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平成二十八年三月三十一日提出
質問第二三一号

TPP協定による原産国表示廃止の可能性に関する質問主意書

提出者  岡本充功




TPP協定による原産国表示廃止の可能性に関する質問主意書


 二〇一六年二月四日、ニュージーランドにて環太平洋パートナーシップ協定(以下、「TPP協定」という。)署名式が行われ、日本の他、アメリカ、カナダ、メキシコなどの十二カ国間で署名が行われた。今後、国会での承認手続き、並びに関連法案の整備が行われた後、協定上の条件を満たせば発効することになるものと承知している。
 TPP協定中、第八章「貿易の技術的障害」(TPP・TBT章)の第八・四条(貿易の技術的障害に関する協定の特定の規定の組込み)第一では、世界貿易機関(WTO)の貿易の技術的障害に関する協定の組込みについて、「必要な変更を加えた上で組み込まれ、この協定の一部を成す」旨が規定されている。組み込まれる規定の中には、最恵国待遇と内国民待遇義務を定める第二・一条も含まれている。
 このTPP協定に組み込まれることになる貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)第二・一条に関して、TPP協定署名国であるアメリカと、カナダ及びメキシコ間において、以下の@ないしFの通り、原産国表示制度に関する紛争があったと承知している。
 @ 二〇〇八年十二月に、カナダ及びメキシコは、アメリカの食肉(牛肉及び豚肉)に関する原産国表示制度がアメリカのWTO協定上の義務に違反するとして、WTO紛争解決手続における協議を要請した。翌二〇〇九年五月、カナダ及びメキシコは更なるアメリカとの協議を要請したが、協議により本件紛争を解決できなかったため、同年十月、両国はパネル(小委員会)の設置を要請し、同年十一月、パネルが設置された。
 A 二〇一一年十一月、パネルはアメリカの原産国表示が、TBT協定第二・一条及び第二・二条に違反することなどを認定した。
 B 二〇一二年三月、アメリカ、カナダ及びメキシコがそれぞれ上訴し、同年六月、最終審にあたる上級委員会の報告書が公開された。同報告書は、アメリカの原産国表示制度の下で畜産物の生産者・処理業者に課される記録・認証要件が処理業者に専ら国産畜産物を扱うインセンティブを与えることにより、輸入畜産物に不利益な影響を与えることを認めた上で、上記記録・認証要件は、原産国表示制度により小売段階で消費者に伝達される情報に比して不均等に大きな負担を生産者・処理業者に課しており、公平性を欠いているとしてTBT協定第二・一条に違反する旨認定した。同年七月、上級委報告書及び同報告書により修正されたパネル報告書が、WTO全加盟国から構成される紛争解決機関により採択された。
 C 二〇一三年五月、アメリカは原産国表示制度を改正した。同年八月、カナダ及びメキシコは、履行確認パネルの設置を要請し、同年九月に同パネルが設置された。二〇一四年十月、履行確認パネルの報告書が発出され、改正された原産国表示制度は、TBT協定第二・一条並びに関税及び貿易に関する一般協定(GATT)第三・四条に違反する旨が認定された。
 D 二〇一四年十一月にアメリカが上訴し、同年十二月にカナダ及びメキシコが上訴した。二〇一五年五月、履行確認手続における上級委員会の報告書が公開され、改正された原産国表示制度における記録・認証要件は畜産物の生産者・処理業者に不均衡な負担を課しており、その負担は消費者に原産国情報を提供する必要性によっては説明できないなどとして、TBT協定第二・一条及びGATT第三・四条違反を認定したパネルの結論を支持した。
 E 二〇一五年六月、カナダ及びメキシコは、WTO協定に基づき、アメリカに対する関税譲許の停止の承認を紛争解決機関に申請したが、同年六月、問題は仲裁に付された。二〇一五年十二月に出された仲裁の決定に従い、同月、カナダ及びメキシコは関税譲許の停止の承認を紛争解決機関に申請し、同申請は認められた。
 F 二〇一五年十二月、アメリカ議会において、本件で問題となった原産国表示制度に関連する国内法の条項が改正され、同制度は廃止される結果となった。
 これらを踏まえ、以下の通り質問する。

一 政府として、@ないしFの事実関係について、政府が把握、認識している事実と異なる点があるか。
二 ISD条項に基づけば、上記の法理がTPP協定の発効によって日本においても効力を持つことになるのか。
  もし、効力を持つことになる場合、日本において、牛肉や豚肉、その他の畜産物、野菜や魚、さらにはそれらの加工品について、国産及び外国産などの原産国表示をしなくてよいこととなるのではないか。

 右質問する。



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