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平成二十八年八月一日提出
質問第二〇号

北方地域における旧漁業権補償措置に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




北方地域における旧漁業権補償措置に関する質問主意書


 太平洋戦争後、我が国の漁業を図るために漁業制度改革が行われ、昭和二十五年に漁業法が大きく改正され、戦前からの旧漁業権はこの漁業法により白紙になり、新たに漁業権が免許された。この制度改革の際、旧漁業権者等はそれぞれの漁業権の内容に応じて国の補償を受けたが、「歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島」(「北方地域」という。)の旧漁業権者等に対して、漁業権補償は行われなかった。
 その理由として政府は、昭和二十一年一月二十九日の「若干の外郭地域を政治上行政上日本から分離することに関する覚書」(「GHQ覚書」という。)により、北方地域等は日本の施政権が及ばない「外郭地域」に指定され、旧漁業権も漁業制度改革の実施を待たずに消滅したとの見解を示している。
 しかしながら、北方地域の旧漁業権の補償を行わないことは、北方領土を我が国固有の領土とする政府の方針と矛盾するものである。外務省のホームページの「日本の領土をめぐる情勢」においても、「日本はロシアより早く、北方四島(択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島)の存在を知り、多くの日本人がこの地域に渡航するとともに、徐々にこれらの島々の統治を確立しました。それ以前も、ロシアの勢力がウルップ島より南にまで及んだことは一度もありませんでした。一八五五年、日本とロシアとの間で全く平和的、友好的な形で調印された日魯通好条約(下田条約)は、当時自然に成立していた択捉島とウルップ島の間の国境をそのまま確認するものでした。それ以降も、北方四島が外国の領土となったことはありません」と示されており、北方地域の旧漁業権者からも、過去、約六十年にわたって毎年補償要求が行われている。
 かかる北方地域の旧漁業権補償措置に関わる政府の取り組みは、北方領土が我が国の固有の領土であるという政府の方針との整合性に疑義があるので、以下質問する。

一 北方地域の法的地位はどのようなものか。すなわち、国際法上および国内法上の地位について、政府の見解を具体的に示されたい。
二 現在に至る北方地域における漁業権、鉱業権、不動産の所有に関する権利はどのようなものか。政府の見解を示されたい。
三 北方地域の専用漁業権、定置漁業権、特別漁業権などの旧漁業権について、政府の把握状況を示されたい。
四 昭和四十五年五月十一日の参議院の沖縄及び北方問題特別委員会において、大和田水産庁長官は、「昭和二十一年一月二十九日に行政分離の総司令部の覚書が出ました時点において漁業法が失効して、したがいまして、その漁業法に基づいて免許された漁業権も失効する。一たん失効した漁業権は再び復活しないということで統一見解が行われておる」と答弁し、昭和五十九年十一月二十八日の参議院の沖縄及び北方問題特別委員会において、窪田水産庁振興部沿岸課長は、「北方四島なり小笠原なり沖縄の旧漁業法に基づく旧漁業権につきましては」「昭和二十一年一月二十九日付のGHQ覚書による行政分離によりまして消滅」したと答弁しているが、北方地域以外の小笠原諸島、奄美諸島、沖縄では、日米間の交渉の結果、かかる地域が本土に復帰した後の政治的措置により、全て漁業権補償問題は解決している。領土問題は、例えば、日本とアメリカ、日本とロシアの二国間の高度に政治的な問題であり、解決のためには長期にわたる外交交渉が必要である。しかしながら、日本とソビエト連邦、あるいは、日本とロシアとの外交交渉が停滞してきたからといって、北方地域の旧漁業権の補償問題について、政府が利害関係者の意思を無視して、一方的に失効していると表明しつづけるのは、日本国憲法第二十九条第一項の「財産権は、これを侵してはならない」に反する。北方地域においても、小笠原諸島、奄美諸島、沖縄のように、政治的措置により旧漁業権補償問題を解決すべきではないか。政府の見解を示されたい。
五 北方地域と同様にGHQ覚書により行政分離された他の諸島の旧漁業権補償問題については、伊豆諸島は本土並み補償、小笠原諸島、沖縄に対しては漁業振興資金等の措置がなされており、著しい不均衡があると思われる。政府は、北方地域とかかる伊豆諸島、小笠原諸島、沖縄との間に著しい不均衡が生じていると認識しているのか、見解を示されたい。
六 政府は一貫して北方地域を我が国固有の領土と主張しているが、かかる地域の旧漁業権に関して、自らの権利を主張、行使しないことは、我が国固有の領土であるという主張と整合しないのではないか。政府の見解を示されたい。
七 北海道弁護士会連合会が調査検討した結果、北方地域の旧漁業権が消滅したという政府見解は誤りであり、当然、国は旧漁業権の補償措置を講ずべきであるとの結論に至り、昭和六十三年十二月三日に竹下登首相に要望書を提出している。この要望書では、「GHQ覚書は、わが国の領土である前記諸島に対する日本国政府の政治上又は行政上の権利の行使を一時的に停止することを命ずるものであるが、直ちに国民の実態上の権利の消滅をきたすものではないこと、および国においても同じ物権としての性格を有する不動産所有者、鉱業権が右覚書にもかかわらず、当時から現在まで存続していること」を指摘しているが、昭和四十五年五月十一日の参議院の沖縄及び北方問題特別委員会における大和田水産庁長官の、「昭和二十一年一月二十九日に行政分離の総司令部の覚書が出ました時点において漁業法が失効」したという答弁とは相反するものである。他の物権の存続は認めつつも、旧漁業権のみ失効していると答弁することは、政府は北方地域の旧漁業権の所有者の財産権を侵害するものであり、日本国憲法第二十九条第一項に反するのではないか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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