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令和四年五月十三日提出
質問第六六号

柏崎刈羽原子力発電所における核物質防護規定違反に関する質問主意書

提出者  阿部知子




柏崎刈羽原子力発電所における核物質防護規定違反に関する質問主意書


 原子力規制委員会は、二〇二一年に発覚した東京電力ホールディングス株式会社の柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用事案及び核物質防護設備の機能の一部喪失事案に対する追加検査の中間とりまとめ(以降、中間とりまとめ)を二〇二二年四月二十七日に行った。
 中間とりまとめ二頁目では、核物質防護設備の保全方式について、@時間基準保全(耐用年数などの一定期間毎に保守すること)、A状態基準保全(劣化の兆候を捉えるための状態監視を踏まえ保守すること)、B事後保全(故障等の機能喪失時に保守すること)の三つの方式があることを明らかにしている。
 そして、柏崎刈羽原発以外の発電所における核物質防護設備の保全方式は、@とBを基本とし、柏崎刈羽原発では、@からAに切り替えて運用されていたが、Aを実施するための判断基準を定めた保守管理計画が策定されておらず、結果的にBだったと書いてある。
 しかし、東電が二〇二一年九月二十二日に公表した「IDカード不正使用および核物質防護設備の機能の一部喪失に関わる改善措置報告書」(以後、東電報告書)を併せ読むと、事態は追加検査の中間とりまとめよりも深刻であるため、以下、質問する。

