質問本文情報
平成三十年一月二十五日提出質問第二一号
再生可能エネルギーの電力系統接続に係る空容量ゼロ問題等に関する質問主意書
提出者 阿部知子
再生可能エネルギーの電力系統接続に係る空容量ゼロ問題等に関する質問主意書
先般提出した「再生可能エネルギーの電力系統接続に係る空容量ゼロ問題等に関する質問主意書」に対し、平成二十九年六月九日付で答弁書(内閣衆質一九三第三五一号、以下「答弁書」という。)を受領したが、一部の質問に対しては充分な回答を得られたとは言い難く、さらに新たな事実も判明したため、全国で多発する空容量ゼロ問題及び接続費用負担問題に対する政府の認識を改めて問う。
1 答弁書は旧法第五条がいわゆる優先接続を義務付ける規定ではないとしているが、平成二十四年時点では政府資料において優先接続との記述が見られる。答弁書における旧法第五条の解釈は二十四年時点のものと異なると考えられるがどうか。また仮に解釈変更が為されているのだとすれば、平成二十四年から平成二十八年に至るまでに如何なる理由があって変更されたのか、決定日及び具体的な検討・決定プロセスと併せ、理由を明確に示されたい。
2 再生可能エネルギー特別措置法及び電気事業法の改正前における、再生可能エネルギー以外の電源の接続は、どのような法的根拠に基づいていたのか。法令及び条文を示されたい。
3 昨年、東北電力管内で、秋田県において関西電力と丸紅が出力百三十万キロワットの石炭火力発電所の建設計画を発表したことで、当該地域の系統接続の空容量がゼロになったと聞く。この事例は、再生可能エネルギー特別措置法(旧法)の接続義務規定が電気事業法第十七条第四項に移行されたことにより、実質的な再生可能エネルギーの接続優先義務が存在しなくなった影響ではないか、政府の見解を示されたい。
二 空容量ゼロ問題に関して、九州電力、東北電力管内をはじめ多くの地域で系統制約により空容量がゼロとなる問題が頻発する現状がある。だが、答弁書では個別の事業判断の実態調査は行っていないとある。
1 適切な電力系統への接続ルールの整備・運用を考える上でも、まずは政府として実態調査を行い検証すべきではないか。政府の見解を改めて伺う。
2 京都大学の安田陽特任教授、山家公雄特任教授の調査によれば、空容量が不足していると言われる東北北部エリアの基幹系統の調査を行ったところ、実潮流ベースでは最大でも約二割の利用率であったとされる。空容量の計算は、欧州諸国では実潮流ベースで行われているが、日本では定格容量ベースで行われている。日本も実潮流ベースでの運用に切り替えていくよう、制度設計・運用を行っていくべきだと考えるがどうか。
三 昨年十月、一般社団法人全国ご当地エネルギー協会が経済産業省に対して接続費用負担問題等の解決に向けた要請活動を行ったと承知しているが、その要請活動に際して同協会が実施した電力系統接続に関する実態調査(以下、「電力系統接続に関する実態調査」という。)によれば、回答が得られた十一件のうち十件で、調達価格における接続費用の平均値(太陽光発電〇・六三から〇・七四万円/キロワット)や電力広域的運営推進機関の定める一般負担上限額(太陽光発電一・五万円/キロワット)を大きく上回っていたという。電力系統接続に関する実態調査の中には、太陽光発電で百万円/キロワット以上、小水力発電で九百万円/キロワット以上といった非常に高額な工事費負担金が請求された案件も見られる。
1 電力系統接続に関する実態調査等で見られるような多額な連系工事費負担金を請求される事例を政府は把握しているか。
2 これらの事例に限らず、多額の連系工事費負担金が請求される事例が頻発している。前回調査が平成二十六年度における系統連系の接続申込に対する回答状況であるとすれば、政府として改めて実態調査を行い、連系工事費負担金の制度の運用及び再整備を含めて対策を講じるべきではないか。また、今後は各一般送配電事業者による報告徴収の対象として連系工事費負担金の実績を求めるとともに、各一般送配電事業者ごとに連系工事費負担金として要する費用の平均価格と最高価格の総額及び内訳等を政府として公表してはどうか。
3 接続費用負担問題に関連して、連系工事費負担金以外にも、工期が十年を上回ることで断念した案件も数々あると聞く。電力系統接続に関する実態調査においても、工期十年以上という案件が二件あったと承知している。系統接続工事の工期の問題についても実態を把握しているか。また把握している場合はどのような対策を政府として講じるつもりか。
四 接続費用負担問題と調達価格との関連について、答弁書には「工事費負担金は、個々の設備ごとの事情に応じて金額が異なるが、調達価格は、国民負担の抑制の観点から、再生可能エネルギー発電設備による再生可能エネルギー電気の供給を調達期間にわたり安定的に行うことを可能とする価格として、当該供給が効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用等を基礎として定めるものとされているところである。」とある。他方で、資源エネルギー庁が平成二十八年十一月に公表した資料「電源種別(太陽光・風力)のコスト動向等について」の二十三頁では、「平成二十八年度の調達価格の算定に当たっては、接続費用の上昇傾向や、出力制御対応機器の設置費用の増加を踏まえ、平成二十七年度の調達価格の想定値(一・三五万円/キロワット)を据え置いた。」とあり、太陽光発電の接続費用の上昇が指摘されている。
1 高額な連系工事費負担金が請求される具体的な事例が徐々に明るみになりつつあり、なおかつ資源エネルギー庁の資料においても接続費用の上昇が指摘されている中で、答弁書にある「効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用」は明らかに上昇傾向にあると考えるがどうか。政府の見解を伺う。
2 もし高騰する連系工事費負担金に対して、何ら対策が取られなかった場合、発電事業者の負担増加はもちろん、それに加えて調達価格の増加等による国民負担の増大は避けられないと考えるがどうか。
五 答弁書において、「電力広域的運営推進機関では、経済産業大臣が認可した業務規程に基づき、発電事業者からの求めに応じて、一般送配電事業者の示した電力系統の増強に係る工事の内容について検証し、必要に応じて一般送配電事業者に再検討を求めることとしている。」とある。
1 答弁書の回答は、電力広域的運営推進機関が実施する「苦情及び相談対応」業務並びに「紛争解決」業務が該当すると考えてよいか。
2 電力広域的運営推進機関の報告書「平成二十八年度における苦情及び相談対応について」では、系統アクセスに関する費用負担についての問い合わせが平成二十八年度において、総数六十四件(前年度からの継続案件九件を含む)のうち十六件が該当した。そのうち十件程度が連系工事費負担金に関する問い合わせだと見受けられる。他方で、先ほど取り上げた事例以外にも高額な連系工事費負担金を要求される事例は複数あると推察される。接続費用負担問題が全国で多発する一つの要因は、電力広域的運営推進機関による「苦情及び相談対応」を含めた仲裁の体制が十分ではなくその役割を果たせていないからではないかと考えるがどうか。
六 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う原子力損害賠償・廃炉費用の経営合理化によるねん出について、答弁書には「一般送配電事業者である東京電力パワーグリッド株式会社においては、法令に基づき、電力系統の維持や整備を含めて、一般送配電事業を適切に運営することが求められている。」とある。では具体的に政府として、如何なる基準で損害賠償・廃炉費用と系統整備費用を切り分け、如何にして東京電力ホールディングス株式会社および東京電力パワーグリッド株式会社に対して指導・監督していくことを検討しているのか。具体的な根拠や、法令、条文に基づいた明確な回答を求めたい。
右質問する。