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令和三年六月十一日提出
質問第二三二号

東芝の第一八一期定時株主総会に関する調査報告書及び国会質疑における経産省答弁に関する質問主意書

提出者  松平浩一




東芝の第一八一期定時株主総会に関する調査報告書及び国会質疑における経産省答弁に関する質問主意書


 株式会社東芝(以下「東芝」という)は、二〇二一年六月十日、二〇二〇年七月開催の第一八一期定時株主総会が公正に運営されたか否かに関する三名の調査者による調査報告書(以下「本件報告書」という)を公表した。本件報告書は、東芝の同株主総会が「公正に運営されたものとはいえない」と結論付けるとともに、東芝が経済産業省と連携し株主の権利行使に関し「不当な影響」を与えたと明記している。具体的には、「東芝は、本定時株主総会におけるいわゆるアクティビスト対応について経産省に支援を要請し、経産省商務情報政策局ルートと緊密に連携し、改正外為法に基づく権限発動の可能性を背景とした不当な影響を一部株主に与え、経産省商務情報政策局ルートといわば一体となって株主対応を共同して行っていた。」(本件報告書一二〇頁)等としている。なお、本件報告書によると、経産省商務情報政策局ルートとは、経産省大臣官房政策立案総括審議官であったK2審議官及び経産省商務情報政策局情報産業課をいう。
 以上を踏まえ、以下質問する。

