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平成十五年七月二十八日提出
質問第一五〇号

横浜人活事件の身分回復による全面解決のため、国鉄が作成した文書類の開示に関する質問主意書

 提出者
 瀬古由起子   大森 猛




横浜人活事件の身分回復による全面解決のため、国鉄が作成した文書類の開示に関する質問主意書


 日本国有鉄道改革法案が国会を通った五日後、一九八六年一二月三日、国鉄横浜貨物区「人材活用センター」(以下「横浜人活」)において、管理者に四週間の傷害を負わせたとして五名の国鉄職員が逮捕され、三名が公務執行妨害・不退去罪で起訴されたが、九三年五月一四日横浜地方裁判所第一刑事部は、この横浜人活事件について、暴力行為の不存在はおろか「国鉄当局と管理者の証言は口裏合わせの証言で信用できない」「診断書の取得と告訴の経緯に不明朗な事情がある」「管理者の挑発の策謀」と指摘し無罪判決を言い渡し謀略行為を厳しく断罪し、いわゆる横浜人活事件がデッチ上げ事件であったことを明らかにした。この判決が確定したのを受けて、横浜地方裁判所は九四年三月元被告の三名に対して国の刑事・費用補償を決定し、九五年三月横浜地方検察庁も同一事件で不起訴となった二名に対しても被疑者補償規定によって「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由ある」と裁定を下し、事件で被った被害の一部を償い支払った。同時に官報と三大新聞で公示した。そして、無罪確定から一〇年が経過し、加えて二〇〇二年八月二九日地位確認本訴裁判でも、横浜地方裁判所は五名に対して免職事由とされた暴行はなかったとして懲戒免職処分を違法・無効とし一六年余前に遡って国鉄職員の地位を認めこれを承継する日本鉄道建設公団の職員の地位を確認した。本件は裁判所において、デッチ上げ事件であるとして五たび断罪(刑事事件無罪判決確定、被疑者補償裁定、懲戒免職無効仮処分判決確定、宿舎明渡し損害賠償請求棄却判決確定、本訴地位確認判決)され、法的には決着したといえる。この間、デッチ上げ事件の被告とされた五名にとって、一六年余にわたり、精神的・経済的・職能的損失など、人権上許しがたいものといわなければならない。しかも、このような人権侵害が、国鉄改革という国策の名の下に行われたことは、政府にとって絶対に取り返しがつかない歴史的恥辱である。国鉄時代に裁判中であった横浜人活事件は、国鉄改革法及び、国鉄清算事業団法によって、国鉄の権利義務関係を国鉄清算事業団(これを承継した日本鉄道建設公団)が引継ぎ係争事件の解決義務を負っている。
 にもかかわらず、これらの五名に対して、いまだに政府は謝罪もせず、五名の希望する職場復帰を拒否していることは、前代未聞の野蛮な行為である。このようなことを二度と起こさないためにも、また、五名の名誉を回復するためにも、次の事項について質問する。

