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平成三十年六月一日提出
質問第三四三号

第五次エネルギー基本計画の素案に示された「原発依存度は可能な限り低減」との表明と乖離する二〇三〇年度の電源構成比率に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




第五次エネルギー基本計画の素案に示された「原発依存度は可能な限り低減」との表明と乖離する二〇三〇年度の電源構成比率に関する質問主意書


 政府は、現在、エネルギー基本計画の見直し作業を進めており、平成三十年五月には、第五次エネルギー基本計画の素案が公表されている。
 この第五次エネルギー基本計画の素案「はじめに」という前文部分には、このような言葉が書かれている。
 「東京電力福島第一原子力発電所事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興・再生を全力で成し遂げる。政府及び原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、このような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない。」というものであり、原発事故に対する反省、そして被災された方々や避難者の皆様に寄り添う思いが述べられている。
 そしてまた原子力発電に関しては、依存度を「可能な限り低減させる」という決意も記載されているので、次の事項について質問する。

一 この案によれば、二〇三〇年度の電源別構成比率は現行の比率が維持され、原発の電源構成比率も現行どおり二十から二十二%となる。このような政府の動きは、政府の「原発依存度は可能な限り低減」との表明と、実際の行動方針が乖離しているのではないか、むしろこれを見直し、原発依存度をさらに低くする見通しをたてるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
二 政府の「二〇三〇年度の原子力の目標二十から二十二%」は、停止中の原発を数多く再稼働させ、新たな建設を行い、三十基もの原発を動かさなければ達成できない数字であると指摘する識者もいる。そして、新聞各社の世論調査やエネルギー政策に関する「意見箱」を見ても現行の原子力政策への反対意見は強く、原発再稼働はもちろん原発新増設は、民意に真正面からそむくものである。しかし政府の「二〇三〇年度に二十から二十二%」という原子力の電源構成目標は、原発の新増設なしには達せられないという意見がある。そうした中、平成三十年五月十八日に行われた衆議院経済産業委員会における私の質疑に対し、世耕弘成経済産業大臣より、「まずは、政府として、今ある原発を安全最優先の姿勢で再稼働させる、このことに全力を傾けることが重要だというふうに思っておりまして、現時点において原発の新増設ですとかあるいはリプレースといったことは考えていませんので、この素案のような形になっているわけであります。なお、新増設、リプレースを行わなくても、二〇三〇年時点で今我々が示しているエネルギーミックスの姿というのは十分実現可能だというふうに考えております。」という答弁があったが、現時点において原発の新増設・リプレースを考えていないということは、将来的な新増設・リプレースは考えられているのか、政府の見解を明らかにされたい。
三 「まずは、政府として、今ある原発を安全最優先の姿勢で再稼働させる。」という姿勢は、新聞各社の世論調査やエネルギー政策に関する「意見箱」に寄せられている国民からの意見を踏まえれば、国民目線からは大きく乖離をするものであると考えるが、その点については、政府としてどのように考えているのか、見解を明らかにされたい。
四 政府は、二〇三〇年度の将来図を描く「エネルギー基本計画」の改定を検討中だが、経済産業省対外務省・環境省連合のせめぎ合いになっていると報じられている。平成三十年三月一日の日本経済新聞によれば、環境省は、温暖化ガス削減の国際約束達成の政策課題に対応するため原発比率をひとケタ台に縮減する案をまとめたが、発表直前、原発再稼働を目論む経済産業省が反発して、その案を撤回させたという。
 一方、外務省は、「反原発」「脱石炭」の国際世論を踏まえ、「原発依存度を限りなく低減」することを原点にエネルギー外交を進める方向とされる。我が国は、世界唯一の戦争被爆と東京電力福島第一原発事故の当事国であることを重く受け止める必要があると考えるが、その考え方からすれば、原発ゼロをめざす世界の潮流に先んじて、当然、エネルギー基本計画に原発ゼロ方針を明記すべきであると考えるが、この点について、経済産業省、外務省及び環境省、三省におけるそれぞれの見解を明らかにされたい。
五 脱原発・脱石炭の世界の潮流を踏まえれば、原発や石炭火力を抑制することを主張する外務省及び環境省の考え方の方が各国の支持を得られ、責任あるエネルギー政策であると思われる。政府は、第五次エネルギー基本計画には原発ゼロ方針とともに再生可能エネルギーへの全面転換の方針と実現への道筋を明示する必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 エネルギー基本計画は、エネルギー政策基本法に基づいて策定されるが、実際の事務手続は、経済産業省の主導によって検討が行われ、閣議を経て国会へ単に報告されている。しかしながら、エネルギー基本計画は、国の命運にかかわる極めて重要な計画であることから、その手続きを見直し、経済産業省、外務省及び環境省の「合意」が得られた後、閣議を経て、国権の最高機関である国会の「承認」を必要とするべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また上記のかたちのように、エネルギー政策基本法の手続きを見直すまでの間、内閣官房長官の指導によりそのような運用をする必要があると考えるが、如何か。政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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