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平成十四年十二月十二日提出
質問第四二号

未成年者などの収容と退去強制に関する質問主意書

提出者  北川れん子




未成年者などの収容と退去強制に関する質問主意書


一 子どもの権利条約(児童の権利条約)第三条(子どもの最善の利益)に謳われた「子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。」を考慮し、保護者が入管法違反に問われた場合、日本の学校にて就学中の未成年者については、本人およびその養育親の退去強制を見合わせ、在留特別許可を与えるなどの方策をとるべきと思うが、政府の見解を質したい。子どもの権利条約に関連して、未成年者の退去強制について、各国では以下のような判例や方策がとられてきている。
 一九九九年七月九日カナダ連邦裁判所が下した「Baker判決」では、超過滞在であるB氏(子ども四人はカナダ国籍)に退去強制という決定を、「子どもの最善の利益」(子どもの権利条約)を援用し、取り消した。カナダ政府は、その後移民法を改正。「カナダの出入国管理行政における子どもの利益の考慮の一端」『人権法と人道法の新世紀』(東信堂)
 ニュージーランド最高裁判所は、一九九三年十二月十七日子どもと家族を残して退去強制命令を出された男性から司法審査請求したタビタ事件判決において、自由権規約と子どもの権利条約第九条を援用し、政府当局が退去強制命令を執行するか否かを検討する際には、これらの条約を考慮すべきであるとして、当局に再審査を求めている。(Tavita事件)
 オーストラリアの最高裁判所は一九九五年四月七日、子どもと家族を残して退去強制命令を出された男性からの司法審査請求であるテオ事件判決において、特に子どもの権利条約第三条の規定を援用し、当局が子どもの最善の利益を主たる考慮事項として扱うだろうという正当な期待が生じているとして、当局による再審を求めている。(Teoh事件)
 このような状況をふまえ、就学中の未成年者や、その養育親の、退去強制をしない取り扱いを明記した法律あるいは基準をもうけることについて、政府の見解を質したい。
二 日本には未成年者を入管施設へ収容することを、制限する法律はない。また学齢期の子どもの収容を避ける取り扱いを明記した法律もない。日本の入管行政は「全件収容主義」をとっていて入管法上の違法状態にある場合、収容されることが、法律上の建前であると主張している。このことは、子どもの権利条約(児童の権利条約)の次の各号の違反になると考えるが、政府の見解をおうかがいしたい。
 第三条(子どもの最善の利益)第二十二条(難民の子どもの保護・援助)第二十八条(教育への権利)第三十七条(死刑・拷問等の禁止、自由を奪われた子どもの適正な取り扱い)(b)および(c)
三 親の入管への収容にともない、未成年者が親から分離され、児童相談所へ保護されたり、親戚などへあずけられる場合がある。また親と分離して児童相談所に保護した場合、その子どもの保護先を親に伝えない場合がある。また入管収容施設に収容される場合でも、親から分離されることがある。未成年者が家族から分離されないようにする方策はとられていない。以上のような取り扱いは、道義的に見ても問題があると考えるがどうか。
 また、これは子どもの権利条約(児童の権利条約)の第九条(親からの分離禁止と分離のための手続)に抵触すると考えるが、どうか。
四 親の入管法違反にともない、未成年者に対する退去強制手続について「事前に準備をさせず、いきなりの摘発が行われ、摘発時点で学校や親戚などに連絡をさせない」「摘発に出向いた入管職員の通訳の代わりをさせられ、親の入管法違反について、子どもの口からいわせる」「未成年者自身が手続上入管法違反者として違反調査の対象となる」「十六歳未満の者をのぞき、十指の指紋を採取する」「からだの傷、入れ墨、特徴などを記録するための下着になっての身体検査」などがなされている。以上のような取り扱いは、道義的に見ても問題があると考えるがいかがか。また、子どもの権利条約(児童の権利条約)の第三十七条(死刑・拷問等の禁止、自由を奪われた子どもの適正な取り扱い)に抵触すると考えられるがどうか。
五 入管収容施設内の処遇について、未成年者の権利を守るため、未成年者のいる家族についての処遇、保護者のいない未成年者の処遇については、明記された法律がない。このことは権利条約第三十七条(死刑・拷問等の禁止、自由を奪われた子どもの適正な取り扱い)に抵触する疑いがあると考えられるが、政府の見解を質したい。
六 未成年である被収容者に関して、一九九九年から年別、収容施設別に収容された人数を年齢別(六歳未満、六歳〜十二歳未満、十二歳〜十五歳未満、十五歳〜十八歳未満、十八歳〜二十歳未満)、男女別、国籍別、収容期間別に示されよ。施設を移された場合には、その合算した収容期間を示されよ。
 また、親の入管への収容に伴い、未成年者の児童相談所等、児童保護施設への入所状況及び、保護期間を一九九九年から年別、前記年齢区分別、男女別、国籍別に示されよ。
七 未成年者で退去強制令書執行後、実際には収容されず、過去強制手続きをとった子どもの状況を一九九九年から、年別、前記年齢区分別、男女別、国籍別に示されよ。また、その内退去強制した人数を示されよ。
八 妊婦である被収容者について一九九九年から年別、収容施設別、妊娠期間別に示されよ。
 また、収容中の流産、堕胎件数についても明らかにされたい。また収容施設及び、一時執行停止での出産した者の人数を同様に明らかにされたい。
九 六十歳以上の高齢である被収容者について、一九九九年から年別、収容施設別、年齢別(六十歳〜六十五歳未満、六十五歳〜七十歳未満、七十歳〜七十五歳未満、七十五歳〜八十歳未満、八十歳以上)に、その人数を明らかにされたい。
十 精神障害のある被収容者について、一九九九年から、年別、収容施設別にその人数を明らかにされたい。
十一 身体障害のある被収容者について、一九九九年から年別、障害種類別、等級別、収容施設別に、その人数を明らかにされたい。

 右質問する。



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