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令和四年一月二十七日提出
質問第九号

「検査を行わなくとも臨床症状で新型コロナウイルス感染者と診断してよい」との方針変更に関する質問主意書

提出者  山本太郎




「検査を行わなくとも臨床症状で新型コロナウイルス感染者と診断してよい」との方針変更に関する質問主意書


 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は本年一月二十四日、「新型コロナウイルス感染症の感染急拡大時の外来診療の対応について」との事務連絡(以下「当該事務連絡」という。)を各自治体に向けて発出した。当該事務連絡は、今後感染がさらに継続して急拡大した場合に備え、患者の症状や重症化リスク等に応じて、適切な医療の提供が確保されることを目的として、各自治体(都道府県又は保健所設置市)の判断で行うことを可能とする種々の対応を示したものと理解しているが、当該事務連絡による方針変更(以下「当該方針変更」という。)は、各自治体、医療機関はもとより広く国民に不安と混乱を生じさせかねないと懸念される。
 以上を踏まえて当該方針変更に関する岸田内閣の認識を確認すべく、以下質問する。

一 当該事務連絡によって「自治体(都道府県又は保健所設置市)の判断で下記の対応を行うことが可能であることをお示しします。」として示された各々の対応について、これまで可能としていなかった理由は何か。その根拠となる法令の条文の該当箇所を明示するとともに明確に説明されたい。
二 当該事務連絡の発出によって、いかなるメリットおよびデメリットが生じ得るか。現時点で岸田内閣として想定しているものをそれぞれ網羅的かつ具体的に列挙されたい。
三 当該事務連絡の「地域の感染状況に応じて、診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合」では、「発熱等の症状がある場合でも、重症化リスクが低いと考えられる方については、医療機関の受診前に、抗原定性検査キット等で自ら検査(以下「自己検査」という。)して」受診することを呼びかけるとしている。現在、診療・検査医療機関を有症状者が受診した際、医師が必要と認めた場合に行われる新型コロナウイルス感染症に対するPCR検査もしくは迅速抗原検査(以下「PCR等検査」という。)にかかる費用については公費負担とされているところ、当該方針変更によって呼びかけられる自己検査にかかる費用は全額自己負担となるのか、あるいは後日全部もしくは一部還付されるのか、現時点において政府として決定している措置を明らかに示されたい。
四 上記三に関して、自己検査によって陽性であった患者が医療機関を受診した際に、医師の判断で再度のPCR等検査を行った場合、当該検査にかかる費用は公費負担となるのか。加えて当該患者の持参した自己検査の陽性結果のみをもって医師が新型コロナウイルス感染症との確定診断を行いつつ症状に対して投薬を行い、さらに当該患者の希望によってPCR等検査を行った場合は、そのすべてが公費負担となるのか。政府の見解を明らかにされたい。
五 上記三に関して、自己検査によって陰性であった患者が診療・検査医療機関以外の医療機関に治療を求めて受診した場合、その受診を断った医療機関は医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十九条第一項における「正当な事由」なく患者の診療を拒否したことになるのか、岸田内閣の認識を明らかに示されたい。
六 当該方針変更では「同居家族などの感染者の濃厚接触者が有症状となった場合には、医師の判断により検査を行わなくとも、臨床症状で診断すること(以下「当該臨床診断」という。)」も自治体の判断で可能としている。当該事項について以下を問う。
 1 当該臨床診断は、同居家族ではない職場や学校等における濃厚接触者に対して同様に行っても問題ないか。
 2 当該事務連絡における「濃厚接触者」とは、いかなる者のことを指すのか。改めてその考え方を具体的に示されたい。
 3 前記六の2での考え方に基づけば、保健所等によって判断された者以外でも当該事項における濃厚接触者に該当し得るか。
 4 前記六の3において「該当し得る」とする場合、自己申告の者であっても濃厚接触者と判断して問題ないか。また、第三者によって申告された者であっても濃厚接触者と判断して問題ないか。
 5 前記六の2での考え方に該当しない者であっても、感染者の同居家族であれば濃厚接触者と判断して問題ないか。
 6 当該事項の注釈※3では、その有症状の濃厚接触者(以下「有症濃厚接触者」という。)を医師が検査を行わずに診断し届け出る場合について「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)(以下「感染症法」という。)第十二条第一項に基づく医師の届出に当たっては、疑似症患者として届け出ること」としている。医師の判断で診断してよいとの事務連絡に基づき診断したにもかかわらず、当該有症濃厚接触者を「患者(確定例)として届け出ること」としないのはなぜか。その理由を明確に示されたい。加えてこの届出によって当該有症濃厚接触者は自治体が公表する新規感染者数に加えて計上されることになるのか否か、岸田内閣としての認識を明確に示されたい。
