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令和三年二月九日提出
質問第三七号

カジノ(IR)の日本誘致に関する質問主意書

提出者  江田憲司




カジノ(IR)の日本誘致に関する質問主意書


 カジノ(民間賭博)の日本誘致に断固反対する立場から、以下、質問する。

一 私は、「観光立国」には賛成だが、欧米でも東アジアでも、既にカジノ事業は過当競争で飽和状態である。今更、日本に誘致しても、どこの国の人が「カジノ目当て」「カジノ目的」で訪日するのか。考えられるのは中国の富裕層だが、中国人でカジノをやりたいなら、中国語が通じるマカオか、近場の韓国に行くと考える。わざわざ高い旅費等を払って日本には来ない。政府の見解を問う。
二 二〇二〇年八月、中国は、海外のカジノが自国民の財産や安全を脅かしているとして、カジノがある外国都市への渡航を制限するブラックリスト制度の創設を公表した。念頭には、海外のカジノが汚職や腐敗といった犯罪の温床になっているとの懸念があるとも言われる。この制度について政府として把握していれば答えられたい。
 また、これにより、来訪者の大半を中国人富裕層に依存する東アジアのIR(カジノ)経営は、コロナ禍による影響に加え、大きな打撃を受ける可能性がある。過去に中国政府は、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システムの配備を理由に韓国への渡航制限をした例もあり、この制度を政治利用するおそれもある。この制度により、ますます、日本にカジノ(IR)を設けても、外国人、特に中国人観光客の来場は期待できないのではないか。政府の見解を問う。
三 世界的に有名なラスベガスでも、昨今はカジノから他のエンターテインメントに比重が移っていると聞く。直近五年間で、ラスベガスへの観光客のうち、外国からの観光客の占める割合について政府として把握していれば答えられたい。
四 観光庁の調査では、訪日理由の上位は「日本食」や「温泉」「古民家等の街並み」などが占めている。コロナ禍以前に、日本へのインバウンド、外国人観光客が増えていたのは、日本の伝統・文化、自然等、他の国にない、その魅力に惹かれてのことではないか。政府の見解を問う。
五 政府は、IR(カジノ)は「成長戦略の目玉」(安倍晋三前首相)と言うが、IR(カジノ)には「カニバリゼーション(共食い)現象」があるとされる。大規模小売店舗の進出により、過去、地元商店街が「シャッター通り」化したように、まるで「蟻地獄」のように地元、周辺地域の消費を吸い上げる。米国ニューハンプシャー州は、カジノ開業で周辺地域から四十%〜六十%の「消費の吸上げ」が発生するとの理由でカジノ導入を断念した。政府は、こうした負の経済効果を試算しているか。また、IRを申請する自治体に、その認可に当たり、その試算を求めるか。
六 カジノには、ギャンブル依存症の飛躍的増大、反社会的勢力と結びついた治安や風紀の乱れ、青少年の教育への悪影響等々の弊害が指摘される。政府は、こうした負の社会的コストを試算しているか。
 韓国では、カジノ導入により七・七兆円の損失が生じたとの試算があるし、米国ニューハンプシャー州の報告書では、その社会的コストは「病的ギャンブラー」一人当たり五千百四十四ドルという推計がされている。
 およそ、プロジェクト実施の可否の判断に当たっては、費用便益分析等を行うのは当然のことである。カジノ誘致に動いている政府や関係自治体は、こうしたカジノの負のコストを含めたIRの総合評価をすべきではないか。政府の見解を問う。
七 政府は「世界最高水準のカジノ規制」(安倍晋三前首相)と胸を張るが、法規制では、週三回(月十回)まで入場可となっている。週三回もカジノ通いする人は、既にギャンブル依存症と言っても過言ではない。韓国では「内国人利用可のカジノ」は「公営」に限り、手軽にカジノを利用できる周辺の地域住民は月一回しか入場を認めていない。また、「大都市(百万都市)」から車で二・五時間以上という設置基準も設け、日本より厳しい規制をしている。これらに比し、日本のカジノ規制のどこが「世界最高水準」なのか。政府の見解を問う。
八 「IR中核施設の設置要件」をみると、大阪市や横浜市といった大都市にしか誘致できない基準となっているのではないか。
 例えば、国際会議場の収容人数に応じて展示場の面積が決められているが、会議場六千人以上の場合は、展示場面積が二万平方メートル以上必要となる。会議場は国内最大である東京国際フォーラムやパシフィコ横浜でも収容人数は約五千人、また、二万平方メートル以上の展示場となると、東京ビッグサイトや幕張メッセなど全国で六カ所程度にすぎない。しかも、その両方の要件を満たす必要がある。
 さらに、ホテルの客室総床面積は十万平方メートル以上とあるが、単純計算で五十平方メートルの部屋が二千室必要となる。帝国ホテル東京でも三万九千平方メートル、ホテルニューオータニ東京でも四万四千平方メートル、客室数も平均約千五百室にとどまる。
 以上の基準に照らせば、獣医学部新設で加計学園しか通れない「穴」をあけたように、カジノについては横浜市と大阪市しか通れない「穴」をあけようとしているのではないか。政府の見解を問う。
九 赤羽国務大臣は、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」に対する衆議院本会議(二〇一六年十二月十五日)での自身の賛否について、衆議院内閣委員会(二〇一九年十一月二十九日)において、「社会的政策の側面の懸念と経済的政策のメリットの、なかなかはかりがたいものがあったので、私は、本会議、賛否は保留して、棄権をしました。」と答弁している。赤羽大臣はIR担当大臣として、その当時の考えと変わりないか。変わったとすればその理由は何か。
十 赤羽一嘉国務大臣は、私との衆議院内閣委員会での質疑(二〇一九年十一月二十九日)において、「私、別に(カジノ)推進派という立場でこの役職についているわけではございません。基本的には中立な立場」「江田先生と、多分私、考えはよく似ていると思う 」と答弁したが、
 1 その答弁の趣旨如何。
 2 IR設置の便益よりも費用の方が大きい場合は認可しないということでよいか。
 3 菅義偉首相も赤羽大臣答弁と同じ考えか。

 右質問する。

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