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平成十七年三月二十五日提出
質問第三七号

関西電力美浜原発三号機事故の労働災害等に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




関西電力美浜原発三号機事故の労働災害等に関する質問主意書


 原発の下請労働者の労災はこれまで隠されてきて、癌や白血病などによる死亡も、なかなか実態が明らかにされてきていない。したがって、昨年八月の関西電力(以下関電という)美浜原子力発電所三号機の二次冷却水漏洩事故の労災の全容解明に取り組むことは、これからの原発労災解明や対策につながる重要な契機になるものである。
 この関電の事故は、火力発電所のタービン建屋の事故と同じもので、原発とは結びつかない普通の事故というものではない。そのことは、関電自身が、その「定期安全レビュー」の中で、一九八六年アメリカのサリー原発における二次系冷却水配管破断事故や一九七九年のスリーマイル島原発事故で二次冷却水喪失が炉心溶融事故になったことを記述していることによっても明らかである。
 関電美浜原発三号機事故は、原発本体の事故につながりかねない重大な内容をもつ事故であった。しかも、この事故では、下請作業に入っていた木内計測の四人(後にさらに一人増えて五人)の労働者が気道の火傷によって窒息死し、他の六人がひどい大火傷を負って入院するという重大な事態を生じた。
 それだけに、被災の実態をきちんと調査する必要がある。そこで、事故発生直後の昨年八月十日に、現地において提供を受けた被災直後の写真を精査してみると、表一のリストのように、事故発生時にタービン建屋内で定期点検準備作業に従事していた企業名と、企業ごとの登録作業員数が明らかになった。
 関電の報告によると、実際に、タービン建屋内にいたのは下請会社百四人と関電社員一人の合計百五人、そのうち、事故発生時には、一階に六十人、二階に二十人、三階に二十五人がいたということである。下請仕事は企業ごとに内容が異なるから、ほぼまとまった場所で行われる。したがって、企業別に労働者が建屋内のどこでどういう仕事をしている時に、事故に遭遇したかはすべて明瞭になるはずである。
 建屋内にいたすべての労働者が、百四十度Cを超える十気圧に加圧された八百トン、学校プール三つ分の大量の高温・高圧の熱水の中に置かれ、百度Cを超える高温蒸気にさらされた事故であった。したがって、火傷や肺をはじめとする気管支に障害は出なかったかなど、全員の健康調査は当然のことである。
 この事故で、木内計測の十一人だけが死傷者となり、他の十三社の九十四人は、同じ条件の中にいて何の被害も受けなかったというのは、普通では考えられない事態である。
 よって、次のとおり質問する。

(一) 関電は、二次系冷却水の大量漏洩については、「定期安全レビュー」の中で、一九八六年アメリカのサリー原発でも同様の二次系冷却水配管の減肉による破断事故で死傷者が出たこと、また、一九七九年同じくスリーマイル島原発では二次冷却水喪失が原子炉本体に影響を及ぼして炉心溶融の大事故になったことを示していた。
 政府は、昨年八月の関電美浜三号機事故が、原発本体の事故につながりかねない重大な内容をもつ事故であったと考えているか。それとも、原発事故につながる心配は全くない普通の事故と考えているのか。
(二) この「定期安全レビュー報告書」で、関電は「一九七五年から計画的に肉圧測定を行っており、検査したが問題になる減肉はなかった」としていた。この時、国は、何ヶ所か抜き打ち的に測定して、減肉の状況をチェックして、関電の報告書に間違いがないかどうか独自の検査を行ったのか。
 さらに、この「定期安全レビュー報告書」で、関電が「サリー原発のような事故は起こらない」としたことに対して、通産省(現・経済産業省)が、「確率論的安全評価」などを行って「妥当なもの」としてきたことを、政府は今でも正しい評価であったと考えているのか。
(三) 表一に掲げた企業ごとに、その社員がそれぞれ何人で、どこで事故に遭遇し、健康調査の結果どんな被害を受けていたのか、明らかにされたい。
(四) さる二月二十八日の予算委員会第五分科会において、尾辻厚生労働大臣から、「(事故)当日に現地の福井労働局に重大災害対策本部を設置して、福井労働局及び所轄の敦賀労働基準監督署により災害調査を詳細に実施した結果」「(下請ごとの)リーダーへの聞き取りをして確認したと。」「本災害において十一名以外の者については被災者がいなかった」「こういうふうにさっき報告をしております」と答弁があった。
 関西電力の事故の「最終報告書」においても、死傷した木内計測の十一人の労働者の中で、タービン建屋一階で発見された人は五人、二階で発見された人は六人とされて、それぞれ場所も示されている。
 関電の発表による一階の六十人の中で木内計測の五人が死傷し、二階で働いていた二十人の中で木内計測の六人が死傷したことになる。一階でも二階でも、木内計測の社員だけが全員死傷し、他の下請企業の社員は全く被害を受けなかったというのは、あまりにも不自然なことである。
 現地の労働基準監督署が、事故当日に「調査を詳細に実施した」のであれば、前記質問(一)の内容については、百五人の労働者一人一人について、事故発生時にどこで作業をしていたか、建屋外へ逃げ出すまでに何分の時間を要したか、さらに体の火傷の状態はどうだったか、百度Cを超える高温蒸気を吸い込んだのか、肺をはじめとする気管支に障害は出なかったのか、気管支の火傷の度合いはどうであったかについては、医療機関の全員検診の結果も含めて掌握しているものと考えられる。
 そこで、労働基準監督署が「詳細に実施した」としている調査内容と結果を具体的に明らかにされたい。
(五) 五人の犠牲者は気道の火傷による窒息死であっただけに、建屋内にいた全労働者の気管支をはじめ検診を行うことは労働災害に取り組む立場から当然のことである。
 この点で、タービン建屋三階にいた関電社員一人についても、また、関電消防隊など、事故直後に救援に入った関係者についても検診は行ったのか、厚生労働省の取組みを報告されたい。
(六) 労働災害を防ぐための、労働安全衛生に責任を負う管理者は現場にいなかったのか。
 関電職員は、事故発生当時、タービン建屋周辺に何人いたのか。タービン建屋内にいた関電社員は、三階の一人を除いて、他にいなかったのか。
 三月十二日に、原子力安全・保安院は、関電美浜原発三号機の配管の肉圧測定や管理業務を関電は下請の「日本アーム」という企業に丸投げしていたことを明らかにした。
 通常、関電が定期点検や定期点検準備作業を行う時、作業の全体を指揮監督する管理者や労働安全管理者を置かないことになっているのか。点検業務の丸投げで元請けとなった日本アームの社員は、事前準備作業を指揮監督する管理者や労働安全管理者を置かなくてもよいことになっているのか。
 以上のことについて、厚生労働省は、特に行政指導を行わず、監督上の行政責任は負わないことになっているのか。

 右質問する。


表1


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