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平成三十年二月二十八日提出質問第一〇五号
地域共生社会の実現と隣保館の役割に関する質問主意書
提出者 長尾秀樹
地域共生社会の実現と隣保館の役割に関する質問主意書
一昨年来、社会福祉法や介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法、医療法などが改正された。
その主な内容は、「社会福祉法人制度の改革や介護人材確保の推進」「高齢者の自立支援と要介護の重度化防止、地域共生社会の実現を図るとともに、制度の持続可能性を確保することに配慮し、サービスを必要とする方々に必要なサービスが提供されるようにする」という福祉サービスの供給体制の整備、充実を図るほか、地域包括ケアシステムを強化して、地域共生社会を実現していこうとするものである。
以上を踏まえ、以下質問する。
その中では、隣保館の今日的役割として「隣保館は、地域における生活上の課題の解決に向けた地域福祉の推進や様々な人権課題の解決のための各種事業を実施するなど、その期待される役割はますます大きいものとなっている」とされている。さらには「社会福祉の分野においては、隣保館について、周辺地域を含めた地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、今後一層発展していくことが望まれる」などとも記されている。
隣保館の今後の役割の重要性及び隣保館が地域福祉を担っていくことが示されているものと理解しているが、この通知は今なお有効なのか。
二 改正社会福祉法の第四条第一項及び第二項に「地域住民等」との文言が加えられた。社会福祉法からも、この通知の趣旨からも、社会福祉及び地域福祉において、隣保館も「地域住民等」に含まれると当然解釈できるはずだが、それで良いか。また、「等」とは地域住民のほかにどのような方々または機関を意味しているのか。
三 地域における住民主体の課題解決力強化・包括的な相談支援体制を構築するためには、社会福祉法人を始め、例えば、消費生活協同組合・子ども会・学校・PTA・老人クラブ・自治会・民生委員・自治委員など多様な地域活動の担い手が協働していく必要がある。
そうであれば、隣保館についても「市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉支援計画の策定ガイドライン」に明記すべきではなかったか。明記することこそ、隣保館もまた地域共生に大きな役割を担っていくものと、厚生労働省から市町村その他へ周知できるのではないかと考えるが、政府の見解如何。
四 社会には様々な差別が生じる。高齢者への差別、障がい者への差別、生活困窮者への差別、また部落差別、さらには隣保館への偏った理解などあらゆる差別や間違った理解の解消に真正面から取り組まないと地域包括的福祉、地域共生社会の実現はないと考える。
例えば、地域福祉計画に共生の妨げになりかねない差別や意識の生じる可能性を明記し、改正社会福祉法で重要な役割とされる地域福祉協議会や民生委員・児童委員などに差別や人権に関する研修を必要とするなど、まずは市町村などの自治体への周知を徹底すべきである。政府として、どのような具体的対応をするつもりか、伺いたい。
五 隣保館の設置及び運営主体が市町村であるため、市町村の財政事情で隣保館の事業や活動が大きく制約されているのではないかと考えられる。今後、地域共生社会の拠点となっていくためには、耐震化も必須であり、高齢者や障がい者・けが人などが利用できるエレベーター設置を始め、バリアフリー対応を進めるべきだと考える。
また、多岐・複雑な地域社会の課題を解決するには、相談員の配置やその報酬を「隣保館運営等補助金」の対象としてもらいたいなどの要望もあると聞いている。隣保館従来の相談事業の充実のためにも、更に共生社会実現の一翼を担うためにも、何らかの予算上の配慮をすべきと考えるが、いかがか。
六 社会福祉法を始め一連の法改正で目指す地域共生社会の実現には、地域住民等、つまり諸々の人々や各団体・機関などが相互理解と連携を深め、間違った理解をすることなく、あらゆる差別を撤廃又は解消することが不可欠である。差別撤廃・解消に対応する法律は多々あるが、それぞれを所管する各省庁間の連携なくしては、社会福祉法などが目指す地域共生社会の実現はあり得ない。
ついては、右を踏まえた上で、地域共生社会の実現のため、政府として今後どのように取り組んでいくのか示されたい。
右質問する。