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平成三十年三月三十日提出
質問第一九二号

麻生財務大臣の「日本の新聞のレベルか」との発言に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




麻生財務大臣の「日本の新聞のレベルか」との発言に関する質問主意書


 平成三十年三月二十九日、麻生太郎財務大臣は、参議院財政金融委員会で答弁し、森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題に関連し、「森友の方が、TPP(環太平洋経済連携協定)11より重大だと考えているのが、日本の新聞のレベルか」と述べ、わが国の新聞報道のあり方を批判した。
 麻生財務大臣は、同月八日に行われた十一か国によるTPPの署名式について、「茂木大臣が零泊四日でペルー往復していたが、日本の新聞には一行も載っていなかった」とも批判した。しかしながら、主要各紙はこの署名式を報じており、事実に反する。また署名式の開催地はペルーではなく、チリの首都サンティアゴである。
 麻生財務大臣の発言は、新聞報道自体をためらわせるような事後的な規制、「検閲」であるのか、さらには新聞報道のあり方に影響を及ぼすのかが問題となる。憲法学者の議論では、事後的に行われたりした場合も「検閲」であるとする学説は多い。また、日本国憲法第二十一条に由来する国民の知る権利を担保する新聞報道のあり方について、日本国憲法第六十五条でいう行政権の属する内閣の一員である国務大臣が国会で批判的な見解を加えることには強い違和感がある。
 最高裁判所は、日本国憲法第二十一条第二項にいう「検閲」について「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるもの」と判示している(最大判昭和五十九年十二月十二日、民集三十八巻十二号)。
 芦部信喜は『憲法』の中で、「検閲の時期は、思想内容の発表前か後かで判断されてきたが、表現の自由を知る権利を中心に構成する立場をとれば、むしろ思想・情報の受領時を基準として、受領前の抑制や、思想・情報の発表に重大な抑止的な効果を及ぼすような事後規制も、検閲の問題となりうる」との見解を示している。
 これらを踏まえ、麻生財務大臣の発言に関して、以下質問する。

一 政府は、「日本の新聞のレベル」がどうあるべきかという基準を持っているのか。政府の見解如何。
二 一に関連して、「日本の新聞のレベル」がどうあるべきかという基準は、麻生財務大臣自身の見解に止まるという理解でよいか。例えば、麻生財務大臣は、茂木大臣の出張について、「日本の新聞には一行も載っていなかった」ことを疑問視する答弁を行っており、独自の価値基準を持っていると思料する。政府の見解如何。
三 麻生財務大臣が国会で行った「日本の新聞のレベルか」に関する答弁は、わが国の新聞報道のあり方に言及しており、「対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」に付随する「その特質として備えるもの」にあたり、日本国憲法第二十一条に違反するのではないか。
四 麻生財務大臣が国会で行った「日本の新聞のレベルか」に関する答弁は、わが国の新聞報道のあり方に言及しており、「受領前の抑制や、思想・情報の発表に重大な抑止的な効果を及ぼすような事後規制」であり、「検閲の問題となりうる」のではないか。政府の見解如何。
五 麻生財務大臣は当該答弁について、謝罪した上で撤回すべきではないか。
六 行政権の行使の主体である内閣の一員たる国務大臣が、新聞報道のあり方について国会で批判的な論評を加えることは明らかに不適当であり、さらには、財務大臣が所管している財務省理財局による決裁文書についての報道に批判的な論評も行っている。かかる人物を財務大臣に任じた安倍総理自身の政治責任も問われるべきではないか。政府の見解如何。

 右質問する。



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