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平成十六年六月十五日提出
質問第一八八号

プルトニウム利用政策に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




プルトニウム利用政策に関する質問主意書


 一九九五年の「もんじゅ」事故で高速増殖炉開発が頓挫し、使用済み核燃料の全量再処理路線をとってきた日本は、利用計画が未定のプルトニウムを大量に保有することになった。このプルトニウム過剰をとりつくろうため、政府の政策でプルトニウム利用の主役として九七年に急浮上したのが、「プルサーマル計画」である。しかし、九六年一月の福井、福島、新潟の三県知事提言が、核燃料サイクルのあり方について国民的合意形成を求めたことに見られるように、プルサーマルなど核燃料サイクルには、国民的合意はなかった。実際、東海再処理工場事故、JCO臨界事故、さらに東京電力などの不正事件などが相次いで発生し、原発「安全神話」が崩壊し、国民の中で原発への不信が高まる中で、「プルサーマル計画」は事実上の中止状態になっていた。こうして、政府の原子力長期計画の破綻も明らかになった。
 ところが、最近、関西電力の高浜原発三・四号機、日本原電の敦賀二号機・東海二号機、九州電力の玄海原発三号機、四国電力の伊方原発三号機など電力各社は、「プルサーマル計画」の実施にむけて具体的に動き出した。これは、昨年十月に政府が「エネルギー基本政策」の中で「プルサーマルを着実に推進する」とした方針に力を得てのものである。
 政府が全量再処理とプルサーマルによるプルトニウム利用に固執するならプルトニウム過剰と原発事故の危険性はさらに深刻な事態に陥ることになる。
 政府がこの破綻したプルトニウム政策を根本的に転換することが必要であり、この立場から政府の方針を改めて問うものである。
 従って、次の事項について質問する。

一 プルトニウム過剰について
 各電力会社がプルサーマル計画をすすめる背景には、海外再処理した使用済み核燃料の返還プルトニウムの問題がある。
 1 海外再処理委託の七一〇〇トンはすでに搬出済みだが、再処理が完了する時期とプルトニウム回収量はどう見込まれているか。
 また、再処理量とプルトニウム回収量の現状と今後の見通しはどうなっているか。
 2 海外再処理以外の使用済み核燃料の現在量、今後四〇年程度の推移及びそこに含まれるプルトニウムの量はどうなっているか。
 3 六ヶ所再処理工場が予定通り稼動した場合のプルトニウム回収量は毎年どれくらいと見込まれるか。また、それに対応したプルトニウム消費計画はどうなっているか。
 4 1〜3をまとめると、プルトニウムの累積生成量(使用済燃料のものも含む)、累積回収量、累積消費量、及び過剰量について、現状及び今後四〇年程度の推移はどうなるか。
二 内外のプルサーマル実証例について
 海外の総てのプルサーマル利用の原発について、発電所の規模(何万キロワット)、炉心を構成する燃料体の総数、その中でMOX(ウランと核分裂性プルトニウム八%の混合酸化物)燃料の数とその割合、燃焼度について示されたい。
 さらに、前記の海外の事例と比較した時、計画中の日本のプルサーマル利用とどこが違うところかを説明されたい。
三 使用前後の組成と放射能の変化について
 一〇〇万キロワットの原発の軽水炉で低濃縮ウラン燃料を燃やす通常の場合と、MOX燃料を燃やすプルサーマル利用の場合について、それぞれ(ア)燃焼する前、(イ)四〜五万MWd程度燃焼させた後の使用済み、この二つの場合に、燃料中の核分裂性プルトニウムの組成はどのようになると考えているのか。
 また、この場合に、長寿命で高レベル放射性物質であるアクチノイド系物質の蓄積量・放射線量はそれぞれどのようになるか。これを低濃縮ウランの場合と比較すると、それぞれ何倍になるか。
四 事故時の放出放射線量予測について
 1 前記の三の一〇〇万キロワット原発で、仮想事故、重大事故、過酷事故を想定した場合に、低濃縮ウラン燃料使用とプルサーマル利用のそれぞれについて、α線、β線、r線、中性子線の放出量は幾らになると見込んでいるのか。
 2 各原発にMOX燃料を装荷した際の「重大事故」または「仮想事故」時の放射能の想定放出量について、どのような検討がなされたのか。低濃縮ウラン炉心の場合とどのような違いがあるのか。もし、この件が検討されていないとすれば重大であるが、その理由を明らかにされたい。
 3 米核管理研究所は、高浜四号機(PWR八七万キロワット)の周辺一一三キロメートルの地域での「過酷事故」時の低濃縮ウラン炉心とMOX炉心について、プルトニウム放出割合がH(高)、M(中)、L(低)の三ケースで「潜在的がん死」、「急性死」の影響について比較検討し、四分の一MOX炉心の場合、潜在的がん死は四二〜一二二%、急性死は一〇〜九八%も高くなる、フルMOX炉心の場合、潜在的がん死は一六一〜三八六%、急性死は六〇〜四八〇%も、低濃縮ウラン炉心の場合と比較して高くなるとして、MOX燃料使用のリスクを厳重かつ正直に行うよう警告している。この米核管理研究所の警告をどう受け止めているか。
五 バックエンドコストについて
 原発バックエンドコストが幾らになるのかが大きな問題になると指摘してきたが、電気事業連合会の一八兆八千億円という数字などが示されている。
 1 電気事業連合会などは約一〇兆円は回収制度があるとして、残りの約九兆円は新たな国民への直接・間接の負担増を求めているが、国民に負担を求める額とその根拠を示されたい。
 2 家計負担は一世帯当たり一二六〇円から一四〇〇円、一月当たりに直すと一一七円という試算値などが示されているが、政府が考えている原発の後処理コストについて、単位発電量当たり幾らか、家計負担としては一世帯当たり幾らかを、また、その計算根拠を示されたい。
 3 いかなる形であれ国民に新たな負担増を求めることは絶対に許されないと考えるが、政府の見解はどうか。
六 直接処分コストと再処理コストの計算等についての政府の比較研究について
 1 最近、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学の研究報告の中で、使用済み核燃料の再処理コストは、直接処分と比較して著しくコスト高になると試算されている。こうした試算に反論できるだけの合理性のある試算や研究成果物はあるのか。
 2 使用済み燃料の再処理と直接処分とで、比較検討することが必要な段階にきている。政府として、どのような検討をしているのか。
 また、民間事業者である電力会社が、経営判断として直接処分を選べるようにすべきとの意見もあるが、どのような見解をとっているのか。
七 全量再処理方式について
 使用済み核燃料の「全量再処理」方式は、プルトニウムを総て使い切るということが前提になっている。しかし、このおおもとにあった高速増殖炉(FBR)路線が失敗したもとで、再処理に固執すればプルトニウム過剰が深刻になり、世界各国から「日本は核武装するのではないか」と不信の目でみられかねない。中間貯蔵というバッファーを設けても、再処理を前提とする限り本質的には同じである。原子力先進各国の多くは、核不拡散政策、技術的困難あるいはコスト面から再処理など核燃料サイクルから撤退している。
 1 日本でも、これ以上、原発の危険を増大させないためにも、国際的不信を招かないためにも、プルサーマル利用と使用済み核燃料の「全量再処理」は止めるべきではないか。
 2 また、全量再処理方式の見直しも視野に入れた原子力長期計画改定の議論が行われようとしているときに、六ヶ所再処理工場の劣化ウランを使った試運転は再検討すべきではないか。さらに、本格運転もやめる決断をするべきと考えないのか。

 右質問する。



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