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令和三年六月十一日提出
質問第二一一号

原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書

提出者  山崎 誠




原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書


 電気事業法施行規則第四十五条の二十一の二「一般送配電事業者は、当該通知に従い、賠償負担金をその接続供給の相手方から回収しなければならない。」に基づき、一般送配電事業者は託送料金に賠償負担金を上乗せして回収している。賠償負担金は、次の法令及び閣議決定等により規定されている。
 電気事業法施行規則第四十五条の二十一の三では「賠償負担金」を「(前略)原子力損害(原子力損害の賠償に関する法律第二条第二項に規定する原子力損害)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力発電事業者が平成二十三年三月三十一日以前に原価として算定することができなかったものを、一般送配電事業者が行う接続供給によって回収しようとするとき」の資金と規定している。
 原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下、「支援機構法」という)第四十一条第一項第一号では、「当該原子力事業者に対し、要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金を交付すること」を「資金交付」と規定している。
 二〇一六年十二月二十日閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」では、その二十六ページで、「国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。」としている。
 さらに注十四で「回収する金額の規模は、現在の一般負担金の水準をベースに、一KW当たりの単価を算定した上で、これを前提に、(略)二〇二〇年前の二〇一九年度末時点までに納付した又は納付することになると見込まれる一般負担金の合計額を控除した約二・四兆円とし、これを上限とする。」とし、「資金の回収に当たっては、適正な託送料金水準を維持していく観点から、年間約六百億円程度を、二〇二〇年度以降、四十年程度にわたって回収していくものとする。」と書かれている。
 これら賠償負担金の規定等につき、以下質問する。

一 東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、事故と言う)以前の電気料金は、規制料金であり法令及び買電契約約款等の手続きに基づき適正に支払われたものである。一方、昨年十月から導入された賠償負担金は事故前の「原子力損害(原子力損害の賠償に関する法律第二条第二項に規定する原子力損害)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力事業者が平成二十三年三月三十一日以前に原価として算定することができなかった」分を全需要家に負担させるものである。全需要家が過去分の電気料金を遡及して負担しなければならない法的根拠を示されたい。
二 電気料金の算定における過去分の保険料等の算入決定についても、電気料金審査専門小委員会において算定・算入の判断をしており全需要家に責任はない。したがって、全需要家は算定できなかった過去分を電気料金で負担する義務はないのではないか。見解を問う。また、義務があるとすれば、その法的根拠を示されたい。
三 事故後に保険金等を「備えておくべきだった」として、「過去の保険料」を電気料金で需要家に請求することのできる法的根拠を示されたい。
四 事故前に「原価として算定することができなかった」費用を、二〇二〇年度から全需要家に託送料金で負担させることは、本来、託送料金の原価ではない「原子力損害(原子力損害の賠償に関する法律第二条第二項に規定する原子力損害)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力事業者が平成二十三年三月三十一日以前に原価として算定することができなかった」費用を算入することになる。これは総括原価方式の原則に反するのではないか。見解を問う。また、反しないとするならば、その理由を示されたい。
五 そもそも、政府は事故を起こした責任は誰にあると考えているのか。また、事故による損害の賠償責任は誰が負うと考えているのか。見解を問う。現在の原子力損害の賠償負担金の仕組みでは、全需要家に事故責任と損害賠償責任を負わせる仕組みとなっているが、その法的根拠を明確に示されたい。仮に、誰にも責任がないとすれば「備えておくべきだった資金」を全需要家が負担する法的根拠を示されたい。
六 今後、原子力発電による事故が起きて原子力損害が生じた場合に備える責任は誰にあるのか。見解を問う。「備えておくべきだった資金」をすべての需要家が負担する根拠はないと考えるが、仮に全需要家に責任があるとするならば、その法的根拠を示されたい。
七 そもそも事故前に「原子力損害の賠償に備えておくべきであった資金」とは何かを明確に示されたい。電力システム改革貫徹のための政策小委員会のとりまとめによれば、福島事故前に確保されておくべきであった賠償への備えは三・八兆円である。これは事故前の費用である。一方、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の借入金は、事故後に発生した費用である。この全く意味も趣旨も違うものを支援機構法でいう「一般負担金」として、混同させて負担、回収することは法令に反するのではないか。見解を問う。法令に反しないとするならば、その法的根拠を示されたい。

 右質問する。

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