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平成十五年七月二十二日提出
質問第一三四号

原子炉の健全性評価尺度(維持基準)に関する再質問主意書

提出者  北川れん子




原子炉の健全性評価尺度(維持基準)に関する再質問主意書


一 維持基準と耐震設計審査指針との整合性について
 (一) 質問一五六第四九号への答弁書(以下「答弁書」)では、「発電用原子力設備が耐震設計審査指針に定められた基準を満たして建設されていることを前提として、使用開始後の発電用原子力設備に発生したひび割れが当該設備全体の構造強度に影響を与えない程度の大きさのものであつて、当該ひび割れが地震の発生に際して拡大し設備の損壊に至らないことが確認できれば、耐震性の確保の観点から問題がないとの考え方の下、」維持基準(または健全性評価の基準)を検討しているとしているが、この「考え方」は、どのような法的根拠に基づいて、いつ、どこで、誰が決定したものか、答えられたい。原子力安全委員会は、その決定に際して、どのように関与したのか、具体的に説明されたい。
 (二) 答弁書における「耐震設計審査指針と健全性評価の基準とは、その性格及び適用される場面が異なっている」という意味を具体的に説明されたい。
 (三) 耐震設計審査指針で規定されている機器・配管系の許容限界等は、発電用原子力設備の設計・建設時はもとより、供用期間中においても満たされるべき安全基準であることに相違ないか。ただし、亀裂を有する機器・配管系がこの許容限界等を満足しているかどうかを判断する評価方法が存在しないため、運転や地震により作用する応力によって亀裂が進展するかどうかの観点から健全性評価の基準を別に定めるものであると理解してよいか。もし、そうであるとすれば、耐震設計審査指針の許容限界等は亀裂が存在しない限り適用されるが、機器・配管系にひとたび亀裂が入れば、亀裂の入った機器・配管系の許容限界等としては適用されないことになるが、それに相違ないか。そのような解釈を可能とする規定は耐震設計審査指針、省令六二号(電気事業法第三十九条第一項の規定に基づき制定された発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令)の第五条および第九条、告示五〇一のどこに記載されているのか、具体的に説明されたい。
 (四) 答弁書では、健全性評価の基準は「省令第五条の規定の運用を明確化するという性格のものである」としているが、その意味を具体的に説明されたい。省令六二号の第五条には、解説の参考として発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針が呼び込まれており、これまでは、亀裂の有無にかかわらず、耐震設計審査指針で規定された機器・配管系の許容限界等が満たされねばならないとの解釈がなされてきた。第百五十五回臨時国会における改正後の電気事業法第五十五条第三項の規定による使用開始後の発電用原子力設備の健全性評価の基準を定める際にも、この解釈を変更してよいとは法令のどこにも記されていない。つまり、健全性評価の基準の内容を制定する際に遵守すべき技術基準については耐震設計審査指針以外に存在しないのであり、これを満足しない健全性評価の基準を制定することは法令違反になると考えられるが、この認識に相違ないか。もし、そうでないというのであれば、その法的根拠を具体的に示されたい。
 (五) 答弁書では、健全性評価の基準の「導入によって現行の『安全基準』の水準を引き下げることにはならず、また、ひび割れが耐震設計審査指針によって担保される発電用原子力設備全体の耐震性に影響を与えないという前提で適用されるものであることから、その導入によって発電用原子力設備の『安全基準』の水準が新設時と使用開始後とで異なるものとなることはない。」としているが、ここでいう安全基準の水準または安全水準の意味を具体的に説明されたい。
 省令六二号第五条には「原子力設備は、地震力による損壊により公衆に放射線障害を及ぼさないように施設しなければならない。」旨記されている。この損壊に至らないための現在の安全水準は、耐震設計審査指針および告示五〇一によって担保される安全水準であるが、健全性評価の基準によって担保される安全水準がこの安全水準と異ならないことを具体的に証明されたい。亀裂の有無によって工学的に異なる評価手法を用いる必要があることは承知しているが、そうであるからこそ、これらの異なる評価手法によって担保される安全水準が異ならないことの証明が不可欠である。この証明が与えられない限り、健全性評価の基準を導入することによって安全水準が異ならないとは言えず、法令違反であると考えられるが、どうか。
