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平成二十四年三月二十三日提出
質問第一四五号

八ッ場ダムの地すべり対策及び代替地安全対策に関する質問主意書

提出者  斎藤やすのり




八ッ場ダムの地すべり対策及び代替地安全対策に関する質問主意書


 八ッ場ダム予定地は地質が良好ではないため、貯水池周辺で地すべりが惹起されることが心配されている。また、地元住民が移転しつつある代替地は民間の宅地造成では例を見ない超高盛り土の造成が行われ、その安全性にも不安の声が寄せられている。今回の八ッ場ダム建設事業の検証においてこれらのことについて点検が行われ、地すべり対策を追加するとともに代替地安全対策を新たに実施することになった。しかし、この検証で示された対策の内容には不明なところがあり、また、それらの対策だけで地すべり等の災害の発生を防止できるのか、定かではなく、いくつか疑問点がある。これらの疑問点について質問するので、真摯に答えられたい。

一 ダム検証前の地すべり対策について
 1 ダム検証前の地すべり対策箇所
  八ッ場ダム貯水域の地すべり問題に関して、八ッ場ダム工事事務所のホームページを見ると、具体的な地すべり対策が示されているのは横壁地区小倉、川原畑地区二社平、林地区勝沼の三地区である。このことについて相違はないか。また、この他に具体化していた地すべり対策箇所があれば、その場所を明らかにされたい。
 2 ダム検証前の地すべり対策の費用
  関東地方整備局が二〇〇三年に関係六都県に説明した時の資料には二社平地区、勝沼地区、実施済みの横壁小倉地区の地すべり対策費用はそれぞれ〇・八七億円、一億円、三・九五億円と記されているが、この対策費用で相違はないか。また、この他に具体化していた地すべり対策箇所があれば、その対策費用を明らかにされたい。
二 地すべり対策の追加について
 1 八ッ場ダム検証の地すべり対策
  「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(平成二十三年十一月)」には、地すべり対策等の対策工として地すべり対策を五地区、未固結堆積物の斜面変動対策を五地区で実施するとし、その費用を一〇九・七億円を見込んでいるが、このことについて相違はないか。
 2 地すべり対策が追加された経緯と理由
  一で述べたとおり、ダム検証前は新規の地すべり対策は二地区で一・八七億円であったと推測されるが、八ッ場ダムの検証後は新規の地すべり対策が一〇地区に拡大され、費用も約一一〇億円に増額されることになった。このように、地すべり対策が大幅に増強されることになった経緯と理由を具体的に説明されたい。
 3 地すべり対策の検討期間
  八ッ場ダム建設事業の検証作業が開始されたのは平成二十二年十月からであるが、上記一〇地区の地すべり対策は平成二十三年八月二十九日の「検討の場」第八回幹事会で報告されており、地すべり対策を検討してまとめるには期間が短すぎるように思われる。また、「貯水池周辺の地すべり調査と対策に関する技術指針(案)・同解説」(国土交通省河川局治水課)が平成二十一年七月に策定されているが、この後、今回の地すべり対策を検討してまとめたとしても、二年程度の期間しかない。今回の地すべり対策の検討をいつから始めたのかを明らかにされたい。
 4 地すべり問題への取り組み状況を公開しなかったことについて
  八ッ場ダム工事事務所のホームページでは一で述べたとおり、具体的な地すべり対策はわずか三地区のみで、しかも合わせて約五・七億円程度の対策にとどまっている。この程度の対策では八ッ場ダム貯水域の地すべりをとても防ぐことができないという危険性を指摘する意見が専門家から出され、地元住民からも心配の声が上がっていた。これに対し、国土交通省はホームページで、「ダム貯水池の湛水にあたっては、見落としのない様に、事前に貯水池全域を対象に再検討を行い、委員会の意見を伺いながら、必要な箇所での動態観測等を実施する予定である。」といった先送りの姿勢を示すだけで、危険性を指摘する意見を無視し続けてきた。ところが、実際には上述のとおり、国土交通省は表向きの姿勢とは別に地すべり対策の検討を続けてきたと推察される。国土交通省がなぜ地すべり問題への取り組み状況を公開して地元住民に伝えようとしなかったのか、まことに不可解である。このことについて政府の見解を示されたい。
 5 八ッ場ダム工事事務所ホームページの地すべり対策の記述
  上述のとおり、八ッ場ダムの検証で地すべり対策の内容が大きく変わったにもかかわらず、八ッ場ダム工事事務所ホームページの地すべり対策の記述は従前のままである。このホームページの記述を未だに更新しない理由を明らかにされたい。また、その更新の予定時期を示されたい。
三 地震と地すべり対策
 1 地震の影響も考慮した地すべり対策について
