質問本文情報
令和七年三月十三日提出質問第九四号
人工魚の取扱いに関する質問主意書
提出者 井坂信彦
人工魚の取扱いに関する質問主意書
二〇二四年四月、山形県において、自然界に存在しない魚が釣れたことが報じられた。人工的に交配されて生み出された山形県のブランドマス「ニジサクラ」とみられている。その後、このニジサクラの幼魚飼育を担う公益財団法人山形県水産振興協会が、余った幼魚約千匹を鶴岡市の赤川支流に放流していたことを明らかにした。
ニジサクラは、サクラマスの評価の高い食味と、ニジマスの成長力を兼ね備えたブランド魚として開発された。食欲は旺盛で、釣りあげられた魚の胃袋からは、ザリガニや小魚、虫などが確認された。個体は全て雌で繁殖する可能性はないが、一代であっても生態系への影響がないとはいえないと考える。
水産庁は、ニジサクラを含む人工的に作られた魚について放流を行わないよう要領を定めていたが、生態系への影響が確認されなかったことから二〇二二年に廃止した。しかし、県は生産・出荷マニュアルにおいて自然界への散逸防止に努めるよう定めている。
現在では人工交配だけでなく、遺伝子操作で通常よりも筋肉が多い肉厚な魚を作り出す「ゲノム編集魚」の研究が進んできた。一般社団法人大日本水産会魚食普及推進センターによると、「ゲノム編集魚」が自然界に逃げた場合、成長しやすいという特徴がその種の魚に広まって、種全体が弱まってしまう可能性があるとしている。そのため事業者は陸上養殖に限定している。
今後、魚の養殖・育成において、様々な技術による品種改良や遺伝子改良が進んでいくと思われるので、以下、政府に対し質問する。
一 水産庁は養殖業成長産業化総合戦略でニジサクラやゲノム編集マダイについて支援を行っている。山形県における人工交配魚の放流については、県が今後対応をしっかり進めていくとしているが、政府として放流した事業者に指導や処罰は行ったのか。
二 事業者が人工的に作られた魚の適正な管理をしているかどうか、政府が監督する必要があると考える。誰がどのように監督するのか、立入検査で何を調査するのか、行政の監督責任を明確にすべきと考えるが、政府の見解を伺う。
三 人工的に作られた魚について放流を行わないよう定めていた要領が、二〇二二年に廃止された。ニジサクラについては繁殖能力がないので、放流した場合の影響は少ないかもしれないが、今後は遺伝子操作やゲノム編集による繁殖力のある新種の開発も十分に考えられる。国として人工魚の放流禁止や罰則など制度の整備が必要と考えるが、政府の見解を伺う。
右質問する。