質問本文情報
令和七年四月十八日提出質問第一五五号
特定生殖補助医療に関する法律案に関する質問主意書
提出者 阿部知子
特定生殖補助医療に関する法律案に関する質問主意書
超党派の議員立法として今国会に特定生殖補助医療に関する法律案(参法第一号。以下「法案」)が提出された。法案は、特定生殖補助医療を定義し同医療に関する規制等を定めている。これまで、日本に第三者の精子・卵子を用いた生殖補助医療に関する法規制はなく、法案はまったく新しい法規制を定めようとするものである。内閣提出法案であれば、国の審議会を経ること等により立法の基礎となる議論や過程を見ることが一定程度可能である。また、議員立法である臓器の移植に関する法律(平成二十一年法律第八十三号)の成立過程においては、内閣総理大臣の諮問機関として臨時脳死及び臓器移植調査会が設けられたほか、市民サイドの調査会においても活発な議論が行われたと承知している。
法案は、超党派の議員連盟によって議論がなされてきた。しかし、一番の当事者である、第三者の精子提供によって生まれた人たちのヒアリングはされていない。法案に対しては、子どもが出自を知る権利を保障していないと言う意見のほか、第三者の精子提供によって生まれた子を育てている親たちからも様々な不安や疑問の声が強くあがっており、立法の過程、内容が国民に示されているとは言えないと考える。
また、法案は超党派議連に所属する各会派が一致して提出したものではなく、生命倫理の観点から広く国民の合意を得ることが必要であると考える。
以下、質問する。
一 法案は、第五十一条で、特定生殖補助医療を受けた夫婦、それによって生まれた子、精子・卵子の提供者に関する情報について、内閣総理大臣に保存を義務付け、第五十七条で、その事務を国立研究開発法人国立成育医療研究センターに行わせるとしている。
1 法案は、国立成育医療研究センターが、その事務を受託することを前提にしている。同センターを所管する厚生労働省は、法案第五十七条が記されるに当たり、同センターへ働きかけをしたのか。働きかけをしたのであれば、それはどんな内容か。
2 国立成育医療研究センターでは、法案第五十七条に関して、どのような議論が行われ、どのようなプロセスで新たな業務が加えられることを認めたのかについて、同センターを所管する厚労省は、これらを掌握しているか。掌握していればその内容をそれぞれ明らかにされたい。
3 国立成育医療研究センターは独立した法人である。法案第五十七条は、その業務の計画、内容に影響を及ぼすと考えるが、法人のガバナンスの問題として、同センターを所管する厚労省は、このことをどう考えているか明らかにされたい。
4 法案は、医療的な観点のみならず、子どもの成長とアイデンティティの形成、家族の形成など影響を及ぼすことが想定される分野は多岐にわたり、カウンセリング、告知支援等の機能も当然期待されると考える。事前に委託先を法案に明記するのではなく、法案が審議、議決された後に、複数の候補の中から委託先を選定すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
二 法案第二条第一項は、「特定生殖補助医療」を定義し、第三条で医師が同医療を行うことができる範囲を法律婚の夫婦に限っている。さらに、事実婚のカップル、女性の同性カップル、単身女性に同医療を行った医師らに対して、国が中止命令(第四十六条第二項)を出すことができ、それに違反した者は、刑罰(拘禁刑若しくは罰金)が科せられる(第七十三条第三号)。これにより、事実婚のカップル、女性の同性カップル、単身女性に対する同医療は制限されることになる。
一方、医師法第十九条第一項は、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」としており、疾病ではない美容整形の場合においても、同じ解釈がなされている。
1 日本において、社会的立場の違いや性的指向によって患者の範囲が法律で制限される医療はあるか。
2 女性の同性カップルが同医療を受けられないことは、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(令和五年法律第六十八号)第三条にある「性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別」に当たるのではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。