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平成二十八年十一月九日提出
質問第一二八号

北部訓練場の返還が過重な基地負担の軽減に繋がるとの政府説明の欺瞞に関する質問主意書

提出者  仲里利信




北部訓練場の返還が過重な基地負担の軽減に繋がるとの政府説明の欺瞞に関する質問主意書


 安倍内閣総理大臣は、今国会の所信表明演説において「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」ことや「北部訓練場のうち四千ヘクタールを返還し、ヘリパッドを既存の訓練場内に移設することで、確実に結果を出して沖縄の未来を切り拓く」ことを述べた。しかし、本職は、安倍総理が言うように本当に「北部訓練場の返還」が「沖縄の過重な基地負担の軽減」の「確実の結果」に繋がるのか、そしてそれにより「沖縄の未来が切り拓かれる」のか甚だ疑問を抱いている。むしろヘリパッドの移設は老朽化した施設を最新鋭の機種に対応できるように機能強化するためであり、また上陸訓練機能の新たな整備等のように使い勝手が良く、効率的な基地とすることであると考えている。
 その証左が米海兵隊が二〇一三年にまとめた「戦略展望二〇二五」で明確に「使用不可能な訓練場を部分返還し、限られた土地を最大限に活用する訓練場を新たに開発する」としていることであり、その結果、米軍は日本政府の負担でオスプレイが使える機能強化された基地を手に入れることができるようになるのである。
 そこでお尋ねする。

