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平成三十年七月十七日提出
質問第四五二号

国際海底ケーブルの保護についての法制に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




国際海底ケーブルの保護についての法制に関する質問主意書


 現在、国際的な音声やデータ通信の九十九%以上が国際間の海底ケーブルを通じて伝達されている。ほとんどの国民が恩恵に与っているインターネットも海底ケーブルの存在がなければ成立しない技術である。例えば、海外との電子メールのやり取りには海底ケーブルによる通信網の介在が欠かせない。
 しかしながら、わが国をはじめ多くの国で領海外でのケーブルの保護についての法整備は不十分で、どのように海底ケーブルを守っていくべきかの議論は急務である。
 従来、海底ケーブルによる通信は漁船の網や航行中の船舶の錨による損壊、地震などの大規模災害により影響を受けてきた。二〇一一年の東日本大震災の際には、日本とアメリカを結ぶ海底ケーブル網の複数の部分が破断し影響が生じたことが報告されている。
 二〇一三年、エジプト当局は海底ケーブルを切断したダイバーを現行犯逮捕した。この事件では海底ケーブルの切断によりエジプトおよび周辺のインターネット速度が大きく低下した。二〇一八年四月には、アフリカのモーリタニアで海底ケーブルの切断により、モーリタニア全域において二日間もインターネットに接続できなくなった。
 このような事例も踏まえ、国際通信網の寸断・混乱を狙った攻撃の危険性も指摘されてきており、これまであまり検討が行われてこなかった法制面も含め、海底ケーブルの保護に注目が集まっている。
 「サイバー攻撃と自衛権との関係に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一八九第七一号)では、「いわゆるサイバー攻撃と自衛権の行使との関係については、個別の状況に応じて判断すべきものであり、一概に申し上げることは困難であるが、その上で、一般論として申し上げれば、武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられる」「その対処の方法については、当該武力攻撃の状況に応じて個別具体的に判断する必要があ」ることが示されている。
 わが国も締結国の一つである「海洋法に関する国際連合条約」(「国連海洋法条約」という。)は、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚、公海におけるケーブル敷設の自由を全ての国に認めているが、同時に留保が付けられており、EEZ、大陸棚において沿岸国は制限を課すことができる。
 国連海洋法条約第百十三条では、「いずれの国も、自国を旗国とする船舶又は自国の管轄権に服する者が、故意又は過失により、電気通信を中断し又は妨害することとなるような方法で公海にある海底電線を損壊し、及び海底パイプライン又は海底高圧線を同様に損壊することが処罰すべき犯罪であることを定めるために必要な法令を制定する」と示されているが、わが国においては、かかる立法はなされていないと考える。
 これらのことを踏まえて、以下質問する。

一 日本国籍の船舶が故意および過失で国際間のわが国の企業などが所有する海底ケーブルの損壊を行った場合、その船舶や乗組員を処罰することはできるのか。できるとすればどのような法令に基づくのか。
 あ) わが国の領海内で海底ケーブルを破壊した場合
 い) わが国のEEZ内で海底ケーブルを破壊した場合
 う) わが国の大陸棚で海底ケーブルを破壊した場合
 え) 公海で海底ケーブルを破壊した場合
二 日本を旗国としない船舶が故意および過失で国際間のわが国の企業などが所有する海底ケーブルの損壊を行った場合、その船舶や乗組員を処罰することはできるのか。できるとすればどのような法令に基づくのか。
 あ) わが国の領海内で海底ケーブルを破壊した場合
 い) わが国のEEZ内で海底ケーブルを破壊した場合
 う) わが国の大陸棚で海底ケーブルを破壊した場合
 え) 公海で海底ケーブルを破壊した場合
三 電気通信事業法では、ケーブル敷設のための届出手続、保護区域、ケーブル敷設・修理船の周囲での航行禁止などについて規定しているが、これらの規定は領海内のケーブルを対象にしたものと解され、わが国のEEZや大陸棚、公海を通過する海底ケーブルには適用されないという理解でよいか。
四 三に関連して、電気通信事業法はわが国の領土に位置する陸揚局を終端あるいは中継点として接続しない海底ケーブルの敷設・修理に関するものには適用されないという理解でよいか。
五 わが国とアメリカとの間の海底ケーブルの本数は十数本と推定されるが、このうちの一本ないし数本、全部が破壊された場合のわが国とアメリカとの国際電話、またインターネット上で生じる障害についてどの程度の障害になるのか、政府はその試算・被害想定を行ったことはあるのか。また被害時の回避策について検討しているのか。政府の見解如何。
六 「武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられ」、「その対処の方法については、当該武力攻撃の状況に応じて個別具体的に判断する必要」があるとされるが、物理的に複数の海底ケーブルを破壊し、わが国のサイバー空間に混乱を生じさせようとする者が次に掲げる行為を行った場合、自衛権の発動の要件になり得るのか。
 あ) わが国の領海内で海底ケーブルを破壊した場合
 い) わが国のEEZ内で海底ケーブルを破壊した場合
 う) わが国の大陸棚で海底ケーブルを破壊した場合
 え) 公海で海底ケーブルを破壊した場合
七 国連海洋法条約の本旨は海洋の利用の自由に関するものであり、海底ケーブルの保護、管理を目的とするものではなく、かかる規定はわが国が自ら立法化するほかない。海底ケーブルの破断によるわが国の電話、インターネットへの影響は計り知れず、経済活動への重大な影響も生じ得る。政府はわが国の領海外にも適用し得る海底ケーブルの保護、管理についての法令の立法化を検討すべきではないか。政府の見解如何。

 右質問する。



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