衆議院

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平成十五年九月二十六日提出
質問第一四号

「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問主意書

 提出者
 吉井英勝    小沢和秋    瀬古由起子   山口富男




「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問主意書


 ホームレスの自立の支援等に関する施策を総合的に推進するため、平成十四年八月に当初、民主党単独で提出後、衆議院厚生労働委員長提案になった「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下「法」という)の成立をみた。すでに「法」第十四条に基づく全国調査が今年一月から二月にかけて実施され、ホームレスの数は目視調査で二万五、二九六人に達し、全ての都道府県においてその存在が確認される深刻な状況となっている。
 このような中で、「法」第五条で国の責務が、第十条では財政上の措置がそれぞれ明記されていることは評価できるところである。また、「法」第三条第二項には、「ホームレスの自立の支援等に関する施策については、ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要である」と記されている。このことは、先の全国調査の結果によると、野宿生活に至った理由として「仕事が減った」(三五・六%)、「倒産・失業」(三二・九%)があげられていることからみて、当然のことである。今後望む生活について、「きちんと就職して働きたい」と答える人が最も多い(四九・七%)ことからも、就労対策が基本であることは明確である。
 以上のように深刻な状況にあるホームレスの実態を解決するためには、国の責任による支援と緊急の対策が必要であり、今回示された「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」の施策をいっそう充実させるべきと考える。
 以上のことを前提として、質問する。