一 安倍総理は「今回の返還が二十年越しである」と言うが、なぜ二十年余も返還に手間取ったのか、その理由を明らかにされたい。
二 安倍総理は「今回の北部訓練場の返還面積が四千ヘクタールで沖縄県内の米軍施設の約二割である」と言うが、これまで公表されている沖縄県内の米軍施設面積は二万三千百七十六.三ヘクタールであり、在日米軍専用施設面積は二万二千八百七.五ヘクタールである。これらのいずれの面積で除しても二割にならない。安倍総理の言う二割の根拠を明らかにされたい。
三 安倍総理は「〇.九六ヘクタールのヘリパッド」と言うが、その積算根拠を明らかにされたい。
四 質問三に関連して、安倍総理が言う「ヘリパッド」の定義と面積は極めて欺瞞に満ちており、矮小化している。本来「ヘリパッド」とは「着陸帯」やヘリが安全に離発着できるための「無障害物帯」、さらには着陸帯に繋がる「進入路」や「工事用道路」、ヘリパッドと国頭村宇嘉川河口部を結ぶ「訓練道」のそれぞれがあって成り立つものである。よってそれらの定義と面積について政府の承知するところを明らかにした上で、本職が指摘する「ヘリパッド」の構成要件について政府の見解を答えられたい。
五 質問三及び四に関連して、安倍総理が言う「ヘリパッド」に「着陸帯」は含まれるが、「無障害物帯」や「進入路」、「工事用道路」、「訓練道」が含まれていないのは如何なる理由か明らかにされたい。
六 安倍総理は「ヘリパッドを既存の訓練場内に移設する」というが、それでは返還する訓練場内にあるヘリパッドの数と面積、返還されない既存の訓練場内にある既存のヘリパッドの数と面積、新たに整備するヘリパッドの数と面積についてそれぞれ政府の承知するところを明らかにした上で、今回の移設が「基地負担の軽減」にどのように繋がっているか政府の見解を答えられたい。
七 安倍総理は「一つひとつ確実に結果を出す」と言うが、これまでの「結果を出した基地負担の軽減」について政府の承知するところを明らかにされたい。
八 安倍総理は「沖縄の未来を切り拓く」と言うが、それならばこれまでの「切り拓いた未来」について政府の承知するところを明らかにされたい。
九 安倍総理は「ヘリパッドを既存の訓練場内に移設する」とあたかも同じものを単に右から左に移設するが如く述べているが、移設前のヘリパッドと移設後のそれとの機能や規模、施設内容等について政府の承知するところを明らかにした上で、移設後のヘリパッドが海兵隊等の新型輸送機であるオスプレイに対応した新機能を備えたものであり、しかも規模もこれまでより拡大したものであることからすれば、訓練場の機能強化に他ならないという本職の見解について政府の見解を明らかにされたい。
十 本職は、今回の北部訓練場の再編の大きな目的の一つは、移設後のヘリパッドと国頭村宇嘉川河口部を結ぶ「訓練道」を新たに整備して、海からの上陸訓練とヘリパッドでのオスプレイの離発着訓練を同時に実施することを可能とし、空と海と陸が一体となった訓練を日常的に効率よく実施できるようにすることであると考えているが、政府の認識と見解を明らかにされたい。
十一 本職は、返還されない既存の訓練場内には既設のヘリパッドが十五カ所あり、同訓練場内に新たなヘリパッドが六カ所建設されれば、合計で二十一カ所のヘリパッドが北部訓練場内にあることになると承知している。これらのヘリパッドや訓練道を米軍がこれまでと同様にジャングル戦の演習・訓練のために自由勝手に使用したら、国の天然記念物であるノグチゲラを始めとする希少生物や絶滅危惧種、固有種がたちどころに絶滅の危機に陥り、またやんばるの森は徹底的に破壊されてしまうのではないか。
十二 質問十一に関連して、今回のヘリパッドの移設工事はまさに環境破壊そのものであり、自然保護への配慮は微塵も感じられないところである。政府は今回のヘリパッド建設工事による騒音被害や環境への負荷、影響をどのように考えているか。
十三 東村高江周辺の住民は、ヘリパッド建設がオスプレイの訓練激化に繋がり、これまで以上に騒音の悪化や住環境の破壊をもたらすものであり、人格権の侵害であるとして工事の差し止めを求める訴訟を提起した。政府は地域住民のこのような悲痛な訴えをどのように考えているか。
十四 米海兵隊が二〇一三年にまとめた「戦略展望二〇二五」は、米軍北部訓練場に関し「約五十一%の使用不可能な訓練場を日本政府に返還する」と記載されているが、米軍が使用不可能とした約五十一%の訓練場と今回部分返還する四千ヘクタールの関係及び使用不可能とした理由について政府の承知するところを明らかにした上で、本職は、米軍が使用不可能とした場合に限って返還されるならば「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」との安倍総理の所信表明は全くの虚言であり、米軍・米国政府頼みの方針であって、相も変わらずに米軍・米国政府に追従する姿勢を露わにしたものであると批判せざるを得ないが、本職のこのような批判に対する政府の見解を答えられたい。
十五 質問十四に関連して、米海兵隊の「戦略展望二〇二五」は「限られた土地を最大限に活用する訓練場を新たに開発する」として「安波訓練場の閉鎖・土地の返還の代わりに、北部訓練場への新たな海岸線からのアクセス経路の提供を受けることで安波訓練場はリスクなく返還することが出来る」と記している。本職は、このような記述があるということは、米軍にとって今回の部分返還があくまでも「基地を安上がりに、しかも効率よく使い勝手の良いものとし、また老朽化した施設を最先端の施設に整備し直すための返還である」ことは明らかであると考える。よって、これらの記述について政府の承知するところを明らかにした上で、本職のこのような考えに対する政府の見解を答えられたい。
十六 政府はやんばるの国立公園指定と世界自然遺産登録への原点に立ち戻って、米軍の北部訓練場を含む全ての区域を「やんばるの森」として指定し直すとともに、改めて希少生物や絶滅危惧種の保護とやんばるの森の自然環境の保全に努めるべきではないか。
十七 本職は「戦争につながる一切の軍事基地の撤去」を求める立場であるが、「沖縄の過重な基地負担の軽減」を図るための当面の措置として、現在米軍任せとなっている返還地の決定に対して、地元の市町村や沖縄県からの要望のある土地をまず返還するという本来の方法に戻すべきであると考えるが、政府の見解を伺う。

 右質問する。



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