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平成二十八年十二月二日提出
質問第一八三号

日印原子力協定におけるインドの核実験モラトリアムの実効性に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




日印原子力協定におけるインドの核実験モラトリアムの実効性に関する質問主意書


 安倍総理とインドのモディ首相は、平成二十八年十一月十一日に東京で「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定」(「本協定」という。)に署名した。
 署名後、安倍総理は、本日、本協定の署名は、大変喜ばしい、今後原子力協力を進めていく上で、核実験の一方的かつ自発的なモラトリアムに関するインドのコミットメントが前提であり、これが維持されていることを評価する、との旨の発言を行った。
 しかしながら、本協定および「見解及び了解に関する公文」(「本公文」という。)において、インドが核実験を行わない旨のみならず、核実験モラトリアムを継続するという旨の明確な表現はない。例えば、日本ヨルダンの間の原子力協定では、「ヨルダン・ハシェミット王国又は日本国が核爆発装置を爆発させる場合」の対処が協定の条文に明示され、ヨルダンと当時の日本政府の強い政治意思を表している。このため、本協定においては、核実験の一方的かつ自発的なモラトリアムに関するインドのコミットメントが前提であることは、必ずしも明確に担保されておらず、本協定が複雑極まりない表現を用いているので、国民はインドの核実験モラトリアムが継続されるという確証を得ることはできない。
 これについては、野上官房副長官が「インドは、二〇〇八年九月に核実験モラトリアムの継続、軍民分離の実施、厳格な輸出管理を含む「約束と行動」と呼ばれる政策を表明し、原子力の平和的利用を進める固い決意を明らかにしています」と記者に口頭で説明したに過ぎず、全く明確さに欠けている。
 このような観点から、以下質問する。

一 本協定及び本公文には、例えばヨルダンと日本の原子力協定のような、核実験の禁止あるいは停止を義務付ける「核爆発装置を爆発させる場合」の対処等が明確に記述されていないが、この認識で良いか。
二 本協定及び本公文に核実験モラトリアムの義務が書き込まれなかった理由は何か。見解を示されたい。
三 核実験の実施を含む核兵器の運用は、国家の主権の行使にかかわる国家の根幹の政策であり、今後も核兵器の運用の意図のないヨルダンとは異なり、インドは国家の安全保障政策として核兵器を実際に運用することを考えており、その保守、開発のためには核実験は不可欠であると考え、インドの国家意思が他国との取極めにより拘束されることがないように、本協定及び本公文に核実験モラトリアムの義務を書き込まなかったのではないか。政府の見解を示されたい。
四 本公文でいう「九月五日の声明」の原文あるいは日本語訳は外務省のホームページ等で公開されているか。またその日本政府の公式の日本語版は存在するのか。政府の見解を示されたい。
五 本公文でいう「九月五日の声明」の原文のみならず日本語訳も外務省のホームページ等で公開されていないため、本公文を読んでも国民はそこに書いてある意味が分からない。例えば、本公文の「日本側代表団の代表は、当時のインド共和国外務大臣プラナーブ・ムカジー氏が二千八年九月五日に行った声明(以下「九月五日の声明」という。)が協定の下での両国間の協力の不可欠の基礎を成す旨述べた」あるいは「日本側代表団の代表は、九月五日の声明に違反するインドの行動は通常の状況からの深刻な逸脱とみなされることとなる旨述べた」という文章だけを読んでも何を意図するのか全く分からない。外務省が「九月五日の声明」の原文及び日本語訳を本協定に附属させるべきではないか。政府の見解を示されたい。
六 本公文でいう「九月五日の声明」の核実験モラトリアムに関する日本語訳は、「我々は、自発的で一方的な核実験のモラトリアムを継続する。我々は、核兵器競争を含むいかなる軍備競争にも加わらない。我々はつねに、グローバルな責任を認識しつつ戦略上の自主性を堅持してきた。我々は核兵器を先制使用しないという政策を確認する」で良いか。政府の見解を示されたい。
七 右の文が「九月五日の声明」の核実験モラトリアムの部分とすれば、「自発的で一方的な核実験のモラトリアムを継続する」としつつも「我々はつねに、グローバルな責任を認識しつつ戦略上の自主性を堅持してきた。我々は核兵器を先制使用しないという政策を確認する」と述べており、「戦略上の自主性を堅持」するため、他国との取極めでその自主性を損なうことはないと読み取れるのではないか。またそのために、本協定及び本公文に核実験モラトリアムの義務を書き込まなかったのではないか。政府の見解を示されたい。
八 「九月五日の声明」で「我々は核兵器を先制使用しないという政策を確認する」と述べているが、これは反撃としての核戦力の保持を意味する。核戦力が実際に使用できるためには、核兵器も一つの兵器であるから当然老朽化するし、その保守と技術革新に伴う性能向上のためには、実験、開発を繰り返す必要がある。このため、「九月五日の声明」では、二〇〇八年九月の時点で「自発的で一方的な核実験のモラトリアムを継続する」としているが、それが将来的にも永続するものではないと考えられる。このような状況にもかかわらず、政府はインドが核実験モラトリアムを継続し続けると考えるのか。政府の見解を示されたい。
九 「九月五日の声明」でいう「自発的で一方的な核実験のモラトリアム」とは、具体的にどのような規模の核実験をいうのか。大規模な核爆発をともなう核実験を行わないとしても、臨界前核実験は含まれるのか。政府の見解を示されたい。
十 インドの行った一九九八年の五回の核実験のうち、三回は五月十一日に同時に実施され、実験で発生した振動は各国の地震計で検出された。他方、残り二回の実験は五月十三日に実施されたが、爆発の規模が小さかったため、各国の地震計でも振動は検出されていない。今後、インドは大規模な核実験は行わないとしても、感知できない小規模な核実験を行い実験データの蓄積を行うことは否定できない。本協定の前提が成立するためには、インドの核実験モラトリアムの継続が前提である。本協定の実効性を担保するために、インドが核実験を行わないための監視制度等は存在するのか。政府の見解を示されたい。
十一 二〇一二年、米エネルギー省傘下の国家核安全保障局は、核兵器の性能を調べるための新型の核実験をニューメキシコ州のサンディア国立研究所で実施したとの報道がある。この実験は、強力なエックス線を発生させて超高温、超高圧の核爆発に近い状況を再現し、プルトニウムの反応を確認するもので、国家核安全保障局は「地下核実験をせずに、保有する核兵器の安全性や有効性を確かめる手段」と位置付け、アメリカは一九九三年以後、核爆発をともなう核実験を行っていない。今後の主流になる新型の核実験がインドで行われた場合でも、その核実験モラトリアムは継続していると見なすのか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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