質問本文情報
平成十六年二月二十三日提出質問第二四号
日米地位協定第十七条五項Cの「拘禁」に関する質問主意書
提出者 照屋寛徳
日米地位協定第十七条五項Cの「拘禁」に関する質問主意書
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下、日米地位協定という)第十七条五項Cは、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」と、定めている。日米地位協定第十七条五項Cは、わが国に、第一次裁判権があっても、「身柄が合衆国の手中にあるとき」には、わが国が起訴しない限り身柄が引き渡されないこととなっている。
しかしながら、わが国の警察権、裁判権を十全に行使をし、国民の安全を確保するためには、被疑者の身柄をわが国が直接にコントロールできることが必要である。
最近、沖縄県宜野湾市で発生した米海兵隊員らによる強盗致傷事件は、あらためて日米地位協定第十七条五項Cの不合理性とそのすみやかな改正の必要を知らしめるものになった。
以下、質問する。
二 沖縄県警が本件事件について捜査の端緒を得た日時、その方法を明らかにされたい。
三 本件事件の被告人らは、現行犯逮捕されずに普天間基地内に逃走したようであるが、沖縄県警は同被告人らの身柄確保のためにいかなる手段方法を講じたのか明らかにされたい。
四 本件事件の被告人らが米軍側によって基地内で身柄を確保された日時、身柄確保についての沖縄県警への連絡の有無及びその日時を明らかにされたい。
五 沖縄県警が本件事件の被告人らを身柄不拘束のまま取り調べた日時、回数、並びに那覇地方検察庁への送検日時を明らかにされたい。
六 本件事件の公判状況を報道した二〇〇四年二月十三日付の地元二紙によると、公判廷で担当検事から被告人らの上司である中佐に対し、「強盗致傷という凶悪犯罪なのに、両被告を含む容疑者三人をなぜ米軍キャンプ・ハンセン内刑務所に収容しなかったのか。なぜ、共犯者同士が会えない状況をつくらなかったのか」という趣旨の質問をしたところ、中佐は「米軍法務官から、刑務所に入れると日本側の捜査に協力する時、手続きが複雑になるという助言があった。容疑者三人に基地内から出ないよう命令し、勤務させていた」などと説明した上で、「三人が会わないことを百パーセント守らせることはできなかった」と述べたという。
かかる地方紙の報道内容について、私が二〇〇四年二月十八日の衆議院予算委員会で質問したところ、法務省樋渡利秋刑事局長は、「中佐の証人尋問が行われまして、そのようなやりとりがあったことは承知しております。」と答弁している。川口順子外務大臣は、「そういう事実があったかどうかについては調べてみたいと思います。」と答弁しているが、外務大臣によるその後の調査結果を明らかにされたい。
七 日米地位協定第十七条五項Cの「拘禁」の意味について、川口順子外務大臣は二〇〇四年二月十八日の衆議院予算委員会における私の質問に対し、「・・・一般論として申し上げれば、日本が、わが国が裁判権を行使する事件の米軍人等の被疑者の身柄が米側の手中にある場合に、米軍の責任と判断において被疑者の身柄の確保等に必要な措置を講じているというふうにわが国としては、承知をいたしているということでございます。」と答弁している。
一般論、抽象論ではなく、政府は日米地位協定第十七条五項Cの「拘禁」をどのように解釈し、いかなる運用をしてきたのか政府の統一見解を明らかにされたい。
八 政府は、日米地位協定第十七条五項Cの「拘禁」は、「米軍の責任と判断において被疑者の身柄の確保等に必要な措置として講じた」ものであれば、単なる基地外への外出禁止のみで基地内の刑務所に収容しなくてもよいとの考えか。
また、本件事件のように共犯関係にある者が自由に会える状態であっても、「米軍の責任と判断」による措置であればやむなしと容認する考えか。
九 日米地位協定第十七条五項Cの「拘禁」方法は、わが国の刑事司法制度の根幹に関わる重大な問題と思慮するが、政府は「米軍の責任と判断において被疑者の身柄の確保等に必要な措置として講じた」ものであれば、その「拘禁」の態様は米軍の自由裁量であるとの考えか、見解を明らかにされたい。
十 一九九二年三月及び一九九三年七月には米軍により身柄拘束中の被疑者が逃亡した事件があったようであるが、これまでに日米地位協定第十七条五項Cで米軍が身柄拘束中の被疑者が逃亡した事件の事例を詳細に明らかにされたい。
十一 日米地位協定第十七条五項Cは、全面的に改正し、わが国が第一次裁判権を有する場合、米軍人等被疑者の身柄はわが国において直接確保するものとし、その身柄を米側が確保している場合には、わが国における公訴提起の有無にかかわらず、わが国の要請に基づき、直ちに身柄を引き渡すべきと考えるが政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。