衆議院法制局採用情報

若手職員の1週間

衆議院法制局に入局したら、どんな仕事をするんだろう?
具体的な業務の進め方を追体験できるよう、新人職員の目線から法制局での「とある1週間」をご紹介します。

※令和6年度パンフレットに掲載した記事を一部加筆・修正して掲載しています。

月曜日 ――新しい依頼にワクワク!

新たな依頼、早速打合せに!

締切り間近のα法案の局長審査の準備を進めていたら、X議員事務所から電話。担当委員会で審議予定の閣法であるβ法案について修正案の提出を考えているので、話を聞きに来てほしいという。A課長から、「早速、本日午後に打合せをしましょう」と返事。午前中いっぱいβ法案の勉強をして、A課長、補佐級のBさんと一緒にX議員事務所へ向かう。

「問題意識は何ですか?」 ――まずは依頼の趣旨を確認

X議員と打合せ。β法案をどう修正したいかを話す議員に、A課長は、何が問題か、修正により何をしたいのかと問いかける。
 やりとりを追いかけるのに必死の私は、勢い余って冗談までメモ。X議員に「冗談まで書かなくてもいいよ」と笑われてしまった。
 話を進めるうちに、当初X議員が考えていたのとは違うアイデアも見えてきた。表面的な方法論だけでなく、その背景にある問題意識を確認することが大切なのだと実感。

先輩からのアドバイス ――「コツコツ慣れていくのが大事だよ」

疑問点や今後の段取りを話しながら執務室に戻り、議事録を作成。確認をしてもらうと、内容だけでなく、仮名遣いにもコメントをもらう。C先輩から、法律案を起案するのに向けて、普段から仮名遣いのルールに慣れておいてねとアドバイス。

火曜日 ――私が局長に説明するの!?

今日は局長審査。審査はみんなで受ける。

昨日審査の準備を進めていたα法案について、局長から、「今から審査をしましょう」と呼ばれる。局内の法案審査は、担当者全員で受けることになっていて、これまでの資料や六法、立法例を調べるためにパソコンも持って、課員みんなで局長室に向かう。

制度設計から「、」「。」まで、審査は広範に及ぶ

局長審査では、依頼の概要、法案全体の仕組みといったことから、条ごとの細かな言葉遣いまで、様々なことが議論になる。入った直後に研修はあったものの、審査で飛び交う法制執務の詳しい議論についていけず、知識不足を痛感。閉会後、9月には、より実践的な内容の研修 もあると聞くし、しっかり勉強しないと。

審査の中で、局長から「なぜ無効ではなく取消しの構成にしたの」と聞かれ、せっかくだから新人さんに聞いてみようとご指名を受ける。これまでの議論や大学で勉強した法律の知識を総動員して両者の違いを説明、納得いただいた。

審査でたくさんの指摘をもらっても、作業はチームで分担

局長からたくさん宿題をもらって課に戻る。条文の修文と、必要な調査をしないと!

補佐級のBさんが条文を直すなかで、局長からさらに調査するようにと言われた立法例を、研修員(※1)のDさんと分担しながら調査。

直しと調査結果を報告して、無事審査が終了!一息ついたところで、最終チェックのための読み合わせ(※2)作業をして、法律案が完成した。

(※1) 法制局では各自治体からの研修員、任期付弁護士、衆議院事務局・国立国会図書館・省庁・裁判所からの出向者たちと机を並べて一緒に業務に当たっている。

(※2) 一人が条文案を読み上げ、ほかの職員で誤字脱字等のミスがないかを確認する作業のこと。

水曜日 ――新人の視点を大事に!

「あなたはどう思う?」 ――新人でも積極的に議論に参加

X議員から月曜日に依頼のあった修正案の論点について課内で議論。思ったことは何でも言おうの精神で、積極的に発言。課長から、「色んな視点が大事だから、どんどん言って」と言ってもらい、素人質問もしやすい。

議論が進むにつれ、違和感だけでなく、事実に基づいた指摘が必要だなと痛感。立法例や問題になっている法律の背景をしっかり勉強して、次は根拠を持って発言できるようになるのが目標!

初めての資料作成 論点整理のメモを作る

みんなで議論したことを踏まえて、C先輩に教えてもらいながら、論点整理メモを作ってとの指示。初めての資料作成、上手くいくか少し不安だな…。

C先輩からは、締切りまで時間はあるし、今日はもう遅いから、今日出た疑問点だけ忘れないように書き出して、後は明日にしようと言われる。会議中、色々と質問をしたおかげで、問題の所在はなんとなく分かるけれど、調べないといけないこともたくさん。明日は頑張らないと!

退庁後、友人と飲み会に

会議での議論を簡単にまとめたら、前々から約束していた大学時代の同級生と飲み会に。職場からほど近い赤坂のお店で乾杯!近況を話しながらリフレッシュ。

木曜日 ――困ったら何でも相談してね

論点整理のための調査開始

昨日、「ここは調査が必要だね」と言われた部分を調べながら、課内会議で出た論点をまとめていく。C先輩から、どこにどんな情報があるか教えてもらい、書庫に行ったり、立法例を検索したり。それでも、実務的なところがどうなっているかはなかなか分からなくて頭を抱える。

出向者、任期付弁護士、研修員、色々な人の知恵も借りながら

運用・実務面が分からず、C先輩と頭を抱えていると、横で聞いていた任期付弁護士のEさんがカットイン。裁判実務がどうなっているのか詳しく教えてくれた。補佐級のBさんいわく、今回は野党の修正案だから政府に質問はしにくいけれど、超党派で進める議員立法では、政府に運用や実態を聞きながら立案を進めるらしい。

調べても分からなかったら、周りの人の知恵を借りることで見えてくるものがあるんだな。

資料は法律が分からない人にも分かるように

C先輩に全体の構成を相談しつつまとめた論点メモをBさんにも見てもらう。

時間がない、そして、必ずしも法律に詳しいとは限らない議員の先生向けの資料だから、分かりやすくかみ砕いて書こうとアドバイスをもらう。C先輩と相談しながら、分かりにくいと指摘されたところをもう1回書き直す。明日課長にも見てもらおう!

金曜日 ――入って数か月で答弁を書いた!?

同期とランチで情報交換、色んな仕事があると再確認

久しぶりに同期と国会内の食堂でランチ。「そっちはどんなことをしているの?」と聞いたら、昨日は担当法案の答弁対応でバタバタしていたんだって。議員の先生が自分の書いた答弁案を使って答弁しているのを、委員会の場で目の当たりにしていい経験だったと嬉しそうに話していた。

課が違えば色んな仕事があるのだなあ。

作った資料を報告、褒められて一安心

ランチから戻って、論点整理メモを課長にご報告。さらりと読んで、「欲しかった情報が全部まとまっているね」とお褒めの言葉をもらい、ほっと一安心。

それから、暫く読み込むと、どんな説明の流れだとX議員にポイントが伝わるか、この資料が今後どう使われそうかといった観点から、文言修正の指示をもらう。

「焦らず経験を積んでね」

正確に、分かりやすく、そして、使いやすく。資料作成一つとっても気を付けることはたくさん。不安そうな私に、課長から「法制局の仕事は経験が大きな力になるから、焦らず一つ一つ経験を積んでいくことが大事だよ」とのお言葉。

よし、来週からの1週間も何事も経験の気持ちで頑張ろう!