(一) 緊急地域雇用創出特別交付金によるホームレスの特別就労対策を強力に推進すべきである。政府は、平成十一年九月から緊急雇用対策として緊急地域雇用創出特別交付金を創設したが、ホームレスが多数存在する大阪府ではこの財源を活用して「高齢者特別清掃事業」を実施してきた。この事業は文字通り、高齢化したホームレスにとって「命の綱」になっているが、地方自治体のこうした事業を政府はどう評価しているか。今後、ホームレスの雇用機会の拡大のために交付金の重点的増額を図ることが必要と考えるが、どうか。地域雇用創出特別交付金事業の延長と制度の充実を図るべきではないか。
(二) 平成十三年度から始まった日雇労働者(等)技能講習事業によって技能を取得したホームレスが、厳しい雇用情勢のもとで就労を図るには、いま厚生労働省がすすめているホームレス等試行的雇用事業をもっと積極的に活用するべきではないか。現在、大阪、東京、横浜等で実施されている日雇労働者等技能講習事業で技能取得した労働者を雇用した事業主への助成金制度をさらに拡充することが必要であると考えるが、どうか。
(三) 「基本方針」では、公的就労事業が欠落していると考える。昨今の雇用情勢の悪化は、大企業のリストラを支援し金融の引き締めによって倒産を増大させるなど、国の施策によるところが極めて大きい。その責任から言っても、特別交付金での地方自治体の創意に依存するだけでなく、国として国民の生活に役立つ仕事にかかわる公的就労事業を積極的に起こすべき時期に来ていると考えるが、どうか。「法」と「基本方針」に明記されているホームレスの就業の機会の確保のために、最も有効な施策である公的就労事業を起こすことを、「第二の失業対策事業になる」として忌避し、あえて欠落させているのではないか。
(四) ホームレスが多数存在する地域に対する「ホームレス自立支援特別交付金」を創設すべきと考える。「基本方針」にはホームレスの就業の機会の確保について、地域の実情に応じた施策を講じていくことが必要であるとうたわれている。今回、各地方自治体や民間団体から意見や要望の多かった雇用の創出を実施するための財源(「ホームレス自立支援特別交付金」)が「基本方針」には盛り込まれなかったが、当面は大阪府、東京都などホームレスの多数存在する地域を対象に「ホームレス自立支援特別交付金」の創設を行うべきと考えるが、どうか。
(五) 今回の「基本方針」に先立って実施されたホームレスの全国調査については、事前調査を三回行った上で平成十五年一月から二月にかけて、すべての市町村で統一した調査方法で実施しているが、この時期は積雪寒冷地域である東北地方と北海道においては「法」第二条の定義によるホームレスを把握できない。そこで、これらの地域については再調査を五年間の運営期間後とせず、できるだけ早く春、夏の時期に調査をやり直して対策を追加、拡充すべきではないか。
(六) 「基本方針」においては、ホームレスについて「厳しい経済情勢の下(中略)今後も増加傾向が続くと思われ(中略)より一層深刻さを増すものと考えられる」「地方においては、数が少ない段階できめ細かな施策を実施することにより(中略)早期解決を図ることが重要」とされている。そこで、緊急雇用対策とホームレス対策の重点地域に、有効求人倍率の悪い地域、中高年者の雇用悪化地域を加えていくべきと考えるが、どうか。建設産業等、不況の影響を大きく受ける業種の業種別対策も行うべきと考えるが、どうか。
(七) 雇用保険日雇労働求職者給付金及び健康保険日雇特例被保険者手帳(現在の健康保険法第三条第二項)での各療養給付を受けるための給付支給要件について、緩和すべきと考える。大阪府のあいりん地区を例に見ると、推定労働者数に大きな変動が無いにもかかわらず、雇用保険日雇労働被保険者手帳の有効求職者数が平成十五年八月末現在、一万人を割り減少を続けており、かつての半数以下になっている。この傾向は健康保険も同様である。これは給付要件である前二カ月二十六日の就労が、現在の厳しい雇用情勢のもとで大変困難であることに原因がある。したがって、平成六年に改正された要件を時限的にでも改めて、緩和すべきと考えるが、どうか。
(八) 建設日雇労働者が失業によってホームレスとなるケースが多いため、新たな転業支援として中小企業活性化対策や地域振興策と結びついた協働団体の発掘と技能講習及び就業支援を行うための「就業支援センター」の創設が必要と考えるが、どうか。
(九) 平成十五年七月三十一日付の厚生労働省社会援護局通達では、「保護施設等を退所した者及び必要な治療を終え医療機関から退院した者については、公営住宅等を活用することにより居宅において保護を行うこと」としており、ホームレス保護策として公営住宅の活用と確保を図ることを明確にしている。政府は、各種の公営住宅空き住戸への優先入居制度の活用をはじめ、公営住宅確保策をどのようにするのか、具体的に示されたい。
(十) 前項「通達」では、居宅生活が可能と認められた者で、公営住宅に入居できず住宅を確保するため敷金等を必要とする場合、敷金等を支給できるとしている。この場合でも、野宿からいったん病院や保護施設や社会福祉法に規定する施設(無料低額宿泊所)等においての保護が行われた後に限定しているかのように読み取れる。衆議院厚生労働委員会で採択された「決議」には、「ホームレスの自立の支援に際しては、自立に至る経路や自立のあり方について、可能な限り個々のホームレスに配慮した多様な形が認められるように努めること」とうたわれている。野宿からこれら施設等での保護を受けた後でなくても、自立可能な場合は敷金等を支給し、居宅保護を認めることも必要ではないかと考えるが、どうか。
(十一) 大阪では、野宿者が生活保護を申請した場合、稼働年齢層である六十歳以下に対しては稼働能力の活用が十分に図られていないという理由で申請が却下されている。この結果、野宿者は行政から何の援助も受けられず、引き続き野宿を余儀なくされ続けている。この事態を「法」と「基本方針」にてらして、どのように考えるか。直ちに改善を図るべきではないか。
(十二) 東京都新宿区では、住民からの苦情を理由に自立支援事業との連携無しに「公園管理の適正化」の名目の下でホームレスの追い出しが行われたが、この事実を認識しているか。このような行為は「法」の精神に反し人権を踏みにじるものであり許されないと考えるが、どうか。
(十三) この際、ホームレス対策を本格的、総合的に推進するために「ホームレス自立支援推進部局」を設置するべきである。「法」第三条第二項では、「ホームレスの自立の支援等に関する施策については(中略)前項の目標に従って総合的に推進されなければならない」とうたわれている。特に雇用創出を柱とした総合対策をすすめるには、厚生労働省内はもとより、関係省庁が密接な連携を図らなければならないと考える。そのため、国がホームレス問題に取り組みはじめた平成十一年五月、当時の関係省庁や地方自治体が連絡会議を設置し、当面の対応策をまとめた前例を参考にし、厚生労働省、国土交通省、総務省、財務省等で構成する国の機関としての推進部局(対策本部)を設置し、地方自治体での実施計画の実行の推進を予算措置を含めて統括的に図ることが国の責任であると考えるが、どうか。

 尚、今国会は、十月中旬頃に解散が予想されているが、質問主意書については国会法第七十五条において「内閣は、質問主意書を受け取った日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をすることができないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示することを要する」とある。本質問主意書に対する答弁を少なくとも国会解散前にすることを強く要求する。

 右質問する。



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