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平成二十八年四月十二日提出
質問第二四六号

匿名ブログで明らかになった保育園への入園及び保育士確保の困難さを解消するための支援のあり方に関する質問主意書

提出者  仲里利信




匿名ブログで明らかになった保育園への入園及び保育士確保の困難さを解消するための支援のあり方に関する質問主意書


 「保育園落ちた日本死ね」との衝撃的な匿名ブログが投稿され、物議をかもしたが、安倍総理は、当初「匿名のため本当に実際起こっているかどうか確かめようがない」と答弁して事実を確認しようともしなかった。この答弁に対して、待機児童問題や子育てのあり方、保育園確保に悩む母親らが猛反発し、相次いで抗議の声を上げるとともに、国会への要請と署名簿の提出を行うなどした。また、野党も一斉に国会で取り上げて、政府の姿勢を厳しく追及した。
 このため、政府はようやく重い腰を上げて、緊急対策を打ち上げるなどして火消しに躍起となっている。
 ところで、政府が三月二十八日に打ち出した「待機児童の解消に向けた緊急対策」は、保育の受け皿拡大として「一人でも多くの子どもに入ってもらう」ために、保育士配置や保育園面積の基準が手厚い自治体に「国基準までの緩和」を要請するとともに、「保育人材を確保する」ため「短時間勤務の正社員制度を活用」することなどが主な柱となっている。
 一定の効果が期待できるとの評価も一部にあるが、単なる詰込みで「保育の質の低下」に繋がりかねない安易な対策として、不安視する声が大半となっている。また、出産と子育ての抜本的な問題解決というには余りにも程遠い提案であるとの厳しい指摘もある。そのため、母親達は、政府への批判を続けるとともに、子どもにしわ寄せがいかない抜本的な対策を求め続けている。
 これらを踏まえて以下お尋ねする。

一 今回、母親達がブログや抗議、要請等で示した内容は、極めて素朴な怒りや不満、批判であると思われるが、政府の認識はどうか。
二 本職は、母親達が一体何に対して怒りや不満を覚えているのかということについて、政府が正確に把握しているのかどうか疑問を持たざるを得ない。なぜならば本職は、母親達が「保育園に入れないこと」や、「出産・育児のためにそれまで培ってきたキャリアや仕事そのものを捨てなければならないこと」、「ようやく見つけて入れた保育園も第二子の誕生や失業により追い出されること」、「賃金が上がらないこと」、「子どもを産んで生活が一層苦しくなったこと」、「子育てに地域や会社、公的な機関からの支援が得られないこと」等々に対して怒りや不満を感じていると思っているが、政府の認識はどうか。
三 母親達が感じている怒りや不満は、特に目新しいものではないと思われる。しかし、この二〜三か年で急激に社会問題として大きくクローズアップされるようになってきたことは否めない事実である。その理由として考えられることは、政府が母親達の怒りや不満を真摯に取り上げ、対峙しようとしなかったことなどが挙げられるものと思われる。なぜならば、我が国では、これまで伝統的に家族や親戚、地域社会が互いに扶助しながら子どもの養育を行っていたという経緯があった。しかし、時代とともに経済や社会環境が目まぐるしく変化し、急速に都市化や核家族化が進展する中で、家族や地域のあり方自体もまた変わり、もはや家族等の扶助が望めなくなるという大きな変化が生じていたことは否めない事実である。それにも関わらず、政府は、深刻な変化を見逃し、相も変わらずに家族による扶助を自明視する政策を変えようとしなかったためである。また依然として子どもの養育は個人の生活や福利の問題であるとして、政府が関与することに余りにも消極的すぎたのではないかと思われる。その結果、今回の「保活」の困難さを招き、母親達の怒りの爆発に繋がっていったものと思われるが、政府の認識はどうか。
四 保育園の拡充や待機児童の解消、保育士の確保等、現在、我が国が直面する子育ての諸問題を抜本的に解決する方法として、例えば保育施設等の受け皿の整備、保育士の雇用確保、子育て環境の整備に関する企業の理解と協力、育児休業制度の推進、産前・産後休業制度の確立、事業所内保育施設の整備など、広範多岐に渡る取り組みが財政的な措置と併せて必要であると思われるが、政府の認識はどうか。
五 政府は、「待機児童ゼロ」や「一億総活躍」、「多様な働き方が可能な社会改革」など華々しいスローガンをぶち上げている。しかし、現実は「賃金は上がらない」、「保育所にも入れない」、「出産・育児のためキャリアを捨てる」といった厳しい状況となっている。このため、巷では政府への批判や怨嗟の声が溢れている。政府は、このような状況を認識しているか。
六 質問五に関連して、保育園に入れない母親達の事例として、@親が育児休業を延長した事例、A求職活動を辞めた事例、B「保活」の厳しさから出産・子育てを諦めた事例、等々枚挙にいとまがない事態となっている。さらには@二人いる子どもが別々の保育園に通っているため、送り迎えに四苦八苦している事例、A保育園へ入園するため虚偽の実績を挙げる事例などもある。また厚生労働大臣が国会で「息子夫婦が区外の認証保育園に月二十万円近くかけて通った」事例を披露したが、そのような多額の経費を支払える国民は皆無であり、庶民の感覚とは程遠いものとして反発が高まっている。政府がこのような事例を敢えて取り上げれば取り上げるほど、政府の認識が国民から乖離していることの証左とならざるを得ないということが実態である。政府は母親達のこのような厳しい現実や怒り、反発を認識しているか。
七 政府の緊急対策は「新たな財源ゼロ、保育士の給与改善もゼロ」との批判がある。政府は自治体に対して緊急対策を求める際に、財源や給与改善等の具体的な対策や予算措置を提示したのか。
八 政府の緊急対策は「質を低下させて子どもを入れてくれ」という対策に他ならないとの批判が根強い。一体子どもを自治体の基準以上に詰め込んで事故が起きた場合、国は責任を取る覚悟があるのか。敷衍するならば、地方自治体が国の基準より厳しい保育士の配置基準等を設けた理由は、二〇〇四年の保育中の死亡事故がきっかけであったことを考えるべきであると思われる。併せて政府の認識を問う。
九 政府は、今回の緊急対策について「緊急的にすぐできることは何かとの観点からまとめた」と狙いを説明しているようである。そうであるならば、自治体や保育園への財政及び責任任せではなく、政府自ら対応可能な施策をまず打ち出すべきではないか。
十 国の基準より手厚い保育士配置をしている自治体に国基準まで緩和するよう求めるなどして受け入れ枠を増やした場合、保育士の負担増が懸念されるが、政府の認識はどうか。
十一 政府の基準は、子どもの発達にはそもそも不十分なレベルであること、比較的国レベルより手厚いと言われている自治体であっても十分ではないとされていることからすれば、政府の緊急対策は、いわゆる絵に描いた餅になるのではないか。
十二 保育士の確保難の理由として、労働環境の問題や給与の低さによる深刻な人手不足が挙げられている。政府は、保育士を始め保育現場で働く職員の給与を全産業水準まで引き上げるとともに、保育・介護・障害者福祉施設等の日の当たらない職種にこそ手厚い支援の手を差し伸べるべきではないか。
十三 政府の見直しは、あくまでも子どもに十分な目配りができるのか、子どもがどう過ごし成長するかという観点から行うべきであると思われる。単に数合わせや詰込みであってはならないと思われるが、政府の認識はどうか。

 右質問する。



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