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平成十二年十一月二十九日提出
質問第五六号

核燃料加工工場臨界事故に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




核燃料加工工場臨界事故に関する質問主意書


 一九九九年九月三〇日に起こった核燃料加工工場臨界事故は、二名の尊い人命を奪った、最悪の原子力事故であった。政府の「ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告」(九九年一二月。以下「報告」。)が、『原子力の「安全神話」や観念的な「絶対安全」という標語は捨てられなければならない』(報告V−五〇)、と指摘しているように、根底にある「安全神話」への深刻な反省が行政と原子力業界に求められるところである。
 同時に、事故の直接の原因である、臨界安全形状管理がされていない沈殿槽への臨界量以上のウラン溶液の投入という事態に、なぜ至ったのか。その徹底解明も必要である。この点で見過ごせないのは、事故施設を加工施設として許可申請した時点では、事故に至った「均一化工程」は想定されていなかったという事実である。「報告」も、「六〜七バッチを均一な一ロットとすることは、許可申請書と設工認申請書のいずれにも記載されていない」(V−三四)、「複数の製品容器を用いて均一化の操作を行うに当たっては複数ユニットの臨界安全について十分に評価する必要があるが、その点に関する記述は見当たらない」(V−三五)と指摘している。
 そこで、問題の「均一化工程」に関して以下の点を明らかにされたい。

一 第一に、「均一化工程」に係る許認可についてである。

 1 日本核燃料コンバージョン(現ジェー・シー・オー。以下「JCO」。)が一九八三年一一月に行った核燃料物質加工事業変更許可申請に対して、政府は一九八四年六月に許可を出している。この申請と許可に問題の「均一化工程」は含まれていないのではないか。含まれていたのなら、申請書の該当個所を明示するとともに、「報告」が指摘した「複数ユニットの臨界安全」に係る政府の安全審査の記述を明示されたい。
 2 「報告」によれば、該当する記載はなく、「均一化工程」については申請も許可もされていないことは明らかである。従って、無許可の「均一化工程」を伴うJCOの中濃縮ウラン溶液製造は、その当初から違法な作業だったのではないか。
 3 「報告」の参考資料V−一七「転換試験棟の硝酸ウラニル溶液製造工程」図において、ステンレス容器による溶解について「違反行為(未許可)」とし、沈殿槽による混合均一化は「違反行為(取扱量の超過)」、貯塔による混合均一化は「違反行為(多量ウランの注入)」と明記している。しかし、クロスブレンディングによる混合均一化については、同図に示された「許認可上の工程」とは明らかに異なるのに、その違法性を何ら指摘していないのはなぜか。
 4 また、「均一化工程」自体が違法であることを、政府が明言しないのはなぜか。

二 第二に、「均一化工程」が導入された経緯についてである。

 1 臨界事故調査委員会の資料八−三でも紹介されているように、「均一化工程」が導入されたのは、中濃縮ウラン溶液の発注元、納品先である動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル開発機構。以下「機構」。)の要求によるものである。要求した内容とその動機を改めて明らかにされたい。
 2 機構は、核燃料取扱いに関しては、他のどの組織にもまして精通しているはずである。機構は、要求した「均一化工程」が想定されていなかった工程、新たな許可なしには違法となる工程であることを、十分に承知していたはずである。この点を政府はどう認識しているか。
 3 また機構が、「均一化工程」に伴う許認可の変更申請等について、JCOにどのような指導、助言等を行ったのか明らかにされたい。
 4 機構が、一回の輸送量にあわせてJCOに「均一化工程」を要求(八六年五月二九日)してから、JCOの回答を経て、契約(一〇月二四日)まで、五ヵ月しかないが、この短期間で、JCOが変更許可申請を準備し、申請し、国の審査を経て許可を受けるのに十分な期間といえるのか。
 5 機構が、ウラン溶液をJCOに発注する際に、JCOが機構の要求する仕様のウラン溶液を適法に製造できる事業者であることを確認しなかったのかどうか明らかにされたい。

三 第三に、「均一化工程」における臨界管理についてである。

 1 JCOは当初、臨界管理のため二・四キログラムウランの質量制限をもうけ、これを一バッチ(作業単位。)とするとともに一ロットとする予定だったが、機構は、一回の輸送量にあわせて六〜七バッチを一ロットとすることを要求した。これに対して、JCOは、均一化のための専用設備も無しに、製品容器をならべて、そこから一〇分の一ずつ汲み出して移し替える「クロスブレンディング」という方法による均一化を回答(六月九日)したとされている。この「クロスブレンディング」による均一化作業は、一バッチの質量制限で臨界管理するという許可条件に反するものではないのか。政府の見解を明らかにされたい。
 2 「均一化工程」について、事故直後は、形状的に臨界管理された貯塔で行うべきものを沈殿槽で行ったことが作業手順違反であると発表されていた。後に、事故調の第七回会合(一一月二六日)において、実は貯塔で行うことも裏マニュアルであり、本来はクロスブレンディングで行うことになっていたことが明らかにされた。ところが、政府は、機構からの聞き取りで九九年一〇月二一日にこの事実を知っていた。このような重要な事実の公表が一月以上も遅れたのはなぜか。
 3 機構は、要求した一ロット(六〜七バッチ)が臨界量を超過するものであることを、十分承知していたはずである。機構は、臨界管理のために一バッチという量的制限を設けていたJCOに対して、その臨界管理の制限を越える危険な作業を要求したことになるのではないか。政府の認識を明らかにされたい。
 4 JCOが想定していなかった「均一化工程」という機構の要求により、新たな臨界管理が必要となるはずだが、機構には、そういう認識があったのかどうか、また、機構には、JCOに対して臨界管理の助言を行うなど核燃料の専門家集団として当然の責任があるはずだが、機構がそうした助言等は行ったのかどうか、明らかにされたい。

四 第四に、硝酸ウラニル溶液で納品させたことについてである。

 1 臨界管理という点では、粉末による乾式法に比べ溶液による湿式法は臨界に達しやすく危険性の高いものではないのか。
 2 欧米では、過去の臨界事故の教訓から、濃縮ウランの再転換では湿式法をやめて乾式法に切り替えてきたが、日本だけがなぜ、危険な湿式法を用いなければならないのか。
 3 これまで政府は、JCOに対して溶液での納品を要求した理由を、機構の再処理工場運転に向けて行われた日米再処理交渉の結果、核不拡散上の観点から混合転換法により硝酸プルトニウムと硝酸ウランニル溶液を混合した上で混合酸化物に転換することになったからだと説明している。しかし、JCOから粉末で仕入れて機構内で溶液にして使用することも選択し得たはずである。危険な工程をあえて民間企業に要求したのはなぜか。
 4 政府は、一民間企業に危険な業務をさせた結果、重大な事故に至らしめたという事実を、自らの責任としてどう考えるか。

 右質問する。



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