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令和元年八月一日提出
質問第一二号

鹿児島県大島郡瀬戸内町嘉徳海岸侵食対策事業に関する質問主意書

提出者  川内博史




鹿児島県大島郡瀬戸内町嘉徳海岸侵食対策事業に関する質問主意書


 奄美大島南部に位置する瀬戸内町嘉徳は海、川、浜が有機的に繋がっており、山と川と里と海が自然のまま残る、大変貴重な集落と海岸であることは前回質問主意書で述べた通りである。アオウミガメ・アカウミガメが産卵のために毎年上陸しており、過去にはオサガメ(絶滅危惧TA類)も上陸している。ウミガメの産卵のための上陸は、産卵時期であるちょうど現在も嘉徳海岸で複数確認でき、実際に工事予定区域でのウミガメの産卵が確認できたことから鹿児島県の判断で工事は一時中断している状況にある。鹿児島県は、ウミガメ保護条例を制定し、県をあげてウミガメを保護しようと取り組んでおり、この度の工事を中止するという判断は条例を定めた県の意図に沿うものである。
 しかし、ウミガメの孵化後、本件護岸工事を再び開始してしまえば、来年からウミガメが上陸することは極めて困難になり、県がウミガメ保護条例を定めたそもそもの趣旨にそぐわない結果を生じさせてしまうことは明らかである。また、ウミガメの多数上陸する自然のままの砂浜を保護することは、鹿児島県が進めている奄美大島の世界自然遺産登録に向けた動きに沿うものである。一方で、嘉徳海岸で護岸工事を進めることは、ウミガメの上陸を県自らが阻むことであり、世界自然遺産登録の障碍ともなり得ると思われる。
 この度の工事一時中止を踏まえ、県が護岸工事を進めることは、県がウミガメ保護条例を定めた趣旨、世界自然遺産登録を目指していることと矛盾する行動であると考えている。以上に鑑み、以下質問する。

一 特に自然度が高く奄美大島の自然生態系を特徴的に有している本件嘉徳海岸及び嘉徳川について、推薦地域はもとよりバッファーゾーンからも外し、さらに開発を推し進めていくことは、開発を理由に自然遺産の保護範囲を縮小するもので、自然遺産登録の要件である完全性を損なうものとして、世界自然遺産登録に深刻な悪影響を及ぼし得る問題があることについて、どのように考え、どのように対応していくのか、政府の回答を求める。
二 鹿児島県が作成した実施設計図によると、既存の砂丘から十メートルほど前に護岸建設を計画しており、その護岸の前面に盛土と植栽を行うとなっている。その位置は多くのウミガメの産卵地になっており海洋生物学者の調査(令和元年七月に実施)によるとウミガメは砂丘の真下に産卵するため、計画されている護岸設置地が多くの産卵場所だということは統計的に証明されている。このことについてどのように考え、鹿児島県が作成した実施設計図はEco−DRR(Ecosystem based-Disaster Risk Reduction)(生態系を活用した防災・減災)を踏まえた取り組みと言えるのか、政府の見解を求める。
三 前回質問主意書に対する答弁書では、政府は嘉徳海岸におけるコンクリート護岸工事は、「Eco−DRRの考え方を踏まえた取組といえるもの」と答弁しているが、政府は嘉徳海岸におけるコンクリート護岸工事はEco−DRRそのものであると断言するのか、しないのか、政府の明確な回答を求める。また長さ百八十メートル、高さ六・五メートルの護岸建設には、何トンのコンクリートが必要か、また同量のコンクリートを使ったEco−DRRを踏まえた取り組みの事例はあるのか、政府が承知するところ、明らかにされたい。
四 鹿児島県による侵食対策検討委員会では、専門家や地元関係者は侵食の原因、砂浜の回復、侵食対策の工法、自然環境への影響について必要な議論をされたとあるが、具体的にどのような調査をしたのか、専門家が関わったEco−DRR工法の事例はあるのか、政府の承知しているところ、回答を求める。
五 Eco−DRRの活用は、平成三十年四月に閣議決定された環境基本計画に明記されている。嘉徳海岸は環境省によれば奄美大島で唯一の非サンゴ礁性砂浜であり、入江になっており、ポケットビーチと呼ばれる形状である。同じような場所で侵食後にEco−DRR工法での対策事例はあるか、また嘉徳海岸の侵食対策の工法と類似のものとして用海岸をあげているが用海岸は非サンゴ礁性砂浜でもなく、ポケットビーチと呼ばれる形状でもないことは明らかである。奄美大島内で嘉徳海岸と同様にポケットビーチである小湊海岸の護岸建設後のモニタリング調査はされているか、政府の承知しているところ、併せて明らかにされたい。
六 嘉徳海岸は平成二十六年の侵食から、わずか三〜四年で砂浜が回復した。このことについては鹿児島県も認めている。不可解な点は侵食が起こるまで海に繋がる嘉徳川の河口で平成二十五年から浚渫工事が行われていたことであるが、その影響で砂の供給バランスが崩れ背後に家屋等がない河口辺りとその沖合にだけに砂州が溜まるようになった。砂の供給が途絶えた墓地前の海底に砂州がなくなり、台風時の波のエネルギーが大きく影響したことは確かである。令和元年五月八日に住民が県の土木事務所で行った面談によると、砂の供給バランスが崩れ河口側に砂が溜まっていたことは写真を見ながら県も認めた。嘉徳川河口の浚渫工事について、住民や環境保護団体が瀬戸内町に対し開示請求を行ったが、平成二十七年からの情報しか開示されなかった。さらに、これについては検討委員会でも議論されなかったが、大きな原因の一つとして議論するべき事柄だと認識している。平成二十五年からの情報を明らかにすべきだと考えるが、その点について政府の見解を求める。

 右質問する。



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