衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十五年六月十日提出
質問第一〇〇号

一般市街化区域への生産緑地地区指定に関する質問主意書

提出者  吉川 元




一般市街化区域への生産緑地地区指定に関する質問主意書


 生産緑地地区の指定状況は、いわゆる「宅地並み課税」が行われている三大都市圏の特定市街化区域と、それ以外の一般市街化区域の間に大きな格差がある。入手できた最新データの平成二十二年で見ると、特定市街化区域農地の五十・一パーセントに対し、一般市街化区域の農地は僅か〇・一パーセントに過ぎない。生産緑地法の目的と固定資産税の実態から考えて納得しがたい格差なので、まず経過を確認する。
 生産緑地地区は、第七十二回国会で誕生した生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)で指定される。背景には、前年に特定市街化区域のA・B農地への宅地並み課税導入を可決した際、衆参両院の地方行政委員会が附帯決議で生産緑地創設の検討を求めたことがある。制定時の審議で、生産緑地は「良好な都市環境の形成をはかるための都市計画上の施策」で、宅地並み課税を救済する制度ではないので、宅地並み課税適用除外というメリットはないが、全国の市街化区域を対象に指定を進めると説明された。
 二年後の昭和五十一年に、第百八十回国会衆議院質問第三百号「市街化区域農地への「農地に準じた課税」に関する再質問主意書(以下「再質問主意書」と呼ぶ)」の答弁書が認めたように、いわゆる「農地に準じた課税」(以下「準じた課税」と呼ぶ)が誕生し、宅地並み課税の対象となっていない市街化区域農地でも増税が開始した。
 生産緑地法は、第百二十回国会で大幅に改正された(平成三年法律第三十九号)。この改正は、「大都市圏の市街化区域内農地について、宅地化するものと保全するものとの区分を都市計画上明確にする」と説明された。宅地並み課税の対象が特定市街化区域の全体に拡大され、同時に「長期営農継続農地」が廃止される結果、一般農地として固定資産税等の課税を受けて営農を継続するには、生産緑地地区の指定が必須となる。これに応じ、農地等の持つ緑地機能を積極的に評価して都市における農地等の適正な保全を図ることが、国と地方公共団体の責務として生産緑地法に明示された。
 生産緑地法改正の時点で、「準じた課税」は誕生からすでに十五年が経過し、一般市街化区域と、特定市街化区域で宅地並み課税の対象となっていない農地の税額は、一般農地の十倍前後になっていたと考えられる。しかも、宅地並み課税の最終税額は、特例が適用されている一般住宅用地と同レベルなのに対し、当時は準じた課税には特例の適用がなく、より重かった。それにもかかわらず、改正案の審議で、説明する政府も、質問する議員も、準じた課税に触れていない。
 生産緑地地区と宅地並み課税を三大都市圏の特定市以外へ拡大したいと考えているかという小川信議員の質問に、建設省建設経済局長は、「三大都市圏の特定の市街化区域内農地につきまして、税制の見直しに伴って今回の改正をお願いしているわけでございます。(中略)それ以外の地区につきまして、ただいま御指摘の問題につきましては現在考えておりません」(第百二十回国会衆議院建設委員会議録第七号十四頁)と説明した。都道府県と市町村への指導に関しても、建設省都市局長が、「生産緑地地区の指定を受けました農地とそれ以外の農地につきまして課税上の取り扱いが違ってまいりますので、そこに焦点を絞っておる(中略)具体的には三大都市圏の百九十に及びます特定市を中心に行政指導してまいりたい」(同十五頁)と答えている。いずれも、準じた課税が存在しないかのような答弁である。
