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答弁本文情報

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平成十五年九月十六日受領
答弁第一三四号

  内閣衆質一五六第一三四号
  平成十五年九月十六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員北川れん子君提出原子炉の健全性評価尺度(維持基準)に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員北川れん子君提出原子炉の健全性評価尺度(維持基準)に関する再質問に対する答弁書



一の(一)について

 先の答弁書(平成十五年五月二十七日内閣衆質一五六第四九号。以下「答弁書」という。)におけるお尋ねの部分は、第百五十五回臨時国会における改正後の電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十五条第三項の規定に基づき使用開始後の発電用原子力設備の健全性の評価(以下「健全性評価」という。)の基準を定めるための検討を行うに当たっての原子力安全・保安院の考え方をお示ししたものである。
 また、このような考え方に基づき検討した結果、原子力安全・保安院においては、健全性評価の基準として民間規格である発電用原子力設備規格維持規格JSME S NA1―2000(社団法人日本機械学会。以下「維持規格二〇〇〇」という。)を採用することが適切であるとの結論を得ているところであり、本年八月二十八日、第五十五回原子力安全委員会臨時会議において、当該結論の概要等について説明を行い、当該席上においては、「運用の開始後も機械学会で改訂されたものについては、遅滞なくそれを検討して、しかるべく見直し案をつくるよう進めていただきたい」との意見などが出されたところである。

一の(二)について

 答弁書におけるお尋ねの部分については、発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十六年七月原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)が発電用原子力設備全体について設計の段階で耐震性の観点から問題のない構造強度を有していることを確認するための基準であるのに対し、健全性評価の基準は使用開始後の発電用原子力設備において発生したひび割れについて耐震性の観点から評価をするための基準であるという意味において、両者は「その性格及び適用される場面が異なっている」と答弁したところである。

一の(三)について

 答弁書の一の(一)についてで述べたように、耐震設計審査指針は、発電用原子力設備の構造強度を設計の段階において確認するための基準であって、発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十二号。以下「省令」という。)第五条の規定に基づきひび割れが発生した発電用原子力設備の耐震性を評価するための基準ではなく、「亀裂を有する機器・配管系がこの許容限界等を満足しているかどうかを判断する評価方法が存在しないため、運転や地震により作用する応力によって亀裂が進展するかどうかの観点から健全性評価の基準を別に定めるものである」との御指摘は当たらない。

一の(四)について

 答弁書のお尋ねの部分については、現在、省令第五条の規定を発電用原子力設備において発生したひび割れに適用するための統一的な基準は存在せず、ひび割れが発生した発電用原子力設備の耐震性については個別に判断してきているところ、健全性評価の基準は、省令第五条に規定する耐震性の基準をかかるひび割れに適用するための具体的な基準を提示するものであるという意味において、「省令第五条の規定の運用を明確化するという性格のものである」と答弁したところである。
 また、御指摘の「解説」とは、「解説 原子力設備の技術基準」(通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全管理課編著)を指すものと考えるが、同書の省令第五条の解説の部分においては、発電用原子力設備を設置する段階で同条の規定を適用するに当たり耐震設計審査指針が参考とすべき基準として存在するとの観点から、同指針を挙げているところである。このように、御指摘の同書の記述は、使用開始後において発生したひび割れについての基準が耐震設計審査指針であるとの趣旨によるものではなく、「これまでは、亀裂の有無にかかわらず、耐震設計審査指針で規定された機器・配管系の許容限界等が満たされなければならないとの解釈がなされてきた」との御指摘は当たらない。

