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平成二十三年十二月七日提出
質問第一二〇号

情報収集衛星の予算組換えに関する質問主意書

提出者  吉井英勝




情報収集衛星の予算組換えに関する質問主意書


 アメリカ航空宇宙局(NASA)は、海面観測衛星「ジェイソン1」を使って、東日本大震災で発生した津波の複数の波頭が太平洋上で重なり合ってより大きな津波になる観測結果を発表した。
 本年六月三十日に提出した質問主意書の中で、「津波襲来時に情報収集衛星が被災地上空に周回していたか否か」、「情報収集衛星の画像の使用により、巨大津波の移動状況や、到達時刻等を判読可能ではないか」と質した。これに対する答弁書(内閣衆質一七七第二八六号)は、「津波の移動、到達時刻の判読等については、これを行うためには、情報収集衛星が津波の発生時点において津波を撮像できる態勢にあることが必要であるが、一般に、情報収集衛星等の地球上を周回する衛星では、特定の地点にとどまって撮像することが困難であるため、これを行うことは困難」「情報収集衛星は、外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集を主な目的とするものであり、その具体的な運用状況を明らかにすると、今後の安全保障上の情報収集活動に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。」というものであった。
 よって、次のとおり質問する。

(一) 二〇〇五年二月二十五日の衆議院予算委員会第四分科会での「スマトラ沖地震・津波などで、情報収集衛星は、災害の前であれ、実際に発災した後であれ、地殻のひずみであるとか津波の移動の様子とか、災害現場などについて観測をしていると思うんですが、その観測で、それはどのように活用されたのか」という私の質問に対し、上原美都男・内閣情報調査室内閣衛星情報センター次長は「情報収集衛星ですが、外交、防衛等の安全保障及び大規模災害の危機管理のために必要な情報収集を目的としているわけでございまして、政府といたしましては、当然のことながら、このような目的を果たすべく、情報収集衛星の有効活用に努めてきているところでございます。」と明確に答弁している。
 この答弁のとおり、津波が何時何分頃、どの箇所に到達するかを明らかにして緊急避難等に活用することは、情報収集衛星の重要な任務の一つではないのか。
(二) 「大規模災害への対応」を目的に掲げながら、同時に「安全保障」も目的となっているので、衛星画像は「衛星秘密」(機密・極秘・秘)に分類されているのか。
(三) 「大規模災害への対応」のため撮影した衛星画像が機密扱いにされているので、必要な時に迅速に衛星画像を持ち出せず使用できなかったので、今回の巨大地震や津波、原発事故へ迅速に対応できなかったのではないのか。
(四) 情報収集衛星の画像等の取扱いについて内閣衛星情報センターが定めている「衛星秘密の保全に関する規程」の内容を明らかにされたい。
(五) 政府は本年十一月二十八日、「「日本再生重点化措置」に係る優先・重点事業選定の基本方針」を発表した。「日本再生重点化措置」とは、「我が国経済社会の再生に向けてより効果の高い施策に予算を重点配分する一方、それ以外の施策への予算配分は厳しく抑制することで、大胆な予算の組換えを行い、野田政権らしい平成24年度予算を実現するため設けられたもの」といい、「明日へ希望をつなぐ、活きた予算」にするため、各府省庁から出された要望事業から、優先・重点事業の選定案を作成するという。
 各府省庁から出された要望事業の一つに、内閣官房が出した「情報収集衛星の研究・開発」がある。内容は「情報収集衛星の大型光学センサの地上実証に係る経費」、「情報収集衛星レーダ5号機、レーダ6号機の開発に係る経費」で、目的と効果は「国家安全保障の基礎となる情報収集を確実に行い、安全・安心社会の実現に貢献」、「解像度を更に向上することで、大規模災害発生時の個別具体的な被害状況等、より詳細な状況の把握が可能」となっている。野田政権は、「情報収集衛星の研究・開発」が「日本再生」に資するものと考えているのか。資するものとすれば、どの部分が該当すると考えているのか。その理由とあわせて明らかにされたい。
(六) 優先・重点事業の選定案作成に当たり、「明日へ希望をつなぐ、活きた予算」にするため、「国民に広く裨益する事業か」という視点を掲げている。導入以来、今年度まで八千二百億円以上の巨額の予算を投じながら、大規模災害への対応を目的に掲げた情報収集衛星の画像が、今回の東日本大震災を含めて一切公開されないどころか、災害対応の府省庁や機関への提供も行われていない実情のもとで、「情報収集衛星の研究・開発」が「国民に広く裨益する事業」と該当すると考えているのか。該当するとすれば、どの部分が該当すると考えているのか。その理由とともに明らかにされたい。
(七) 「情報収集衛星の大型光学センサの地上実証に係る経費」、「情報収集衛星レーダ5号機の開発に係る経費」、「レーダ6号機の開発に係る経費」は、それぞれ総額でいくらと見込んでいるのか。
(八) 「大型光学センサの地上実証」で光学衛星の解像度を上げようとしているが、その内容と必要性を抽象的でなく具体的に明らかにされたい。また、政府は「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星については、自衛隊による利用が認められると考える」という解釈をし、情報収集衛星の導入の際にも適用したが、「大型光学センサ」で商用衛星を凌駕するような分解能を持った光学衛星を開発し運用することになれば、それは軍事衛星の開発と運用になるのではないか。あわせて、商用衛星の分解能のレベルは現状で何pか明らかにされたい。
(九) 解像度を向上させることで、「大規模災害発生時の個別具体的な被害状況等、より詳細な状況の把握が可能」とあるが、「大規模災害への対応」といいながら、情報収集衛星の画像の公開をしないために、同衛星が得た情報は、縮尺五万分の一の個別具体的な被害状況も詳細な状況も分からない「被災状況推定地図」が作られている程度である。また、公開されている福島第一原発の事故状況の衛星画像は、クイックバード等のアメリカの商用衛星を約三千六百万円で購入したものであり、その理由について質した本年七月十一日提出の質問主意書に対し、「情報収集衛星等に関する秘密について保全措置を講じている者以外の者には非公開としており、(中略)当該保全措置を講じている者以外の者に対して衛星の画像を提供する必要があったことから、内閣衛星情報センターが、商用衛星の画像を購入したものである。」(内閣衆質一七七第三一五号)と、公開するために、わざわざアメリカの商用衛星を購入していることが分かっている。今後の予算編成に際し、国民に公開できない情報収集衛星に関する予算はすべて削除し、その分を被災地の復興や原発事故に伴う被害者への賠償等に充てる予算の組換えを行うべきではないのか。

 右質問する。



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