一 本件報告書に先立つ二〇二一年五月十二日の衆議院経済産業委員会における松平浩一委員の質疑において、同委員から、東芝の二〇二〇年株主総会での米ハーバード大学基金運用ファンド(以下「HMC」という)の議決権行使に関し経済産業省の関与があったかについて問うたところ、平井政府参考人は、「経済産業省から水野元参与に対して、報道にあるような個別投資家の議決権行使に対する働きかけを依頼したことはございません」と答弁(以下「本件答弁」という)している。
 しかしながら、本件報告書においては、東芝は、経産省商務情報政策局(主に本件報告書上の「K1課長」)を通じて、HMCに議決権を行使しないよう水野元参与(本件報告書上の「M氏」)に事実上交渉を依頼し、同参与はHMCと接触し、結果としてHMCは議決権を行使しなかったと認定されている。本件報告書には、随所に、K1課長がM氏にHMCとの交渉・働きかけを依頼していると思われるメール等のやり取りの記載があり、「東芝が、(省略)経産省といわば一体となって、具体的にはK1課長を介して、経産省参与の地位にあるM氏に対してHMCと交渉を行うことを事実上依頼した」(本件報告書一一七頁)とされている。
 このような本件報告書の内容を踏まえれば、本件答弁は事実に反する、または少なくともその可能性が非常に高いと思料するが、本件答弁を維持するか、修正するかについて政府の見解を示されたい。なお、本質問はあくまでも本件答弁と本件報告書の内容を比較しての政府の見解を問うものであるから、本件報告書を受けて今後東芝が行う対応等に関わりなく現時点での政府の回答を求める。
二 外国為替及び外国貿易法は二〇一九年十一月に改正され、同改正は二〇二〇年五月八日に施行された(以下「改正外為法」という)。これは、投資促進と安全保障上重要な技術情報の流出防止とを調和させる趣旨のものであり、規制を厳格化する改正として、行為時事前届出制度の拡大(代表者等一定の関係のある者の取締役選任議案への同意等が事前届出の対象となった)がある。
 1 改正外為法の趣旨は、アクティビストの排除をすることを目的としたものではないという理解でよいか、政府の見解を示されたい。
 2 本件報告書は、調査により確認できた詳細なメール等の資料を基に、「商務情報政策局ルート及び東芝は、エフィッシモの株主提案権の行使表明を受けて、(省略)@安全保障貿易管理政策課による正式ルートの改正外為法に基づく手続きの進行を巧みに活用し、これに加えて、A東芝による「太陽政策」とB商務情報政策局ルートによる趣旨不明瞭な「会話」を緊密に連関させることで、エフィッシモの株主提案を取り下げさせようとした。」(本件報告書九十七頁)と認定している。
  その上で、「東芝及び商務情報政策局ルートがいわば一体となって行った一連の行為は、エフィッシモを排除すべきアクティビストであると決めつけることから出発して、改正外為法上の当局の権限を発動させ、あるいは、かかる権限を背景とした働きかけによって、エフィッシモの株主提案に対処しようとしていたものと評価できる。」(本件報告書一〇四頁)とし、「少なくとも改正外為法の趣旨を逸脱する目的で、不当に株主提案権の行使を制約しようとするものであると評価できる」(本件報告書一〇七頁)と結論付けている。
  本件報告書での当該認定事実は、政府の認識する事実と同様であるか。当該認定事実が政府の認識する事実と同様である場合、上記評価についての政府の見解を示されたい。仮に当該認定事実が政府の認識する事実と同様であるかどうか不明である場合、政府による詳細調査を要求する。なお、本質問はあくまでも本件報告書への政府の見解を問うものであるから、本件報告書を受けて今後東芝が行う対応等に関わりなく現時点での政府の回答を求める。
三 本件報告書では、「株主提案を取り下げようとした一連の動きは、随所に法令等に抵触する疑いのある行為すら見受けられ」(本件報告書一〇七頁)ると指摘されているところ、本件報告書の調査者である中村隆夫弁護士によれば、国家公務員法の守秘義務違反の疑いがあるとの見解が示されている(二〇二一年六月十日に行われた調査者による記者会見)。
 この点、本件報告書においては、「K1課長がエフィッシモから入手した協働エンゲージメントを求めるレターに関する情報を東芝に漏洩した」(本件報告書一〇四頁)との認定事実がある。当該認定事実が政府の認識する事実と同様であれば、当該行為は、国家公務員法第百条第一項に規定する守秘義務違反であると思料するが、政府の見解を示されたい。仮に当該認定事実が政府の認識する事実と同様であるかどうか不明である場合、政府による詳細調査を要求する。
四 本件報告書は、東芝が株主総会の対処方針を菅官房長官(当時)に説明したと推認している。具体的には、「(二〇二〇年七月開催の第一八一期定時株主総会前の)七月二十七日朝に車谷氏の部下である加茂氏が、菅官房長官との朝食会に出席し、持参した資料に基づき菅官房長官に説明し、菅官房長官から「強引にやれば外為で捕まえられるんだろ?」などとコメントされていた」(本件報告書六十一頁)、「七月二十七日午前十時頃、K2審議官が菅総理大臣に対して、東芝に関する報告を行ったことが窺われる」(本件報告書八十六頁)等と指摘している。
 しかしながら、菅総理大臣は、この件に関する二〇二一年六月十日の記者からの質問に対し、「全く承知していない。そのようなことはあり得ない」と否定している。
 当時官房長官であった菅総理大臣は、本件報告書で指摘されている五月十一日と七月二十七日の朝食会に出席したか。出席していれば東芝担当者とのやり取りの内容について政府の見解を示されたい。
五 梶山経済産業大臣は本件報告書公表の翌日である六月十一日の定例記者会見で、まずは東芝の本件報告書を受けての対応を待ちたいと述べた。しかし、既に指摘したように、本件報告書においては、株主権の行使の制約について経産省幹部の関与の指摘、水野元参与への依頼について本件国会答弁と矛盾する事実の指摘、さらには随所に法令等(国家公務員法等)に抵触する疑いのある行為があるとの指摘がなされている。
 本件報告書の記載が真実であるとすれば、行政の公正や信頼を大きく損なうものであり、もはや東芝のガバナンスの問題に留まらない問題である。本件報告書記載の事実関係が政府の認識する事実と異なるのであれば、民間企業である東芝の対応を待つことなく、どの部分がどのように異なるのか政府から国民に説明をすべき責任があると思料するが、改めてどのように対応するのか、政府の見解を示されたい。

 右質問する。

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