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平成十六年七月六日受領
答弁第一八八号

  内閣衆質一五九第一八八号
  平成十六年七月六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員吉井英勝君提出プルトニウム利用政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員吉井英勝君提出プルトニウム利用政策に関する質問に対する答弁書



一の1について

 電気事業連合会を通じ実用発電用原子炉を有する十社の電気事業者(以下「本件電気事業者」という。)から聴取したところ、お尋ねの点については、次のとおりであるとのことである。
 本件電気事業者が海外の再処理事業者に再処理を委託した約七千百トン・ヘビーメタルの使用済核燃料(以下「海外再処理核燃料」という。)については、本年三月末現在、そのうち約六千八百トン・ヘビーメタルの使用済核燃料について再処理を終了しているところであり、これまでに回収されたプルトニウム二三九及びプルトニウム二四一(以下「核分裂性プルトニウム」という。)の量は、約二十七トンである。残りの約三百トン・ヘビーメタルの使用済核燃料については、平成十八年ごろまでに再処理を終了する予定であり、今後、約五トンの核分裂性プルトニウムが回収される見込みである。

一の2について

 電気事業連合会を通じ本件電気事業者から聴取し、また、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)等国内の再処理事業者から聴取したところ、本年三月末現在、本件電気事業者が有する実用発電用原子炉から生じた使用済核燃料(海外再処理核燃料を除く。)の量は、約一万二千トン・ヘビーメタルであり、これに含まれる核分裂性プルトニウムの量は、約七十一トンであるとのことである。
 電気事業連合会を通じ本件電気事業者から聴取したところ、本件電気事業者が有する実用発電用原子炉から生じる使用済核燃料の量の「今後四〇年程度の推移」については、当面は年間約九百トン・ヘビーメタルから約千トン・ヘビーメタルで推移し、その後、現在計画中の実用発電用原子炉がすべて運転を開始した段階で年間約千二百トン・ヘビーメタルから約千三百トン・ヘビーメタルとなる見込みであるとのことである。また、これらの使用済核燃料に含まれる核分裂性プルトニウムの量については、燃料集合体の種類等により、燃料集合体ごとに大きく異なるものとなることから、これを長期間にわたり推計し、お示しすることは困難である。

一の3について

 日本原燃の六ヶ所再処理工場が本格的に稼働すると、同工場において、年間約五トン弱の核分裂性プルトニウムが回収される見込みである。
 また、同工場で回収される核分裂性プルトニウムについては、当面、プルサーマル(軽水炉におけるウラン・プルトニウム混合酸化物燃料の利用をいう。以下同じ。)及び高速増殖炉等の研究開発に係る利用が想定される。プルサーマルについては、本件電気事業者が公表している計画のとおり平成二十二年ごろ以降十六基から十八基の実用発電用原子炉においてプルサーマルが実施された場合、合計で年間約五トンから約八トンの核分裂性プルトニウムの利用が見込まれ、高速増殖炉等の研究開発については、高速増殖原型炉「もんじゅ」が運転を再開した後は、年間数百キログラムの核分裂性プルトニウムの利用が見込まれる。

一の4について

 本年三月末までに、本件電気事業者の実用発電用原子炉において生成された核分裂性プルトニウム(本年三月末時点で、実用発電用原子炉内に存するものを除く。)の量は、約百八トンであり、そのうち再処理により回収された核分裂性プルトニウムの量は、約三十二トン(核燃料サイクル開発機構東海事業所の再処理施設で回収された約五トンを含む。)である。また、回収された核分裂性プルトニウムのうち約三トンが既に消費されている。
 核分裂性プルトニウムの「累積生成量」、「累積回収量」、「累積消費量」及び「過剰量」の「今後四〇年程度の推移」については、一の2についてで述べたように本件電気事業者の実用発電用原子炉において生成される核分裂性プルトニウムの量を長期間にわたり推計することが困難であること、プルサーマルを実施する実用発電用原子炉の数等に係る長期的な計画が明らかではないことなどから、お示しすることが困難である。

二について

 「海外の事例と比較した時、計画中の日本のプルサーマル利用とどこが違うところかを説明されたい」とのお尋ねについては、どのような観点からの比較を行うべきかが明らかでないためお答えすることは困難であるが、政府が把握しているウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)を使用している海外の実用発電用原子炉についてのお尋ねの事項及びこれらの事項に関する核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第二十六条第一項に基づきMOX燃料を使用することを可能とする旨の許可を行った我が国の実用発電用原子炉のデータは、別表第一のとおりである。