  八ッ場ダムの検証により、地すべり対策を実施する地区の数が大幅に増加したが、そこで示された対策で、地すべりの発生を抑止できるかどうか、多くの疑問がある。まず地震の影響が心配される。八ッ場ダム検証の地すべり対策の検討は地震の影響も考慮して行われたのかどうかを明らかにされたい。もし行われていないならば、その理由を明らかにされたい。
 2 「貯水池周辺の地すべり調査と対策に関する技術指針(案)」と地震について
  「貯水池周辺の地すべり調査と対策に関する技術指針(案)」の地すべり対策において地震の影響が検討の対象になっているかどうかを明らかにされたい。もしなっていないならば、その理由を明らかにされたい。
 3 代替地安全対策との関係について
  代替地の安全対策では、地震の影響を考慮した検討がされており、代替地と同じくダム湖に面する地すべり地形について地震の影響を考慮した検討が行われていないとすれば、まことに不可解である。もしそうであるならば、代替地の安全対策では地震を考慮し、地すべり地形の検討では地震を考慮しない理由を説明されたい。
 4 地震の影響を考慮した地すべり対策の再検討について
  東北地方太平洋沖地震によって福島県・藤沼貯水池のアースダムの堰堤が決壊し、多大な被害をもたらした。この決壊事故を踏まえれば、今後の貯水池周辺の地すべり対策は地震の影響、それも東北地方太平洋沖地震規模の地震動が襲った場合の影響を考慮したものでなければならない。八ッ場ダムについても東日本大震災を踏まえて貯水域の地すべり対策を再検討する必要があると考えるが、このことについて政府の見解を示されたい。
四 地すべり対策の対象外地区の安全性について
 1 対策を実施しない理由
  八ッ場ダムの検証における地すべり対策の検討では、湛水の影響がある地すべり地形として、一八地区三七箇所が選定されたが、結局、対策を実施するのは五地区五箇所に絞り込まれている。検証報告書を見ると、精査を実施する三地区五箇所と、必要に応じて精査を実施する四地区一二箇所から、対策実施の五地区五箇所が選定されているが、残りの地区・箇所はなぜ対策を実施しなくてよいと判断したのか、不明である。残りの地区・箇所それぞれについて対策を実施しない理由を明らかにされたい。また、これらの地区・箇所について今後対策を再検討することがあるかどうか、あるとすれば、どのような場合であるかを明らかにされたい。
 2 原則として精査を実施しない地区・箇所の崩壊危険度
  湛水の影響がある地すべり地形のうち、原則として精査を実施しないとした一一地区二〇箇所について検証報告書では崩壊危険度については何も触れないまま、対策を実施しないとしている。原則として精査を実施しない一一地区二〇箇所について国土交通省が対策を実施しないとした理由および、それらの崩落危険度をどの程度のものと判断したのかを明らかにされたい。また、これらの地区・箇所について今後対策を再検討することがあるかどうか、あるとすれば、どのような場合であるかを明らかにされたい。
五 地すべり対策を実施する地区・箇所の安全性について
 1 土質定数の信頼性
  対策を実施する地すべり地形の地区・箇所は安定解析の結果から、押さえ盛土工法等の対策と規模が決められているが、問題はこの安定解析の計算に使われた土質定数にどの程度の信頼性があるかである。計算に用いた土質定数はどの程度の地質調査データの蓄積に基づいて求めたものなのか、土質定数の信頼性について政府の見解を明らかにされたい。また、今後、地質調査データが蓄積されてくれば、今回の計算に使用した土質定数を見直すことがあるかどうかを明らかにされたい。
 2 応桑岩屑堆積物の不均質性
  八ッ場ダムの検証では、応桑岩屑堆積物や崖錐堆積物の未固結堆積物からなる斜面も地すべり対策の検討対象としている。未固結堆積物斜面六地区一九箇所について安定解析を行い、その結果により、五地区五箇所についてのみ押さえ盛土工を実施するとしているが、応桑岩屑堆積物や崖錐堆積物は極めて不均質な堆積物であって、参考とする試験値数が非常に少ないため、応桑岩屑堆積物等の物性評価は信頼性が低いとされている。不確かな物性値で安定解析を行っても安全を保障するものとはならない。応桑岩屑堆積物等のこの問題をどのように考えているのか、応桑岩屑堆積物や崖錐堆積物の物性の調査を改めて行う考えはないのか、これらのことについて政府の見解を示されたい。
 3 押さえ盛土工法以外の対策工法の費用
  地すべり地形及び未固結堆積物斜面の対策工としては、ほとんど押さえ盛土工法が採用されているが、押さえ盛土工法は貯水後の変状もあるから、効果が不安定な面がある。効果が確実なアンカー工などの他の工法を採用すると、地すべり対策の費用が一〇九・七億円からどの程度増加するのかを明らかにされたい。
 4 押さえ盛土工の土量
  今回の検証で地すべり地形及び未固結堆積物斜面の対策工として採用された押さえ盛土工法の土量の合計は何百万m3になるのかを明らかにされたい。その分だけ、ダム貯水容量が減ることになるが、そのことについてどのような対策をとるのかも明らかにされたい。
 5 大滝ダムにおける地すべり対策費用
