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令和元年六月十二日提出
質問第二一八号

横須賀での石炭火力発電所建設計画に関する質問主意書

提出者  早稲田夕季




横須賀での石炭火力発電所建設計画に関する質問主意書


 集中豪雨や洪水、干ばつといった異常気象が世界的に多発し、気候変動問題が深刻化している中、二〇二〇年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み「パリ協定」に基づく気温上昇「一・五〜二℃目標」の達成と脱炭素化の早期実現は喫緊の課題である。気候変動に関する政府間パネル、IPCCの「一・五℃特別報告書」によれば、このままいけば地球の平均気温は早ければ二〇三〇年には工業化以前に比べて一・五℃上昇するとされ、この先十年の二酸化炭素削減が鍵であることも明らかになっている。現在、世界は「脱石炭」に向かっており、イギリス、フランス、カナダ、イタリアなど世界二十八カ国が、遅くとも二〇三〇年までに国内の石炭火力発電所をすべて廃止することを決定、また金融機関や投資家などが石炭関連産業から投融資を撤退する一方、再生可能エネルギーへの投融資が大きく伸びている。ところが日本では、二〇一二年以降に計画された石炭火力発電所が二十基以上もあり、世界的な「脱石炭」の流れに明らかに逆行していると言わざるをえない。
 神奈川県においても、株式会社JERAによる(仮称)横須賀火力発電所新一・二号機建設計画(以下、「本事業」とする。)があり、新規建設に向けた本格工事が今年八月一日にも始まるとされている。そこで本事業に関連して、以下質問する。

一 二〇一八年八月十日、本事業の環境影響評価準備書に対する環境大臣意見が公表された。この意見書において中川雅治環境大臣は、本事業により「追加的な二酸化炭素の年間排出量は七百二十六万トン程度にも及ぶことから、環境保全面からは極めて高い事業リスクを伴う」ものであるとし、事業者に対しては、そのことを改めて自覚し、「二〇三〇年度及びそれ以降に向けた本事業に係る二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案して検討することが重要」だと指摘した。こうした指摘があったにもかかわらず、株式会社JERAは、本事業の着工を八月から開始すべく準備工事を進めている。現時点で国は、本事業が環境保全面から妥当であると判断されているのか、見解をあきらかにされたい。
二 政府は二〇一六年五月、二〇五〇年までに温室効果ガス排出量の八十%削減を目指すとの目標(以下「二〇五〇年目標」という。)及び、二〇三〇年度に二〇一三年度比で二十六%削減するとの目標(以下「二〇三〇年目標」という。)を、目標達成のための措置とともに地球温暖化対策計画として閣議決定済みである。問一に示したとおり、環境大臣意見では「二〇三〇年度及びそれ以降に向けた本事業に係る二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討すること」と述べているが、株式会社JERAは二〇三〇年目標及び二〇五〇年目標に整合する道筋を、具体的にどのように政府に示したのかあきらかにされたい。
三 本事業の環境影響評価では、火力発電所リプレースに係る環境影響評価手法の合理化に関するガイドライン(二〇一二年)が適用されている。株式会社JERAの親会社である東京電力フュエル&パワー株式会社が、本事業が石油を燃料とする三〜八号機及び軽油・ガスを燃料とする非常用設備一・二号ガスタービン発電設備を廃止し、新たに石炭を燃料とする発電設備(出力約百三十万kW)を設置することから、いわゆる「改善リプレース」であるとして、環境影響評価の調査の一部が省略されて手続きが進められてきた。そして、三〜八号機の六基(石油)と、ガスタービン二基を「既設稼働時(現状)」としたうえで、既設稼働時の「現状」とはいつの時点であるかを示さないまま、新設する石炭火力とを比較し、環境負荷の低減を謳っている。
 しかし、二〇〇一年時点で、設置されている発電所設備の七割で恒常的な稼働が行われておらず、二〇〇五年までに三・四号機を除くすべての発電所が「長期計画停止」の対象とされ、二〇一〇年にはすべての発電機が「長期計画停止」となった。また東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故後、東京電力は横須賀火力発電所の再稼働を目指したが、再稼働を実現することができたのは二号ガスタービンと三・四号機のみであった。そしてこれらの発電機も二〇一三年には再び長期計画停止となっているのが実情である。
 (1) 横須賀火力発電所の一九八〇年以降の二酸化炭素排出量の推移を、政府が把握しているのであれば経年ごとに明らかにされたい。
 (2) 本件既設発電所の稼働時(現状)について、いつの時点の排出量を「現状」として適用したのか、また、その時点を「現状」とした根拠を明らかにされたい。
 (3) 燃料を石油から石炭に変更することで、発電における温室効果ガス排出係数が六百二十七g/kWhから七百四十九g/kWhと増加することは事業者が環境影響評価準備書で示しているとおりである。そこで、本事業を「改善リプレース」とする妥当性について、政府のお考えを示されたい。
 (4) 新規発電所の建設・稼働によって、少なくとも過去また二十年間の排出を超える二酸化炭素排出量が見込まれるにもかかわらず「妥当」だと判断しているのであれば、環境影響評価手続きの審査過程において、どの時点で妥当だと判断したのかについても示されたい。その場合の設備利用率をどのように評価したのかを明らかにされたい。
四 二〇一九年二月十五日、経済産業省は、「中部電力株式会社、東京電力フュエル&パワー株式会社、株式会社JERAから提出された『事業再編計画』について、産業競争力強化法第二十三条第二項の規定に基づき審査した結果、同法第二条第十一項に規定する事業再編を行うものとして、同法で定める認定要件を満たすと認められるため、『事業再編計画』の認定」を行ったと公表した。この認定により、中部電力株式会社、東京電力フュエル&パワー株式会社、株式会社JERAの会社分割に伴う不動産の所有権移転登記に係る登録免許税の軽減措置及び指定金融機関(株式会社日本政策投資銀行)による長期・低利の大規模融資を受けることが可能になると承知している。報道によれば、本事業の開発資金として調達された二千七百二十億円の融資は、日本政策投資銀行ほか五つの銀行が加わって行ったとされるが、日本政策投資銀行による本事業への融資額を示されたい。
五 本年五月十五日に三菱UFJフィナンシャル・グループが環境・社会ポリシーフレームワークを改定し、石炭火力発電への融資方針を強化したことは、数日前にシンガポールの三大銀行が石炭火力発電への新規融資停止を表明したことに続く動きで、世界の主要な石炭火力発電への資金提供者である三菱UFJフィナンシャル・グループの方針転換は、金融界のエネルギー問題への取り組みにおいて大きな変化を示唆するものであり、国内外の環境NGO八団体からも歓迎された。日本政策投資銀行も、同様の方針転換を速やかに行うべきではないか。

 右質問する。



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