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平成二十八年九月二十六日提出
質問第一号

米軍北部訓練場への新たなヘリパッド建設のために陸上自衛隊のヘリコプターが使用されたことに関する質問主意書

提出者  仲里利信




米軍北部訓練場への新たなヘリパッド建設のために陸上自衛隊のヘリコプターが使用されたことに関する質問主意書


 去る平成二十八年九月十三日、防衛省は沖縄県内の米軍北部訓練場に新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)を建設するため、陸上自衛隊のCH四七大型輸送ヘリコプターを使用して重機等の工事機材を空輸した。
 政府のこのような行為に対して、沖縄県内では法律違反や環境破壊、県民の生命・財産を損なう危険性があるとの指摘や批判、不満、憤りが相次いでいる。
 そこでお尋ねする。

一 米軍基地の建設に自衛隊が直接かかわることが出来る法的根拠は何かということについて政府の見解を答えられたい。
二 稲田防衛大臣は「今回の陸自ヘリの活動の根拠は防衛省設置法第四条である」と強弁する。しかし、同法はその第一条で「この法律は、所掌事務等を定めるとともに、事務を能率的に遂行するために必要な組織を定めることを目的とする」と明記している。一方、自衛隊法はその第一条で「自衛隊の行動及び権限を定めることを目的とする」と明記している。これら二つの法律の第一条の目的を見比べただけでもその違いと、どの法律が今回の陸自ヘリ活動の根拠法になり得るかは一目瞭然である。
 すなわち、防衛省設置法は「防衛省の仕事を定めた組織法」であり、かたや自衛隊法は「自衛隊が行い得る任務と行動(活動)を定めたもの」であることからして、今回の陸自ヘリの活動根拠は稲田防衛大臣の言うように防衛省設置法ではなく、自衛隊法であることは明らかであるが、政府の見解を答えられたい。
三 質問一及び二に関連して、政府があくまでも今回の陸自ヘリの活動の根拠が防衛省設置法であると言い張るならば、同法第五条において「自衛隊の任務、行動及び権限等は、自衛隊法の定めるところによる」と明記されている規定との整合性をどのように考えるのかについて政府の見解を答えられたい。
四 自衛隊の任務と行動(活動)については、自衛隊法の第六章において、「防衛出動、治安出動、警護出動、災害派遣、原子力災害派遣と厳格に定められている」し、これらの規定は限定列挙であることからすれば、これ以外の行動は「明らかに違法である」と思われるが、政府の見解を答えられたい。
五 今回の陸自ヘリの使用に関しては識者が押しなべて「違法である」と指摘していることや、根拠規定となり得ない防衛省設置法を持ち出してまで強引に解釈を捻じ曲げてその法的な根拠にしようとすることなどは、政府が明らかに違法であることを承知の上でヘリパッド建設を強引に推し進めようとしていることに他ならないが、政府の見解を答えられたい。
六 防衛省は、余りにもお手盛りであり、自主アセスとの矛盾が多いと批判が絶えない「環境影響評価検討図書」において「工事用資機材のヘリによる空輸の環境影響を検討し、二十回程度の飛行のため大きな影響はない」と自ら結論付けていた。しかし、今回民間と陸自のヘリの搬送回数が三十回以上と大幅に上回ったことから、これまでの説明を一転させて「搬送回数は大きく逸脱していない」と強弁しており、余りにもお粗末な対応である。
 また、琉球大学の教授が陸自ヘリの離着陸した地点から二キロメートル以上離れた場所で騒音測定を行ったところ、「騒々しい工場内」に近い最大八十九.二デシベルの騒音が発生しており、生息している生物に騒音被害をもたらしていることは明らかである。
 これらのことは貴重種が生息し野生動植物の楽園となっている「やんばるの森」の自然及び生息環境の破壊に繋がる重大な行為であると思われるが、政府の認識はどうか答えられたい。
七 稲田防衛大臣は今回の陸自ヘリの使用を「必要最小限に限った」と言うが、何が必要で、そして最小限なのか、その根拠は一切明らかにしていない。また、陸自のヘリを使用すること自体を「程度の問題」で済ませようとすることは明らかに不適切である。
