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平成十五年七月二十二日提出
質問第一三五号

狭山事件・再審請求における最高検の証拠開示等に関する質問主意書

提出者  北川れん子




狭山事件・再審請求における最高検の証拠開示等に関する質問主意書


 狭山裁判は、現在第二次再審の特別抗告審という段階であるが、一九九九年三月、当時の担当検事が、みかん箱六個分(三メートル)程度もあると回答した証拠の開示を今なお最高検は行おうとしておらず、また、最高裁も開示勧告を行っていない。
 狭山事件の被告とされた石川一雄さんは、三十一年七ヶ月にも及ぶ拘禁生活の後、仮出獄された今も『冤罪は晴れた訳ではない。まだ私には見えない手錠がかかっている』と、無実を叫び続けている。石川一雄さんという、「にんげん」一人の命運を左右する重大事に際し、全く不条理なことである。
 狭山事件発生の一九六三年五月一日から四十年目の二〇〇三年五月一日、石川一雄さんについて『埼玉新聞』は一面トップで「再審なれば、無罪分かる」と報じ、また『東京新聞』は、現地の埼玉県狭山市で行われた五月一七日集会の模様を翌日一八日に報じており、さらに『朝日新聞』は石川早智子さんの最高裁への要請を五月二三日に、他紙も大・小はあるが狭山事件について報道し、検察官が裁判に証拠として出していない公判未提出証拠の弁護側への証拠開示、事実調べについてふれている。
 情報公開が市民の権利として進められている世界的な趨勢の中、アメリカでは世界に先駆け証拠開示が制度化され、イギリスでは証拠開示法が制定されており、オーストラリアでは全面開示する継続的義務が負わされている。カナダでは、マイノリティであり先住民であるネイティブ・カナディアンへの冤罪事件が起こり、証拠開示で無罪となり、政府は王立委員会をつくり証拠開示が行われておれば冤罪は起こらなかったとし、判例で証拠開示を義務付けた。そこでは「証拠は有罪獲得のための手段でない。正義実現のための公共財である」という位置づけがされ、根本的な発想の転換がなされている。このように九〇年代にはイギリスをはじめ先進諸国で証拠開示がルール化、義務化されている。これらは、冤罪や誤判事件の原因調査の中からの教訓として制定されており、世界の流れとなっている。
 また、一九九八年十月には、国連の自由権規約委員会が狭山事件を取り上げ、日本政府に対して「検察官手持ちのすべての証拠にアクセス出来るよう」法律や実務を改善することを勧告している。被告にとって有利となる証拠、検事にとって不利な証拠を開示しないことは国際的にも認められないことである。
 司法制度改革審議会の最終意見は、「争点整理のための証拠開示の拡充が必要」とし、「証拠開示の時期・範囲等に関するルールを法令により明確化」すべきとしている。審議会の最終意見を受けて、内閣に設置された司法制度改革推進本部の「裁判員制度・刑事検討会」が、証拠開示や国民の司法参加のありかた(裁判員制度)の制度設計や立法化のための検討作業を現在行っている。裁判員制度の導入で、刑事裁判でも一〜二年という迅速化が目前の現在、狭山事件第二次再審の特別抗告審における検察、裁判所の姿勢では冤罪に苦しむ人々をさらに増やしていくのではないかと危惧を抱かざるをえない。
 このような状況を踏まえて、以下、質問する。

一 一九九九年三月二三日、東京高検と証拠開示折衝の際、弁護団に当時の担当検事(會田検事)が「証拠リストと照合して整理した。積み上げると二〜三メートルになる」と回答し、未開示証拠の存在が明らかになった。以後、弁護団では再三再四、証拠開示を求めている。しかし、その後、十人も担当検事がかわり、その都度折衝をはじめからやりなおさなければならないという異常な事態が続いている。會田検事が回答した未開示証拠の存在及び具体的な数量等について述べられよ。
二 この間、最高検は「証拠リスト」さえ開示することなく、逆に「証拠を特定すれば(開示を)考える」と弁護側に言っているが、証拠を特定するためには、リストの開示が前提であることは論を待たない。リスト開示の是非について述べられよ。
三 免田事件、財田川事件、松山事件、徳島事件、梅田事件、日野町事件などでは、証拠やリストが開示されているにもかかわらず、狭山事件では開示されていない。差別的対応だと思われるが、その理由を述べられよ。
四 この間、いくつかの団体が最高検を訪れ、検察事務官と会い、要請を行っているが、回答がなく、「検察官に、伝えています。」というのみである。質問や問いかけになぜ回答できないのか、その理由を述べられよ。
五 要請をうける事務官は、ただ、三十分間をやりすごせばいいという姿勢で、「個人の見解は差し控えさせていただきます」というのみで、会話さえ成立しない状況である。事務官にしゃべらないようにという教育などがなされているのか、述べられよ。
六 「次は、回答できる方に会わせてほしい」と要請しても実現されない。担当検察官に会う手立てについて述べられよ。
七 最高検では、部落差別問題をはじめとする人権問題の研修がなされているのか。カリキュラムなど詳細について具体的に述べられよ。
八 最高検の使命は、「国民」に良質な司法サービスを提供することにあるのであり、「国民」の要請や問いかけには誠実に説明責任を果たすことが求められていると考える。しかしながら、この間の対応にはそうした認識の欠片も見受けられず、居丈高で傲慢不遜な態度に終始されている。職責遂行の原点に立ち返り、人間らしい対応をすべきだと思うが、如何、お考えか。述べられよ。

 右質問する。



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