一の(五)について

 お尋ねの「安全基準の水準」とは、発電用原子力設備が安全性を確保するために満たすべき耐震性に係る基準の高さである。
 答弁書の一の(一)についてで述べたとおり、健全性評価の基準は、省令第五条の規定の運用を明確化するという性格のものであることから、その導入によって現行の「安全基準」の水準を引き下げることにはならない。なお、政府としては、耐震設計審査指針の要求する個別の技術的な基準がひび割れが発生した発電用原子力設備の耐震性を省令第五条の規定に基づき評価する際の基準であるとの解釈を採ったことはない。また、発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和五十五年通商産業省告示第五百一号。以下「告示五百一号」という。)に定める発電用原子力設備に使用される材料に係る基準である材料の規格(以下「材料規格」という。)並びに発電用原子力設備の構造強度等に係る基準である構造の規格、安全弁等に係る基準、耐圧試験に係る基準及び監視試験片に係る基準(以下「構造等規格」という。)のうち、材料規格は設計時及び建設時にのみ適用されるものであるが、構造等規格は、健全性評価の基準を定めた後も、健全性評価の基準とは別に、使用開始後の発電用原子力設備にも適用されることとなる。
 お尋ねの「ひび割れが耐震設計審査指針によって担保される発電用原子力設備全体の耐震性に影響を与えない」という点については、健全性評価の基準を適用する際、耐震設計審査指針において耐震性の評価を行うための基準として設定されている地震動(以下「基準地震動」という。)を用いて、極限荷重評価法等の破壊評価法でひび割れが発生した部分が損壊しないことを確認することなどにより、評価することとしている。このため、健全性評価の基準の導入によって発電用原子力設備の「安全基準」の水準が新設時と使用開始後とで異なるものとなることはない。

一の(六)について

 一の(五)についてで述べたとおり、耐震設計審査指針の要求する個別の技術的な基準は、省令第五条の規定に基づきひび割れが発生した発電用原子力設備の耐震性を評価する際の基準ではなく、また、告示第五百一号の材料規格は設計時及び建設時にのみ適用されるものであるが、構造等規格は、健全性評価の基準を定めた後も、健全性評価の基準とは別に、使用開始後の発電用原子力設備にも適用されることとなる。
 お尋ねの維持規格二〇〇〇における許容限界の設定に係る安全裕度については、例えば、鋼管の極限荷重評価法による破壊評価では、基準地震動等の荷重に対し、周方向き裂の場合には一・三九倍の、また、軸方向き裂の場合には一・五倍の安全率を見込んで許容限界が設定されており、その水準は国際的にみても妥当なものであると考えている。
 御指摘の「耐震設計審査指針における機器・配管系に関する許容限界を亀裂が存在する場合に拡張する」ための方法は、ひび割れの評価方法として学術的に確立したものではないと承知しており、また、答弁書の一の(二)から(四)までについてで述べたとおり、耐震設計審査指針と健全性評価の基準とはその性格及び適用される場面が異なるため、耐震設計審査指針と維持規格二〇〇〇との整合性については検討していない。

二について

 御指摘の「エルボ部でのひび割れによる影響」については、「機器・配管系の経年変化に伴う耐震安全裕度評価手法の研究報告書」(防災科学技術研究所研究資料第二百二十号)において、直管部分ではあるが試験体のエルボ部のうち最大の応力が発生するものにごく近接する部分にひび割れを入れるという苛酷な条件を設定して実験を行っており、この実験結果から、一般にエルボ部にひび割れが発生している場合であっても固有周期への影響はほとんどないといえるものと判断している。「複数のひび割れの連成効果」については、このような効果を学術的に検証した報告は、現在までのところ特になされていないものと承知しているが、右の報告書及び「原子力配管系の多入力振動実験報告書(その二)」(国立防災科学技術センター研究速報第七十九号)において、単一ではあるものの板厚の半分の深さで全周にわたるひび割れを入れるという苛酷な条件を設定して実験を行っており、これらの実験結果から、運転中の発電用原子力設備で通常発生し得る程度の深さのひび割れであれば、複数のひび割れがある場合であっても、固有周期への影響はほとんどないといえるものと判断している。また、「減肉が共存する場合」については、発電用原子力設備においては、再循環系配管等に耐食性材料を使用するなど減肉を防止するための措置を講じているため、ひび割れと減肉が同時に発生する可能性は低いと考えている。これらのことから、「固有周期への影響を無視できない条件を意図的に無視した」との御指摘は当たらないと考える。
 いずれにせよ、現在想定しているものよりも深いひび割れが複数発生した場合などについては、必要に応じ、固有周期への影響等について評価を行うなど、適切に対応してまいりたい。



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