 よって、政府が言う「最小限」とは一体何かということと、陸自のヘリの使用問題は「程度の問題」なのかということについて政府の見解を答えられたい。
八 稲田防衛大臣が言うように「今回の陸自のヘリの活動の根拠は防衛省設置法第四条である」ならば、航空機の航行の安全をはかることを目的として制定された航空法において、今回の陸自ヘリの輸送が同法の適用の対象となることから、同法第六十三条(航空機の燃料)、第八十一条(最低安全高度の保持)、第八十二条(巡航高度)、第八十八条(物件の曳航)、第九十七条(飛行計画とその承認)及び同法施行規則第百九十六条(安全上の基準の適用)等に基づく所要の対応や提出、承認等を講じられたか否かについて、個別に政府の承知するところを明らかにされたい。
九 今回の陸自ヘリの航空路は県道七十号線を横切っており、住宅地や道路の上空を飛んだことになるが、地方航空局や沖縄県の了解や事前の説明を行ったのかということについて政府の承知するところを明らかにされたい。
十 質問八及び九に関連して、本職が調査したところ、今回の陸自ヘリの輸送では航空法第九十七条に基づく飛行計画とその承認手続き(地方航空局への手続き)や、同法第八十八条に基づく物件の曳航と同法施行規則第百九十六条に基づく安全上の基準の適用(曳航索への二十メートル間隔の標識布の取り付け、地上連絡員の配置等)、さらには沖縄県への事前の連絡や説明を一切行っていないと承知しているが、政府の承知するところを明らかにした上で、所要の手続きや対策等を行わなかったことにより航空法で定める安全を損なったことや、航空路が県道を横切ったことにより住民の生命・財産を損なう危険性を高めたこと、沖縄県がヘリによる輸送を行わないでほしいと要望したことを無視する結果となったこと等に対する政府の見解を答えられたい。
十一 稲田防衛大臣は地元の理解について「県には事前に説明した」と言うが、沖縄県内の地元紙が翁長知事に質問したところ、知事は十二日に沖縄防衛局から「陸自ヘリで資機材運搬を検討している」と連絡があったため、根拠を示さないまま実施することがないよう求めた。防衛局側は「一週間以内に説明に上がりたい」とのやりとりがあり、その後は「何ら説明や連絡はない」とのことであるが、これらのやり取りについて政府の承知するところを明らかにした上で、稲田防衛大臣の言うように沖縄県に対する説明が十分に行われたかということについて政府の見解を答えられたい。
十二 巷では、政府のなりふり構わない強硬姿勢に対して、十二月に退任するケネディ駐日米国大使への手土産としたいのではないかとか、稲田防衛大臣の訪米前にヘリパッド建設をアピールし成果としたいのではないかとの噂が絶えないが、政府が沖縄県民の民意を無視して米国との約束だけを優先し、または米国の言うがままに工事を強行しようとしていることを考えるとあながち間違いではないと思われるが、これらの指摘について政府の見解を答えられたい。
十三 政府が陸上自衛隊や海上自衛隊を総動員して米軍のヘリパッド建設を強引に進めようとしていることは、沖縄県民にとって、これまで「県民に寄り添う」とか「丁重に説明する」、「県民の理解を得るためできることは全てやる」との言葉が全て「あからさまな嘘」や「絵に描いた餅」、「ハナシグワッチー」としか受け止められていない。沖縄県民が政府に対して抱くこのような不満や憤り、不信感に対して政府はどの程度理解しているのか、そして今後どのように対応しようとしているのかについて政府の見解を答えられたい。
十四 沖縄県内の地元紙によれば、岡部俊哉陸上幕僚長は十五日の記者会見で今回の陸自ヘリの使用は「大臣命令によって実施した」し、また「重量オーバーであった」、「陸自を使うかどうかは大臣判断」と述べたとのことであるが、このような発言について政府の承知するところを明らかにした上で、大臣の判断や命令であれば違法であっても従うとの判断や、重量オーバーの危険な状態であるとの認識を持っていても安全を顧みず民間地上空を平気で飛行するとの姿勢に対する政府の見解を答えられたい。

 右質問する。



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