質問本文情報
平成三十年五月十四日提出質問第二九三号
北朝鮮の核施設の廃棄式典において日本が蚊帳の外に置かれている理由に関する質問主意書
北朝鮮の核施設の廃棄式典において日本が蚊帳の外に置かれている理由に関する質問主意書
朝鮮中央通信の報じるところでは、北朝鮮外務省は五月十二日に広報を発表し、北東部の咸鏡北道・豊渓里の核実験場を廃棄する式典を同月二十三日から二十五日の間に気象条件を考慮しながら行う予定だと発表した。
核実験場の廃棄について「実験場の全ての坑道を爆破する方法で崩落させ、入り口を完全に閉鎖した後、地上の全ての観測設備、研究所、警備区分隊の建物を撤去する方式で順次進められる」と説明し、核実験場の廃棄と同時に警備員と研究員を撤収させ、実験場周辺を完全に閉鎖する方針も示したという。
また、核実験場廃棄の透明性を示すため、「国内の報道機関はもちろん国際記者団の現地での取材活動を許可する用意がある」と表明し、核実験場が狭いため国際記者団は中国、ロシア、米国、英国、韓国の記者に限定する旨を明らかにした。核実験場までの移動のため特別専用列車を編成し、記者センターを設置するなど便宜を図ることも併せて発表された。
これらの対応は、四月二十七日に板門店で行われた南北首脳会談で北朝鮮の金正恩委員長が北朝鮮北部の核実験場を五月中に閉鎖すると表明したことを受けたもので、その際、透明性を確保するため韓米の専門家やメディアを招く意向を示していた。
この核施設を廃棄する式典は、アメリカの求めているCVIDに対する北朝鮮のメッセージであると思料する。すなわち完全(complete)かつ検証可能(verifiable)で、不可逆的(irreversible)な核廃棄(denuclearization)に応じる一歩で、国際記者団はCVIDのための立会人であると見ることができるだろう。
アメリカのトランプ大統領はこれを受けて、五月十三日(日本時間)にツイッター上で“North Korea has announced that they will dismantle Nuclear Test Site this month, ahead of the big Summit Meeting on June 12th. Thank you, a very smart and gracious gesture!”(北朝鮮は六月十二日の首脳会談に先立ち、核実験場を解体することを発表した。ありがとう、とても賢明で礼儀正しい姿勢だ)と発言した。
これらのことを踏まえ、以下質問する。
二 一に関連して、今回の朝鮮中央通信の発表では、日本の記者は排除されているが、日本政府はCVIDの「蚊帳の外」に置かれているのではないか。安倍総理は南北首脳会談を受けての記者会見で、「共同宣言では韓国と北朝鮮、米国、中国で会談を進めるという話もあり、日本が蚊帳の外に置かれる懸念はないか」との問いに、「それは全くない」と発言しているものの、かかる日本の記者の排除は日本政府を「蚊帳の外」に置くものであろう。政府の見解如何。
三 政府は今次の朝鮮中央通信の報道を受け、北朝鮮の豊渓里の核実験場を廃棄する式典に日本の記者を立ち会わせるように要請すべきではないか。またそのことを検討すべきではないか。政府の見解如何。
四 安倍総理は、常々、北朝鮮の「一連の動きが核、大量破壊兵器、ミサイルの完全、検証可能、不可逆的な廃棄につながっていくかを注視していきたい」、「北朝鮮が非核化に向けて具体的な行動を取るまで最大限の圧力を維持する基本方針に従い、米韓と連携する」旨の発言をしているが、北朝鮮の豊渓里の核実験場を廃棄する式典に日本の記者や専門家が招かれないのであれば、それが不可逆的であるか否かの判断は他国の記者や専門家からの伝聞により判断せざるを得ない。このような現状では、日本政府はCVIDの「蚊帳の外」に置かれているといわざるを得ないのではないか。政府の見解如何。
五 朝鮮中央通信の報道では、招待される国際記者団は中国、ロシア、米国、英国、韓国の記者と限定されているが、かつての六か国協議の参加国では日本のみが外れ、他方、英国が入ることになる。どのような理由で日本が外され、さらには英国が入ったと考えるのか。政府の見解如何。
右質問する。