  国土交通省が建設した大滝ダム(奈良県)では二〇〇二年度のダム堤体完成後の試験湛水によって深刻な地すべりが発生し、その後、地すべり対策が延々と実施されてきている。大滝ダムにおいてダム堤体完成後に実施してきた地すべり対策の対象地区と計画工事費を明らかにされたい。今回の検証で示された八ッ場ダムの地すべり対策の工事費、一〇地区合わせて一〇九・七億円は大滝ダムと比較して、はるかに少ないという指摘があるが、このことについて政府の見解を示されたい。
六 代替地の安全対策について
 1 代替地安全対策の点検の経緯と理由
  八ッ場ダムの検証では代替地の九地区について安全性の点検が行われ、その結果、合計三九・五億円の費用で五地区について鋼管杭やアンカー工等の安全対策を実施することになった。しかし、それまでは代替地の安全性について地元住民から不安の声が出されていたにもかかわらず、国土交通省から安全対策を実施するという説明は一切なされなかった。八ッ場ダムの検証で代替地安全対策の点検が行われた経緯とその理由を説明されたい。
 2 水位急低下時の大地震の可能性
  今回の検証で示された代替地の安全対策はいまだに地元住民の不安を解消するものにはなっていない。まず地震の影響が心配されている。ダムができて貯水した場合に代替地斜面の地すべりが最も起きやすいのは、貯水池の水を放流して水位が急に低下した場合である。今回の検証では、この水位急低下時には同時に大きな地震が起きる確率が小さいと考え、満水時には設計水平震度として〇・二五を見ているが、水位急低下時は設計水平震度をその半分の〇・一二五として、安全対策を検討している。したがって、水位急低下時に大きな地震が起きた場合は検討の想定外となっており、今回の検証の対策では崩壊の危険性が生じることになる。このことについて政府の見解を示されたい。
 3 水位急低下時の残留地下水
  さらに、代替地の安定計算では、水位急低下時に代替地の地層中の残留間隙水圧を五〇%としている。すなわち、満水時にあった地層中の地下水が水位急低下時には半分は抜けているという仮定がおかれている。水位急低下時に地層中に沢山の地下水が残っているほど、地すべりを起こしやすいから、この仮定では不安がある。この仮定で安全性を保障できる根拠を明らかにされたい。
 4 最悪の場合を想定した安定計算の必要性
  代替地に移転した住民の安全を保障するためには、代替地は最悪の場合を想定して、安定計算を行わなければならないと考える。すなわち、水位急低下時も大きな地震が起こりうること、さらに、水位急低下時も代替地の地層中に満水時の地下水がそのまま残っていることを想定して安定計算を行うべきである。そうすれば、代替地の安全対策を実施すべき対象が五地区よりも増え、対策費用も三九・五億円よりはるかに増加すると考える。この二つの条件で代替地の安定計算をやり直す考えはないか、このことについて政府の見解を明らかにされたい。
 5 東北地方太平洋沖地震を踏まえた安定計算
  今回の代替地安全対策の安定計算で使われた「宅地防災マニュアル」(国土交通省)の水平震度〇・二五は兵庫県南部地震の調査結果に基づいて設定されたものであり、東北地方太平洋沖地震を踏まえたものではない。東北地方太平洋沖地震を踏まえた水平震度を設定して代替地の安定計算を再度行う考えはないのか、このことについて政府の見解を明らかにされたい。
 6 応桑岩屑堆積物および崖錐堆積物の不均質性
  対策を実施する代替地のうち、川原湯地区C(上湯原代替地)は主に応桑岩屑堆積物、崖錐堆積物といった未固結堆積物からなる斜面である。これらの未固結堆積物は極めて不均質な堆積物であって、試験値数が非常に少ないため、その物性評価は信頼性が低いとされている。不確かな物性値で安定計算を行っても安全を保障するものとならない。川原湯地区C等の応桑岩屑堆積物および崖錐堆積物の物性の調査を改めて行って、その結果に基づいて安定計算を再度行う考えはないのか、政府の見解を明らかにされたい。
七 地すべり対策及び代替地安全対策の詳細設計と実施時期、地元説明について
 1 詳細設計のための調査の時期
  今回の検証で示された地すべり対策及び代替地安全対策の詳細設計のための調査をおよそいつ頃に行う予定であるのかを明らかにされたい。
 2 詳細設計の時期
  上記の地すべり対策及び代替地安全対策の詳細設計をおよそいつ頃に行う予定であるのかを明らかにされたい。
 3 対策工事の実施時期
  上記の地すべり対策及び代替地安全対策の工事をおよそいつ頃に行う予定であるのかを明らかにされたい。
 4 地元への説明
  上記の地すべり対策及び代替地安全対策の内容は地元住民、長野原町及び町議会に対していまだに一切説明されていないと聞く。国土交通省は地元住民、長野原町及び町議会への説明を行う考えがあるのかどうか、もしあるならば、いつ頃に行う予定であるのかを明らかにされたい。

 右質問する。



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