 また、健全性評価の基準では、「運転および地震による荷重によって亀裂が動かない、または亀裂が動いてもすぐに停止する」という基準を満たせば、「ひび割れが耐震設計審査指針によって担保される発電用原子力設備全体の耐震性に影響を与えない」と判断しているのではないか。もし、違うというのであれば、後者の耐震性に影響を与えないという判断を健全性評価の基準ではどのように担保するのか、具体的に説明されたい。
 答弁書では、「その性格及び適用される場面が異なるため、耐震設計審査指針と維持規格二〇〇〇との整合性については検討していない。また、・・・JEAG四六〇一と維持規格二〇〇〇との整合性についても検討していない。」としているが、この整合性を検討しないで、一体どのようにして健全性評価の基準を導入しても安全水準は異ならない、または、耐震性に影響を与えないと言えるのか、具体的に説明されたい。
 (六) 耐震設計審査指針におけるAクラスおよびAsクラスの機器・配管系に関する許容限界は、基準地震動S1との組み合わせによって「発生する応力に対して、降伏応力又はこれと同等な安全性を有する応力を許容限界とする。」とし、Asクラスの機器・配管系に関する追加の許容限界として、基準地震動S2との組み合わせによって「発生する応力に対して、構造物の相当部分が降伏し、塑性変形する場合でも過大な変形、亀裂、破損等が生じ、その施設の機能に影響を及ぼすことがないこと。」と明記されている。この基準は、省令六二号第五条の「原子力設備は、地震力による損壊により公衆に放射線障害を及ぼさない」ための耐震設計の安全審査を行う際の基準であり、省令六二号第九条に基づく告示五〇一で具体的に材料規格および構造規格が規定されている。これらは設計・建設時はもとより供用期間中であっても満たされねばならない技術基準である。供用期間中に亀裂が入った際にも、これらの許容限界が満たされなくなることは許されていないと考えられるが、この解釈が正しいかどうか、答えられたい。
 答弁書では、「維持規格二〇〇〇における許容限界の設定について、適切な安全裕度が設けられていることを確認している」としているが、「適切な安全裕度」になっていることを基準地震動S1およびS2のそれぞれに対する許容限界について具体的に説明されたい。
 耐震設計審査指針における機器・配管系に関する許容限界を亀裂が存在する場合に拡張する方法としては、ひび割れを貫通穴で置き換えるのではなく、亀裂が存在するもとでの流動応力および降伏応力(または〇・二%耐力)を亀裂の大きさの関数として実験的に求め、それらを亀裂が存在しないときの引張応力および降伏応力(または〇・二%耐力)と置き換える方法が考えられる。こうして得られる許容限界を、維持規格二〇〇〇における許容限界と荷重レベルで比較することは可能である。このような比較検討を行ったのか、また、行っていないとすれば、なぜ行わないのか、その理由を答えられたい。
二 ひび割れによる機器・配管系の固有周期への影響評価について
 答弁書では、「原子力配管系の多入力振動実験報告書(その二)」(国立防災科学技術センター研究速報第七十九号)及び「機器・配管系の経年変化に伴う耐震安全裕度評価手法の研究報告書」(防災科学技術研究所研究資料第二百二十号)の実験結果に基づいて「ひび割れが生じたとしても固有周期への影響はほとんどないことが確認されており、ひび割れが生じた設備についても、ひび割れがない状態の固有周期を前提として、設備に作用する地震力を過小評価することなく耐震性の評価を行うことが可能である」と結論づけている。しかし、前者では、「配管モデルにおける最大応力はL字型配管のエルボ部のフープ方向に生じるが、エルボ部では亀裂の計測・解析がずっと困難になるため、直管部で応力的に最も厳しくなる水平垂直拘束部付近に亀裂を入れた」ことを明記し、「亀裂が複数箇所ある場合など、条件によっては亀裂進展と配管系の全体的な応答が連成する場合も考えられる」と指摘している。後者では、これらに関しては検討されなかったが、減肉による固有周期への影響は直管部よりエルボ部の方がかなり大きいこと、複数のエルボ部での減肉による固有周期増大効果は増幅しあうことを実験的に解明している。これらを考慮すれば、エルボ部でのひび割れによる影響、複数のひび割れの連成効果、減肉が共存する場合の評価を行わない限り、「ひび割れによる固有周期への影響はほとんどない」とは結論づけられないはずである。引用した報告書から、ひび割れによる固有周期への影響を無視するために都合の良い部分だけをつまみ食いして、固有周期への影響を無視できない条件を意図的に無視したのはなぜか、その理由を答えられたい。国民の安全を確保する観点から、ひび割れによる固有周期への影響を様々な観点から実験的に評価し直すべきであるが、なぜそうしないのか、説明されたい。

 右質問する。



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