 野党議員の発言にも、準じた課税を知っていると判断できるものは見出せない。とくに「三・三平方メートル当たりの評価額が三万円未満の市街化区域農地については、これは今まで農地課税であったわけでありまして」(同二十頁)と発言している堀込征雄議員は、知らないことが明確である。この原因は、準じた課税の説明を政府が避けてきた点にあると思われる。再質問主意書の答弁書は、第七十七回国会で増税を説明しなかった理由を、「附則第十八条の規定により、(中略)さらに課税の適正化を図るため検討を加え、その結果に基づき、昭和五十四年度分の固定資産税から適用されるよう必要な措置が講ぜられるべきものとされていたから」としている。この附則第十八条は、三年後の第八十七回国会で「昭和五十四年度分」が「昭和五十七年度分」に改められ、第九十六回国会の地方税法改正(昭和五十七年法律第十号)で削除された。両国会とも、準じた課税の説明はなかった。
 制度改正に伴う三大都市圏における生産緑地地区の指定作業は、宅地としての課税を避けられる経過措置の期限である平成四年末に完了した。その後の運用につき、建設省都市局長が「生産緑地法の運用について」という通達(建設省都公緑発第七号、平成五年一月二七日、以下「旧通達」と呼ぶ)を発した。今後の指定に触れているのは、「三大都市圏の特定市における平成五年以降の生産緑地地区の指定について」という項だけである。三大都市圏以外への指定については言及がなく、生産緑地地区を「特定市街化区域のための制度」と考え、準じた課税による増税を見過ごしている。
 その後の地方分権に伴って通達は廃止され、「都市計画運用指針」が作成された。生産緑地地区の指定に関する説明の表題から、「三大都市圏」という文言は削除されたが、今後の指定につき、「例えば、以下に示すように例外的に、農地所有者等の意向把握に基づく生産緑地地区の指定を今後も行うことが考えられる」と、厳しく制約している。示されたアからエの例示は、旧通達一項(2)の@からCを受け継いでおり、三大都市圏の町村が市となった場合につき、括弧内に「特定市街化区域農地等となった時に限る」と明記するなど、旧通達を踏襲している。最後の「なお、このほか、地域の実情を踏まえた都市計画決定権者の判断により生産緑地地区の指定を行うことができるものである」も旧通達一項にあり、位置が違うだけである。
 特定市街化区域と一般市街化区域の間にある生産緑地地区の指定格差には、以上のような国の指導が影響していると考えられる。市議会の質疑を調べても、一般市街化区域である福島市では、平成十五年九月十五日に、市街化区域農地に平均で調整区域農地の約三十八倍の固定資産税が課せられているので生産緑地法の適用を考えてほしいという質問に、都市政策部長が「現在の福島市においては生産緑地地区制度を導入する状況にはない」と答弁している。一方、平成十八年の合併によって特定市街化区域となった北名古屋市では、翌平成十九年十二月十三日の市議会で、建設部建設担当次長が、「市街化区域内農地は宅地化する用地と保全する用地に区分されることになります」と、生産緑地地区の指定作業にとりかかっている。
 準じた課税の最終税額は、ようやく平成十五年に、宅地並み課税と同じ一般住宅用地の水準に軽減されたが、この時も準じた課税に関する説明はなかった。その後も増税が次第に進行し、総務省の平成二十三年度固定資産概要調書によると、準じた課税対象農地の税額は、全国平均で田は一般農地の約五十倍、畑は約百倍になっており、すでに田で面積の五十二パーセント、畑でも二十五パーセントが最終税額(いわゆる「本則課税」)に達している。本則課税に達した農地に宅地並み課税を課した場合、固定資産税は増加せず、逆に「宅地並み課税開始時の経過措置」で四年間にわたって減税になる。ここに至るまで放置され続けている一般市街化区域内の農地につき、直ちに扱いを検討する必要があると考えるので、以下質問する。

一 確かに、準じた課税が誕生した当時、国土庁と建設省は増税の地方拡大に反対していた。だからといって、準じた課税を、生産緑地法改正に際して見過ごし、税額が最終額に近づいている現在もなお傍観し続けて良いことにはならない。一般市街化区域においても、宅地並みの税額を止める方法は生産緑地地区の指定しかなく、生産緑地法第二条の二が国に課した責務が果たされていない。一般市街化区域への増税開始の説明を避け、生産緑地地区の指定を抑えてきた経過を踏まえ、今後の方針を明らかにされたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.