一 「核物質防護の重要性の理解不足」について
 中間とりまとめ十頁で、原子力規制委員会は「核物質防護の重要性の理解不足による迅速な対応の欠如(故障個所を複数まとめて修理依頼。完了期限の管理の甘さ)」を「対応を求める事項」として指摘している。
 この指摘のとおり、「故障個所を複数まとめて修理依頼」したのであれば、壊れたら壊れた時に直すというBの保全方式でさえない。また、「複数」という記述から二、三個所をイメージするが、東電報告書の添付一−一によれば、機能喪失は、二〇二〇年三月から二〇二一年二月にかけての約十一カ月で二十一事案にものぼり、復旧までに最大で十一カ月以上が経過していた。
 1 発電用原子炉の設置者の「核物質防護の重要性の理解不足による迅速な対応の欠如」はいわゆる原子炉等規制法第四十三条の三の六で求める許可基準を満たしていると言えるのか。
 2 二十一事案、最大で十一カ月以上の放置は、中間とりまとめで記述する「故障個所を複数まとめて修理依頼」より深刻である。最終とりまとめを行う際には、より具体的な記述が必要ではないか。
二 原子力規制検査の追加検査の目的について
 そもそも今回の中間とりまとめは、二〇一七年の原子炉等規制法の改正で導入された「原子力規制検査」の追加検査の途中経過である。また、追加検査は、二〇一九年十二月二十五日に原子力規制庁長官が決定した「原子力規制検査等実施要領」に基づいて実施されているものである。
 1 原子力規制検査の目的は、検査の「実施方法を明確化する」ことであるという理解で間違いはないか。
 2 追加検査で原子炉等規制法が求める設置許可の基準「発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力」の欠如が明らかになった場合は、許可基準に立ち戻り、設置許可を取り消すことが規制のあり方であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
三 IDカード不正使用事案の核物質防護規定違反について
 IDカード不正使用事案については、原子力規制委員会の更田豊志委員長が二〇二一年二月十日の衆議院予算委員会で、私の質問に対して、「私どもは、この核セキュリティー事案に関して、柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護規定を既に認可をしております。今回の事例は、この核物質防護規定に対する違反でありますので、まず、この核物質防護規定としての取扱いを進めてまいりますし、検査の中で事案の重大さを、評価は、一定の評価を下して、検査の監視レベルを引き上げておるところでありますけれども、引き続き、この核セキュリティー事案の深刻さ、内容、そして、それに対して東京電力がどのような対処を取るかというのを見定めてまいりたい」と答弁している。また、二〇二一年三月九日の衆議院環境委員会で近藤昭一議員の質問に対して、同委員長は、「今回の事案は、原子炉等規制法第四十三条の三の二十七第二項において準用する第十二条の二第四項に対する違反であります。具体的には、発電用原子炉設置者及びその従業者は、核物質防護規定を守らなければならない」と答弁を行っている。
 原子炉等規制法第四十三条の三の二十によれば、「第四十三条の三の二十七第二項において準用する第十二条の二第四項の規定に違反したとき」は、原子力規制委員会は、「設置許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて発電用原子炉の運転の停止を命ずることができる」と定めている。
 1 法第四十三条の三の二十は、核物質防護規定違反が起きた時の処分は、設置許可取消しか、一年以内の運転停止のどちらかであるという理解で間違いはないか。
 2 原子力規制委員会は、核物質防護設備の機能の一部喪失事案とIDカード不正使用事案を議題に、二〇二一年三月十六日と二十三日に非公開で会議を、三月二十四日と三十一日に公開会議を開催した。同じ事案であるにもかかわらず、十六日と二十三日の会議を非公開にしたのはなぜか。
 3 三月二十三日の非公開会議の資料には、原子力規制委員会は三月十六日に「原子力規制検査等実施要領」で定めた対応区分を第四区分とした上で、「核物質防護設備の機能の一部喪失事案とIDカード不正使用事案を一体のものとして取り扱う」ことにした、と記述されている。
  しかし、三月十六日の会議にはこのことを明記した資料は存在しない。単に議事要旨の最後に唐突に、「原子力規制委員会は、核物質防護設備の機能の一部喪失事案とIDカード不正使用事案を一体のものとして取り扱うこととし、事務局に対し、その方針に基づいて今後の規制上の対応の検討を行うよう指示した」と出ているだけである。議事録ではないので誰の発言であるかも不明である。
  なぜ、核物質防護設備の機能の一部喪失事案とIDカード不正使用事案を一体で取り扱うことになったのか、決定過程と根拠を明らかにされたい。
 4 原子力規制委員会は、二〇二一年三月二十三日の非公開会議でIDカード不正使用事案と核物質防護設備の機能喪失を一体で、約二千人・時間を目安に追加検査を行うことに決めたが、約二千人・時間の根拠は「原子力規制検査等実施要領」には見当たらない。約二千人・時間の根拠は何か。
 5 原子力規制委員会の更田委員長は、対応区分が第四区分に変わったことについて、三月二十四日の会議で「設置許可の取消しというのは、必ずしも現時点で可能性まで排除されるものではないと思いますけれども、これから検査が行われるということを考えると、今の時点で設置許可を取り消すだけの根拠をきちんと示せるかどうかというのは疑問がある」と述べている。
  ア 追加検査の結果、設置許可の取消しもあり得ることを述べたものだと解するが間違いはないか。
  イ 更田委員長は、二十四日の会議で「原則として、核燃料の移動を禁ずるという形で、具体的にどういう命令を発出するかは、意思決定をしてから発出文について法的な意味も含めて検討してもらいますけれども、私としては、是正措置命令、そしてその内容は、核燃料の移動を禁ずる。問題となるのは期間ですけれども、検査区分が一に復帰するまでという是正措置命令ではどうかというのが私の考えです」と提案した。つまり、「法的な意味」は後回しで、対応区分が第一区分に是正されれば、核燃料の移動ができるようにしたことになる。検査区分が一になれば、核燃料の移動ができることにした根拠は何か。
  ウ 原子力規制委員会は三十一日の会議で、後付けの検討の結果、違反法令として、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第九十一条の複数項目の違反をあてはめ、是正命令の法的根拠を、原子炉等規制法第四十三条の三の二十三(施設の使用の停止等)第二項であるとした。
   なぜ、国会で認めたように、違反法令として核物質防護規定(法第四十三条の三の二十七第二項において準用する第十二条の二第四項の規定)、およびそれに対応する条文(法第四十三条の三の二十(許可の取消し等))を適用しなかったのか。
 6 原子力規制委員会が決めたように、事後的に事態を是正して、ほとぼりが冷めた頃に、是正命令で禁止された核燃料物質の移動が可能になるのであれば、核物質防護規定違反を犯しても、原子炉の再稼働が可能となるという間違ったメッセージを与え、規制の意味をなさないのではないか。
 7 先述した二〇二一年二月の衆議院予算委員会で、更田委員長は、「東京電力がどのような対処を取るかというのを見定めてまいりたい」と答弁した。これは、東京電力の対処によっては、設置許可の取消しもあり得るという意味だと考えるがどうか。

 右質問する。

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