衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十年三月十七日提出
質問第一九〇号

医療供給体制に関する再質問主意書

提出者  山井和則




医療供給体制に関する再質問主意書


 平成二十年二月四日付で「医療供給体制に関する質問主意書」を提出し、同年二月十二日、政府答弁書(以下、「前回答弁書」という。)を受領した。前回答弁書には、平成十六年度からの医師臨床研修の必修化(以下、「新医師研修制度」という。)によって医師削減効果がもたらされたとは考えていないとの趣旨の答弁があった。この点を中心に、以下再質問する。

一 新医師研修制度導入にともない、医師法第十六条の二に、「診療に従事しようとする医師は、二年以上、…臨床研修を受けなければならない。」との規定が設けられ、医師が診療に従事する前に臨床研修を受ける義務が定められた。この規定からすれば、臨床研修未終了の医師は、「診療に従事する前」の段階にあるため、診療には従事していないと理解できるが、政府の見解はいかがか。
二 医師不足について考える場合には、医師免許保有者数ではなく、診療に従事する医師数を基準として考えるべきであると思うが、政府の見解はいかがか。
三 平成十八年の医師・歯科医師・薬剤師調査(以下、「三師調査」という。)によれば、医師の総数は二十七万七千九百二十七人であり、そのうち平成十七年と十八年に医籍登録され、医籍登録後二年が経過しておらず、臨床研修未終了が確実な医師は一万四千四百五十二人、医師総数の約五・二%である。医師総数の約五・二%にあたる医師が、医師免許は保有するものの、診療に従事していないのであれば、新医師研修制度導入によって、平成十年五月十五日付の「医師の需給に関する検討会」報告書がいうように、「臨床研修の充実によって研修に相当する期間だけ新規参入が遅れ、就業期間が短くなることから、将来的には実質上総医師数に対しておよそ五%の削減効果がある」と理解するのが、妥当であると思われる。しかし、前回答弁書によれば、政府は、この「およそ五%の削減効果」がもたらされたと考えていないのであるから、当該検討会が間違った報告を行ったと考えていることとなる。妥当と思われる当該検討会報告書の一体どこに間違いがあるのか、根拠を示して、政府の見解を明確に説明していただきたい。
四 医師不足とは、病院の医師不足である。三師調査を見ると、診療に従事していない研修未終了の医師を除いた、病院で診療に従事する医師数は、平成十四年の約十五万九千人から平成十八年の約十五万四千人に減少していた。新医師研修制度の影響によって、病院で診療に従事する医師の絶対数は減少していると考えられるが、政府の見解はいかがか。
五 医師不足は、救急・産科・小児科などの、二十四時間対応が重要な領域で、特に問題となっている。一般に、二十四時間対応が重要な領域では、中高年の医師より、若手の医師が中心となって、診療体制が維持されていることが多い。三師調査を見ると、診療に従事していない研修未終了の医師を除いた、病院で診療に従事する三十九歳以下の若手医師は、平成十四年の約八万三千人から平成十八年の約六万九千人に減少しており、減少率は約十七%にも及んでいた。新医師研修制度の影響によって、病院で診療に従事する若手医師の絶対数が著しく減少していると考えられるが、政府の見解はいかがか。
六 医師不足の背景には、出産、育児等による女性医師の離職をはじめとした複合的な要因が存在しているとの前回答弁書の指摘は妥当であると考えるが、これらの要因を解決することは容易ではない。また、平成二十年度から医学部入学定員を百六十八人増加させたが、この増員分が診療に従事するのは、八年後となる。また、この定員増加を継続しても、診療に従事する医師は、平成三十八年度においても、定員増がない場合と比較して、千六百八十人増加するのみである。これらのことを見れば、政府の医師不足対策は、不十分であると考えるが、政府の見解はいかがか。
七 新医師研修制度は、「我が国の医療供給体制は量的な面では総体として充足されてきている」との基本認識の下に導入された。また導入にあたって、「国民から医療に向けられる意識やニーズの変容に的確に応えられる医師が求められている」などと、医師の資質の向上が強調されている。しかし、現時点では、医師不足、すなわち医師の量的な不足が極めて深刻である。このため、現在の状況下では、質の向上よりも、量的な不足の解消が、むしろ優先されるべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。
八 新医師研修制度は、平成二十一年度に見直しが行われることとなっている。この見直しに際して、医師不足対策として、研修期間を一年間に短縮すると、平成二十二年度には、診療に従事する医師が、現行制度のまま推移した場合よりも、おおむね七千二百人増加する。この対策は、医師不足対策として、容易に実行可能であり、かつ短期間で大きな効果が得られるものであると考えるが、政府の見解はいかがか。
九 平成二十年度の診療報酬改定では、精神科外来における精神療法に関わる時間の目安が導入され、一定の時間をかけた診療を行うことが診療報酬支払いの条件となった。また、外来管理加算についても、五分の目安が導入され、丁寧な診療が報酬支払いの条件となった。確かに、丁寧な診療を行わない場合には、報酬を引き下げるこれらの制度の導入は、個々の事例における質的な側面を見ると、適切な診療に結びつく可能性があり、前回答弁書の「厚生労働省としては、当該改定により患者の状態に応じた適切な診療が行われることとなると考える。」との理解も可能である。しかし、これらの制度は、社会全体における量的な観点から見ると、医療供給不足をもたらす危険がある。例えば、数多くの外来患者を少数の医師で診療している地方の中小自治体病院においては、経営を持続可能なものとするために、現在の収入を今後も維持しようとすれば、外来診療時間の長時間化を行うしか方法がない。その結果、待ち時間の延長・救急や病棟診療に従事する時間の不足・医師の過重労働の深刻化による退職増加などが生じ、最終的には、救急患者受入困難をはじめとする医療供給不足の深刻化につながるのではないかと思われるが、政府の見解はいかがか。
十 医療供給不足が深刻な現在の状況下では、診療報酬改定によって、事態が悪化する可能性が否定できない場合には、特に慎重な対応が必要であり、診療報酬改定によって地域の医療供給に混乱が生じていないか、現場の声に真摯に耳を傾けることが、不可欠であると考えるが、政府の見解はいかがか。
十一 前回答弁書の「一の@、二及び三について」で、政府は「医師数は総数としても充足している状況にはないものと認識している」と答えている。
 改めて政府の見解を問う。医師数は不足しているのか否か。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.