一 法的に決着した横浜人活事件は、国鉄当局などのデッチ上げ事件であり、当局自身が自らの責任で処理解決すべきではないかということである。
 横浜人活事件の解決について政府の姿勢は、積極性に欠けるものであり、これまで五名に対して、古賀誠元運輸大臣の答弁をはじめ歴代の政府関係者が「運輸大臣が国会で申し上げたように、刑事事件についてデッチ上げ無罪が確定している事実を前提に、一日も早く当事者が納得できる解決に全力で努力します。」(九八年七月一七日縄野克彦鉄道局次長が回答)と約束したにもかかわらず、それまで協議し確認した事項を反故にするような信義に反するものであり、事実上解決を引き延ばし、放置しているといわざるをえない。
 1 本件については、九六年七月二六日北沢清功運輸政務次官の発言及び翌年四月一五日第一四〇回国会衆院運輸委員会での古賀誠運輸大臣、梅崎寿鉄道局長の答弁があり、これを受けて九八年一月二八日から五年有余にわたって縄野克彦鉄道局次長、石川裕己鉄道局次長、梅田春実鉄道局次長と当事者五名と協議し「事件解決に全力で努力する」「事件の解決は、この場で合意したことを協定、協約で確認する。但しこの場で合意した内容で裁判所で和解調書をつくる。」旨の確認がされていたと聞いているが、これらの事実についての経過と内容を明らかにされたい。
 2 デッチ上げ事件を引き起こした加害者の処罰について第一五四回国会衆院国土交通委員会で「あくまで一般論として申し上げますが、実際は被害の事実がないのに被害があったということで虚偽の告訴をする、それが刑事上の処分を受けさせる目的で行われたという場合には、これは虚偽告訴等の罪の構成要件に該当することになります。また、告訴の件に関しましては、これは刑事訴訟法上、公務員について告訴義務というのが原則として設けられております。」と政府参考人古田佑紀法務省刑事局長が答弁しているが、加害者の処罰についてどのように考えているのか。
二 デッチ上げ事件で、無罪確定したことは、旧国鉄法に基づき身分は国鉄職員に復帰することになることは明白である。
 五名に対する懲戒免職処分について、刑事事件の無罪判決が確定した時点で、日本国有鉄道改革法二九条をはじめとする諸法規に基づき、国鉄清算事業団とこれを監督する当時の運輸省は、これを取消し、原職復帰させる義務があったにもかかわらずそれを行わなかった。また、その措置を取らなかったのは国鉄清算事業団の不作為というほかない。この違法状態を放置してきた責任は国鉄清算事業団にあり、それを監督する国土交通省(旧運輸省)にある。このような違法状態を除去する義務は現在でも厳然と存在する。速やかに違法状態をなくし、無罪の労働者と家族に対する一六年余に及ぶ人権侵害の被害が償われる、法治国家に相応しい全面解決が図られなくてはならない。にもかかわらず、いまだに身分が完全に回復されず人権侵害に対する補償が行われないのは問題である。
 当局によって懲戒免職処分による、JR採用名簿の登載を拒否されたのであるならば、裁判で懲戒免職処分が無効となって国鉄職員として身分が遡って回復した場合、日本国有鉄道改革法二三条の採用手続きによって、名簿に基づいて採用通知が行われたと同じように扱うべきであり、採用手続きの際、五名が意思確認をした原職場即ちJR各会社に採用されなければならない。
 1 あらためて、当事者の希望を最大限受け入れた職場への復帰とすべきではないのか。
 2 また全面解決への障害の大きな要因として日本国有鉄道改革法などの国鉄改革関連法に基づく施行の経過が全面的に明らかにされていないため五名の処遇について、これら諸法における取扱が明らかにされていないことによるものと考えられる。したがって国鉄改革関連法に基づく施行の経過にかかわる文書等を全面的に明らかにし、本件が公正・適正に扱われていたのか今日あらためて検証が求められる。この検証を行うために次の事項について質問する。
 @ 国鉄が作成した移行、引継ぎのための諸文書、設立委員会の審議内容等は国鉄改革が実際にはどのように行われたのかを明らかにするもので、国鉄改革とりわけ採用・人事政策が公正・適正に行われたかどうかを判断するうえできわめて重要であると考えられる。当時、運輸省は日本国有鉄道に対する監督権限を全面的に有することから日本国有鉄道改革法に基づいて国鉄が作成した文書等については、運輸省においても国鉄から送達された文書を受領し管理していた。国鉄改革関連法に基づいて国鉄が作成した文書等で、八六年一二月二〇日から八七年三月三一日までのもので運輸省文書管理規則によって運輸省が保管し、今日国土交通省に引継がれ保管されているもの全ての所在と保管・管理状況を明らかにされたい。
 A 八六年一二月二〇日から八七年三月三一日の期間において、日本国有鉄道改革法及び同施行規則に基づく承継法人への採用手続きの実施通達である国鉄総裁通達の全ての所在及びその記載内容を、明らかにされたい。
