び整備を適切に実施することとしている。

第二の一の1について

 今回の事故に係る被害は、家庭電化製品故障、家屋屋根損壊、車両損傷、パソコンの故障及びデータ損失、高圧線切断、鉄塔被害、不動産被害(ゴルフ場、畑)、工場の機械故障、パチンコ店営業被害、スーパー生鮮食品等被害、商店レジ故障、錦鯉の酸欠死等である。

第二の一の2の@からBまでについて

 被害の申立てがあったものについては、すべて受理し、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)に基づき、事故と相当因果関係のある損害について、被害時の時価等を基準として、適正な賠償を行うこととしている。

第二の一の2のCについて

 航空自衛隊入間基地内に損害賠償実施本部を設置し、そこを窓口とし、電話、書面等によって被害の申立てを受け付けており、現在も引き続き実施している。

第二の一の2の後段部分について

 過去の事故において被害補償に関する広報活動の記録がないため不明であるが、今回の事故に関しては、被害者が関係地方自治体の窓口において被害申立ての連絡方法等を知り得るよう関係地方自治体に協力を依頼してきたところであり、今後も引き続き被害者からの申立てを誠実に受け付け、適正な賠償を行っていくこととしている。

第二の一の3について

 平成十二年五月二十四日現在、被害申立て件数は二百七十一件であり、被害金額については、現在確認を進めているところである。そのうち、百四十五件については、既に賠償を実施しており、賠償金額は約六百万円となっている。また、残りの百二十六件については、被害額は算定が困難である事案等もあり、現在決着に至っていないが、早期解決を図るべく、鋭意交渉中である。

第二の二について

 今回の事故に関して、平成十二年五月二十四日までに、地方公共団体、地方議会が防衛庁(入間基地等を含む。)あてに提出した要望書、意見書、要請書等で防衛庁が把握しているものは三十九件であり、地域住民、住民団体等が提出した抗議文、申入書、要請書等で防衛庁が把握しているものは二十件である。それらの主な内容は、事故原因の究明及び調査結果の公表、安全飛行の徹底、入間基地における航空機の飛行中止及び自粛等である。
 防衛庁としては、事故原因の早期究明に努め、航空事故調査報告書を作成し、その概要を公表するとともに、当該報告書に記載する再発防止策の実施について検討した結果、現存するT−33Aについては全機使用しないこととし、その旨を併せて公表したところである。
 防衛庁としては、このように公表を積極的に行うとともに、今後このような事故が発生しないよう、飛行の安全の確保に万全を期すこと等により、前記要望等に対応しているところである。

第三の一の1及び3並びに第三の二の1について

 今回の事故に関しては、警戒管制及び航空交通管制、気象、操縦、指揮管理、整備及び器材並びに医学及び心理についての調査は行ったが、基地の立地及び基地の運用についての検討は行っていない。

第三の一の2について

 航空総隊総合演習に参加している各基地においても、当該演習に含まれない通常の各種訓練を平行して実施することが一般的であるが、当該演習のような二十四時間態勢で実施する演習とは別に実施する通常の訓練における飛行については、土曜日及び日曜日の飛行や早朝及び深夜の飛行を極力避ける等の配慮を行っているところである。また、すべての飛行について、飛行の安全の確保に万全を期すとともに、離陸時に可能な限り速やかに高度を確保して騒音の軽減を図る等の配慮を行っているところである。

第三の二の2の@について

 航空自衛隊においては、小事故(軽傷及び小破を伴ったもの又は中破を伴ったもの。以下同じ。)等について、原則として当該航空事故の事故発生部隊等の長が事故調査を行うこととしている。ただし、航空幕僚長が航空事故調査委員会による航空事故の調査を必要と認める場合には、大事故等と同様に航空事故調査委員会が調査を実施する。また、調査結果については、大事故及び民間への被害等が発生した社会的影響の大きい事故について、航空事故調査報告書の概要をもって公表を行うこととしているものであり、小事故等についても事案の性質により公表すべきものは公表することとしている。

第三の二の2のAについて

 昨年九月のT−4のヒット・バリア事案については、機体損壊の程度により小事故にあたるとされたものであり、事故発生部隊の長が事故調査を実施した。本事故は、事故機がバリアにヒットした際に、バリアのワイヤが前脚フォーク部にかかり、前脚が後方に折れたことにより事故機の胴体部が接地し、機体の損傷を大きくしたものであり、事故機がバリアにヒットしたのは、着陸滑走中にハイドロプレーニング現象に入ったことによるものと推定される。再発防止策については、バリアの換装、悪天候時における小型機運航に関する指導の徹底等が挙げられている。
 昨年十月のT−4のヒット・バリア事案については、機体損壊の程度により事故としての取扱いを行っていない。


事故機と入間タワーとの更新記録 1/2


事故機と入間タワーとの更新記録 2/2


事故の経過


異常発生時から墜落までの飛行経路


T-33A 事故機の整備暦


航空事故調査委員会の構成 1/3


航空事故調査委員会の構成 2/3


航空事故調査委員会の構成 3/3




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