三について

 我が国には電気出力が百万キロワットの実用発電用原子炉が存在しないため、電気出力が百十万キロワットの東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所三号炉(以下「柏崎刈羽三号炉」という。)を例に挙げてお尋ねの点にお答えすれば、東京電力株式会社から聴取したところ、柏崎刈羽三号炉において、標準的な組成のMOX燃料(燃料集合体平均核分裂性プルトニウム含有率約二・九重量パーセント)及びウラン燃料(燃料集合体平均濃縮度約三・七重量パーセント)を燃焼した場合における当該MOX燃料及びウラン燃料に係る燃焼前後の核分裂性プルトニウムの組成及びアクチノイド系物質(原子番号八十九から百三までの元素)の量は、別表第二及び別表第三のとおりであるとのことである。
 お尋ねのアクチノイド系物質からの放射線量については、MOX燃料及びウラン燃料から放出される放射線量からアクチノイド系物質に係る放射線量を分離して特定することが困難であることから、お答えすることができない。
 また、「低濃縮ウランの場合と比較すると、それぞれ何倍になるか」とのお尋ねについては、一般に、実用発電用原子炉で認められる最高燃焼度は、MOX燃料を使用した場合とウラン燃料を使用した場合で異なっており、お尋ねのアクチノイド系物質の量についても、MOX燃料に係るものとウラン燃料に係るものとでは、異なる燃焼度を前提として算定していることから、両者を単純に比較することは適切ではないと考える。

四の1について

 原子炉等規制法第二十三条第一項の規定に基づく原子炉の設置許可及び原子炉等規制法第二十六条第一項の規定に基づく原子炉の設置変更許可に係る安全審査を行うに当たっては、原子炉冷却材喪失等の事象(以下「評価対象事象」という。)について、重大事故(「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(昭和三十九年五月二十七日原子力委員会決定)における原子炉立地審査指針一・二aに規定する重大事故をいう。以下同じ。)及び仮想事故(同指針一・二bに規定する仮想事故をいう。以下同じ。)を想定し、ガンマ線及びベータ線を放出する希ガス等(以下「評価対象放射性物質」という。)について、環境中への放出量に関する評価を行っているところであるが、現在までにMOX燃料の使用が可能である旨の許可を行っているMOX燃料の炉心装荷率が三分の一以下の実用発電用原子炉については、MOX燃料を装荷した炉心に係る重大事故及び仮想事故発生時の放射性物質の放出量について、ウラン燃料を装荷した炉心に係る場合と違いがないものとして安全性の評価を行っているところである。柏崎刈羽三号炉における重大事故を想定した場合及び仮想事故を想定した場合の評価対象事象に係る評価対象放射性物質の放出量についても、ウラン燃料を装荷した場合とMOX燃料を装荷した場合とで違いがないものとして安全性の評価を行ったところであり、当該放出量は、別表第四及び別表第五のとおりである。
 また、お尋ねの「過酷事故」については、工学的には想定されないほど発生の可能性が低いことから、安全審査に当たってそのような事故を前提とした評価を行っておらず、また、アルファ線及び中性子線を放出する放射性物質の環境中への放出についても、重大事故及び仮想事故の発生時にかかる放射性物質が環境中に放出される可能性が極めて低いことから評価を行っておらず、これらの点に係るお尋ねの事項については、お答えすることが困難である。

四の2について

 「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」(平成七年六月十九日原子力安全委員会了承)において、最高燃焼度が燃料物質一トン当たり四万五千メガワット日以下であるとの前提の下、MOX燃料の炉心装荷率が三分の一程度までであれば、MOX燃料を装荷した炉心とウラン燃料を装荷した炉心との核分裂生成物の蓄積量の差異は、「現行の安全評価手法の有する保守性の範囲内であることを確認した」とされているため、四の1についてで述べたとおり、MOX燃料の炉心装荷率が三分の一以下の実用発電用原子炉については、MOX燃料を装荷した炉心に係る重大事故及び仮想事故発生時の放射性物質の放出量について、ウラン燃料を装荷した炉心に係る場合と違いがないものとして安全性の評価を行っている。
 また、MOX燃料の炉心装荷率が三分の一を超える場合については、「改良型沸騰水型原子炉における混合酸化物燃料の全炉心装荷について」(平成十一年六月二十八日原子力安全委員会了承)において、核分裂生成物の炉心内蓄積量の計算に用いる核分裂収率(放射性物質が特定の核種の核分裂生成物を生じるような核分裂の数の全核分裂数に対する割合)に関し、「評価対象となる各事象(事故、重大事故、仮想事故、平常時運転時)及び核種(希ガス、よう素)毎に、ウラン二三五の核分裂収率を用いる場合とプルトニウム二三九の核分裂収率を用いる場合とを比較して、判断基準に対してより保守的な結果を与える方の核分裂収率をそれぞれ選択して評価すること」とされており、ウラン燃料を用いる場合と比較して、より保守的に放射性物質の放出量の評価を行うこととしている。

