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令和七年五月十二日提出質問第一八三号
相模川水系道志川の維持流量に関する質問主意書
提出者 長友よしひろ
相模川水系道志川の維持流量に関する質問主意書
相模川は、富士山を水源として山梨県東部を東に流れて神奈川県に入り、相模ダム(相模湖)、城山ダム(津久井湖)を経て流路を南に転じ、神奈川県中央部を流下し、中津川等の支川を合わせて相模湾に注ぐ一級河川である。道志川は、山梨県道志村を水源に、神奈川県相模原市を流れ、相模川と合流して津久井湖へ入る一級河川である。
相模川水系では、神奈川県の水需要に対応し、水系全体の効率的な水運用を図る観点から、昭和六十年に国、神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市で取り交わされた宮ヶ瀬ダムの建設に係る相模川水系の貯水池運用に関する覚書(以下「覚書」という。)により、神奈川県が管理する相模ダム及び城山ダム並びに中津川に位置し国土交通省が直轄管理する宮ヶ瀬ダム(宮ヶ瀬湖)の総合運用が行われている。具体的には、道志川の水を道志川上流の道志ダム(奥相模湖)から宮ヶ瀬ダムに道志導水路によって取り入れ、貯留水を宮ヶ瀬ダムから中津川に放流するほか、津久井導水路によって道志ダム下流側の鮑子取水堰直下に戻し、城山ダムに流入させることが可能となっている。
道志ダムの貯留水は、先述の総合運用により、道志導水路を通じて宮ヶ瀬ダムに一秒間に最大二十立方メートルが導水されている。また、道志第一発電所を利用して、一秒間に最大九立方メートルを秋山川に流域変更している。
道志ダムから道志川への放流は、洪水時の洪水吐ゲートによる放流を除くと、道志ダム下流三・五キロメートル地点の道志第二発電所を利用し、一秒間に最大二立方メートル放流しており、これにより横浜市水道の取水量を確保している。また、道志ダムから道志川に放流する河川維持用水毎秒〇・四立方メートルを道志ダム発電所で利用し、ダム直下に放流している。
道志ダム下流の道志川の河川水は、鮑子取水堰より、横浜市水道が一秒間に二立方メートル取水している。覚書では、鮑子取水堰の上流地点において一秒間に二・五立方メートル以上の流量を確保すべきことが定められており、取水後は、鮑子取水堰下流では一秒間に〇・五立方メートル以上の流量が確保されることとなる。この流量の根拠は、神奈川県(令和三年七月二日の神奈川県議会建設・企業常任委員会における河川課長答弁)によると、昭和二十七年に神奈川県と横浜市が道志ダムの開発事業に当たって締結した協定書において同量の流量の確保が定められたことにあるとされる。
神奈川県(平成二十四年九月二十六日の神奈川県議会本会議における知事答弁)によると、鮑子取水堰から津久井湖までの道志川について、現在の水量で支障が出ているという認識はないとしている。
しかし、津久井導水路による宮ヶ瀬ダムからの導水のない、道志ダム直下から鮑子取水堰までの区間においては、流量が少ないことにより、アユの遡上ができにくくなるなどの自然環境への悪影響などが懸念される状況があり、道志ダム直下から鮑子取水堰までの区間において、現在以上の流量を確保する必要があると考える。
一 河川法施行令第十条及び第十条の二に基づき、河川整備基本方針において、流水の正常な機能を維持するため必要な流量(以下「正常流量」という。)に関する事項を定めることとされており、正常流量を構成する維持流量は、国土交通省「河川砂防技術基準 計画編(基本計画編)」の技術資料によると、「河川を類似した特性を持つ区間に区分し、各区間ごとに設定することを基本とする」とされ、「舟運、漁業、流水の清潔の保持、塩害の防止、河口の閉塞の防止、河川管理施設の保護、地下水位の維持、景観、動植物の生息・生育・繁殖地の状況」を「総合的に考慮して定めればよい場合が多い」とされる。河川管理者である国土交通大臣は、相模川水系河川整備基本方針の策定過程において、道志川の道志ダム直下から鮑子取水堰までの区間の維持流量を、どう設定したか。
二 覚書において鮑子取水堰上流地点で確保すべきとされている流量(一秒間に二・五立方メートル以上)は、どのような根拠に基づいて定められているか。
三 二の根拠について、現在の動植物の生息・生育・繁殖地の状況等を総合的に考慮した場合に、必要な維持流量を含む正常流量を満たしていると言えるか、政府の見解を示されたい。
四 今後、国以外の覚書の当事者である神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市が、鮑子取水堰上流地点で確保すべき流量について、覚書において確保すべきとされている流量(一秒間に二・五立方メートル以上)より増加させることについての検討を行い、一定の合意が得られた場合、国は変更に同意することとなるか。変更に同意する場合、その変更に当たって要件や障壁はあるか。
右質問する。