 B 同期間における日本国有鉄道改革法及び同施行規則に基づく承継法人への採用手続きの実施通達である国鉄総裁通達を円滑に実施するため、国鉄職員局職員課等が発した事務連絡文書全ての所在及び記載内容を明らかにされたい。
 C また、昭和六二年一月二四日付事務連絡文書、職員局職員課伊藤補佐発の各機関(担当)課長宛「名簿登載数の報告について」という文書は、日本国有鉄道改革法二三条二項に基づく名簿作成過程で国鉄本社職員局職員課の名簿作成責任者が各鉄道管理局の採用候補者名簿作成責任者に宛てたものと考えられるが、国鉄職員の採用候補者名簿として国鉄職員の組合別の報告を求め、組合別の名簿の作成を行っていたのではないかと考えられる、その事実の有無と所在を明らかにされたい。
 D 昭和六二年一月二四日付事務連絡文書に基づく「国鉄職員の組合別の報告」は、前記採用候補者名簿に登録するか否かについて重要な要素として参考にされた。名簿登載にあたって職員管理調書に基づき選定作業を行ったことは、「基本になりますのは、やはり『職員管理調書』と言われるものでありまして」(松田昌士証言、中労委神奈川不採用差別事件審問)という証言からも明らかである。この職員管理調書については八六年一〇月二一日の第一〇七回国会衆院国鉄改革特で東中光雄議員が国鉄電気工事区において職員管理調書に基づき国鉄当局による国労からの脱退工作の実態と不当労働行為の事実が指摘をされた。この職員管理調書には既に東日本旅客会社要員、東海旅客会社要員と余剰人員との選別が行われていたことが記載され、余剰人員は全て国労組合員であることなど組合別の選別が行われていた事実を明らかにしている。この職員管理調書の所在と五名の職員管理調書での記載内容を五名に開示すべきだと考えるがどうか。
三 また、JR採用に五名が応募し、その採用基準をクリアしているのにもかかわらず、当時の懲戒免職処分と一緒に、一方的に名簿登載を拒否したというのであるならば、その責任は重大である。
 1 国鉄の分割民営化にあたって、承継法人(JR各会社等)に引継がれる国鉄職員の採用手続きについて、日本国有鉄道改革法二三条は次の旨規定している。
 「承継法人の職員の労働条件及び職員採用基準が、国鉄職員に対し提示され、承継法人の職員の募集が国鉄を通じてなされ、これを受けて国鉄は承継法人の職員となることに関する国鉄職員の意思を確認し、この意思を表示した者の中から採用の基準に従い各承継法人の職員となるべき者を選定して名簿を作成し、設立委員等に提出して、設立委員等はこの名簿に記載された国鉄職員のうちから承継法人の職員となるべき者に対し採用する旨の通知を行う」
 国鉄はこの手続きに従い承継法人の採用候補者名簿を作成し、八七年二月七日深夜設立委員会・運輸大臣に提出した。当時はまだ国鉄職員であった五名に対して、同年二月九日から一二日の間に懲戒免職処分が発令されたがいずれも名簿提出後であるから名簿には登載されていなければならない。ところが、JR各会社も日本鉄道建設公団も登載されていなかったと主張している。五名が名簿に登載されているかいないかは、名簿を見れば一目瞭然のはずである。しかし、JR各会社も日本鉄道建設公団も国土交通省も「これを保持していない」と言うのは虚偽といわざるを得ない。JR採用方式の法的枠組みを作成運用した政府の責任は重大であり、JR応募者の名簿を当事者に明らかにすべきではないのか。
 2 国土交通省石川裕己鉄道局長は衆院国土交通委員会で、「五人の懲戒免職処分が発令されて国鉄職員でなくなったのは、国鉄作成候補者名簿が提出される二日後(八七年二月九日から一〇日の間に発令)のことで名簿には登載されているはずで訴訟の証拠収集の義務から保存して国鉄清算事業団に引継がれている。ないというのなら廃棄簿・引継ぎ簿を、明らかにされたい。」との質問に「資料としては膨大なものと思います。現在保管されていない」と答弁した(二〇〇二年七月二四日第一五四回国会衆議院国土交通委員会)。これに対して国土交通委員会委員長から「保管の事実経過の報告」を求められた(同年七月三〇日)のに対し、同局長は後日「採用候補者名簿」の所在について、国鉄から設立委員に提出されたものであり運輸省(国土交通省)及び国鉄(鉄道建設公団)は、保管していない。」とメモを提出してきたが、「国鉄は八七年新会社の採用候補者名簿を作成、二月七日設立委員会・運輸大臣に提出した。」(労働運動史 昭和六二年労働省編)との記述を示されている。現在、採用候補者名簿は、どこに保管されているのか明らかにされたい。

 右質問する。



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