七 厚生労働省健康局結核感染症課が令和三年二月十日に発出した「「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の改正について(新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律関係)」に関するQ&Aについて」という事務連絡(以下「当該Q&A」という。)では、新型コロナウイルス感染症の疑似症患者の取扱いについて「新型コロナウイルス感染症の疑似症を呈しており、医師等が新型コロナウイルス感染症にかかっていると疑う場合には、当然「疑似症患者であって、当該感染症にかかっていると足りる正当な理由のあるもの」に該当します。」としている。一方、「感染症法第十五条第四項を新設した趣旨如何。」との問いに対しては、「行政検査を行うに当たって、都道府県知事等は、無症状者を含む患者の迅速な発見のため、感染症の性質、地域の感染状況、感染症が発生している施設・業務等を考慮することを明示したものです。」と回答し、「当該規定の新設に当たっての具体的な考え方」として「感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者」を明確化するとともに、これらの者に対して積極的な行政検査の実施を求めている。すなわち当該方針変更は「当該感染症にかかっていると足りる正当な理由のあるもの」である疑似症患者を診断するに当たって必ずしも検査を行わなくとも問題ないとするものであって、当該Q&Aで示されている感染症法第十五条第四項の新設趣旨と著しく齟齬をきたしていると考えるが、岸田内閣の認識如何。
八 当該臨床診断によって新型コロナウイルス感染症疑似症患者とされた者(以下「当該疑似症患者」という。)に関して、以下を問う。
 1 当該疑似症患者と新型コロナウイルス患者(確定例)とは法的にすべて等しく扱われるのか。
 2 当該疑似症患者に対して新型コロナウイルス感染症に関する治療が行われた場合、そのかかる医療費は全額公費負担となるのか。
 3 前記八の2において、全額公費負担となる場合、当該疑似症患者が呈していた症状が、後日新型コロナウイルス感染症以外の疾患に起因するものであったと判明した際、すなわち当該疑似症患者が新型コロナウイルスに感染していなかった際には、それまでにかかった医療費についてはいかなる措置がとられるのか。
九 令和三年十二月二十四日に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部及び医薬・生活衛生局総務課より発出された「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について」の別添「「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について」に関する質疑応答集(Q&A)について」の「抗原定量検査陽性例でも、PCR検査を実施せずに、本剤を処方することができるのか。」との問いに対しては「抗原定量検査でSARS−CoV−2感染が確認された場合は、再度PCR検査を行わずとも本剤を処方することが可能です。」との回答が示されている。また当該事務連絡では当該疑似症患者に対して「経口薬など治療薬の投与が必要となる場合等は、医師の判断で検査を行うことが可能であること。」とされている。
 これら政府の見解を鑑みた場合、当該疑似症患者に対して経口抗ウイルス薬をはじめとした新型コロナウイルス感染症治療薬を処方・投与する際に、PCR等検査が必須であるのか否かが明らかにされていないことから医療現場をはじめ国民に不安と混乱を生じかねないと懸念される。当該方針変更にともない、当該疑似症患者に経口抗ウイルス薬をはじめとした新型コロナウイルス感染症治療薬を投与する場合、その投与前にPCR等検査を行わなくとも問題ないとするのか。岸田内閣としての認識を明確に示されたい。
十 前記六の6、八の1及び九に関して、当該疑似症患者が後日新型コロナウイルス感染症患者でないことが明らかになった場合、当該疑似症患者が疑似症患者と診断されたことに起因して被った不利益に対して政府はいかなる措置を講じるつもりか。各々について個別具体的に説明されたい。加えて当該疑似症患者が当該臨床診断が誤っていたことによって不利益を被ったことに対する一切の責任は、当該方針変更を行った政府にではなく、当該方針変更に従った各自治体あるいは当該臨床診断を下した医師にすべて帰するとの理解で問題ないか。岸田内閣としての認識を明確に示されたい。
十一 当該臨床診断が可能とされることによって、医療機関に対して当該臨床診断のもと「新型コロナウイルス感染症」との診断名を記した診断書の発行を求める有症濃厚接触者が急増し、医療機関の負担がむしろ増えるのではないかとの懸念が現場の医師から示されているが、そのような事態が生ずることは想定しているか。現時点での岸田内閣の認識を明確に示されたい。
十二 当該方針変更によって外来医療のひっ迫にいかなる効果をもたらし得るのか、科学的に分析あるいは試算したデータ、エビデンスが存在するのであれば、具体的に提示されたい。
十三 当該方針変更は、暫定的なものかあるいは恒久的なものか、明確に示されたい。暫定的なものであるとする場合、PCR等検査の試薬もしくはキットが潤沢に流通した時点で当該方針を見直すことはあり得るのか、明確に示されたい。加えて他に見直すことがあり得る状況がある場合、いかなる状況となった場合に見直すのか、現時点で岸田内閣として想定している状況を具体的に示されたい。また恒久的なものであるとする場合、今後新たな変異株が出現した場合であっても見直すことはないのか、明確に示されたい。

 右質問する。

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