四の3について

 お尋ねの「米核管理研究所」の報告は、MOX燃料を装荷した炉心に係る事故の影響について、原子炉施設の閉じ込め機能が喪失し、プルトニウムが環境中に放出されるなど、極端な前提をおいて評価を行ったものであると承知しており、かかる事故の影響を評価するに際して、必ずしも参考とすべきものとは考えていない。

五について

 政府としては、いわゆるバックエンド事業は、原子炉の運転によって生じる使用済核燃料の再処理等に係る事業であることから、原子力発電の受益者がこれを支えていくことが基本であると考えているが、具体的に、どのような費用について、どのような主体が、どのような形で負担すべきかなどについては、本年六月十八日に総合資源エネルギー調査会電気事業分科会制度・措置検討小委員会から総合資源エネルギー調査会電気事業分科会(以下「分科会」という。)へ報告された「制度・措置検討小委員会における考え方について」(以下「小委員会報告」という。)を踏まえて、現在、分科会において審議が進められているところであり、お尋ねの「国民に負担を求める額とその根拠」並びに「単位発電量当たり」及び「一世帯当たり」の「政府が考えている原発の後処理コスト」及びその「計算根拠」について、現時点においてお答えすることは困難である。
 なお、小委員会報告においては、今後、バックエンド事業に要することとなる費用等について、次のような考えが示されているところである。
 電気事業者から示された約十八兆八千億円のバックエンド費用については、その内訳について費目ごとに検討すれば、現行の使用済核燃料再処理引当金及び特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)第十一条の規定に基づく拠出金(以下「現行の引当金等」という。)の対象となっている費目に係る費用が約十兆千億円、現行の引当金等の対象とはなっていないが、今後、引当金の対象とすべき費目に係る費用が約五兆千億円、費用が発生した年度の当期費用として経理すべき費目に係る費用が約三兆七千億円と整理することができる。
 これらの費用のうち、費用が発生した年度の当期費用として経理すべき費目に係る費用を除いた約十五兆千億円の引当て及び拠出が料金原価に与える影響については、二パーセントの割引率を用いて仮に試算すれば、一キロワット時当たり三十六銭程度と見積もることができるが、この見積額については、今後、様々な要因により変動する可能性がある点について留意する必要がある。

六及び七の1について

 御指摘の「MIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学の研究報告」においては、一定の前提の下に、使用済核燃料を直接処分した場合に要する費用(以下「直接処分費用」という。)と再処理した場合に要する費用(以下「再処理費用」という。)を比較し、直接処分費用の方が相当程度少なくなるものとされているが、他方、平成六年に発表された経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の報告書「核燃料サイクルの経済性」(以下「OECDの報告書」という。)においては、それとは異なる前提の下で同様の比較を行った結果、直接処分費用と再処理費用との差は、「MIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学の研究報告」におけるものに比して相当程度小さいものとなっているところであると承知している。
 政府としては、現在、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下「長計」という。)の策定のための作業を進めているところであるが、核燃料サイクル政策については、本年六月に行われた第一回原子力委員会新計画策定会議において、使用済核燃料の直接処分等を含めて使用済核燃料の処分方法について比較検討を行うべきであるなどの意見があったことなどを踏まえ、今後の原子力委員会新計画策定会議において、「MIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学の研究報告」やOECDの報告書も必要に応じて参考にしつつ議論が行われることとなるものと考えている。
 また、使用済核燃料の処理については、現行の長計において、「国民の理解を得つつ、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを国の基本的考え方とする。したがって、民間事業者には今後ともこの考え方に則って活動を継続することを期待する」としているところである。

七の2について

 長計については、原子力委員会が、昭和三十一年からこれまでおおむね五年ごとに合計九回策定してきており、平成十二年十一月の現行の長計の策定から、来年十一月で五年を迎えることとなるため、原子力委員会が新たな長計の策定作業に着手したところである。ウラン試験の実施等日本原燃の六ヶ所再処理工場の稼動に向けた個別の事業の具体的な進め方については、このような状況も踏まえて、実施者である日本原燃が安全確保を前提に地元の理解を得つつ判断するものであると考える。


別表第一


別表第二


別表第三


別表第四 重大事故を想定した場合の放出量


別表第五 仮想事故を想定した場合の放出量


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