質問本文情報
令和七年五月十五日提出質問第一八九号
水田の持続可能性及び陸稲の活用に関する質問主意書
提出者 杉村慎治
水田の持続可能性及び陸稲の活用に関する質問主意書
政府は、我が国の農業政策において水田農業を重要な施策として位置付けており、水田・畑を問わず生産性の向上を図る方向で政策構造の転換を進めていると承知している。令和五年に示された政府の見解等を踏まえると、今後の農業政策は土地利用の柔軟性と多様性の確保を重視する方向へと移行しつつあると考えられる。
しかし、農業従事者数の継続的な減少や高齢化の進行、生産基盤の縮小、更には耕作放棄地の増加といった現実を前にして、水田政策の持続可能性には一定の限界が見え始めている。また、直近半年間に顕在化した米価高騰は、生産現場の縮小が消費者にも影響を及ぼす段階に入っていることを示す事例と考えられ、これまでの政策の再評価が必要であると考える。
このような中で、陸稲は水を張らない畑で栽培可能であり、省力化や温室効果ガス排出削減、更には輪作による連作障害の回避などの効果が期待されている。もっとも、陸稲は現状では全国的な作付面積が限られており、栽培技術や流通の整備も十分とはいえないが、将来的な可能性を有する作物として位置付け、農業の多様化と地域特性に応じた農地利用を模索するうえで有益な手段の一つと考える。
ただし、その推進は水田農業を否定するものではなく、既存の農業者の理解と参加を前提とした共存的な施策設計が求められると考える。
以上の論点を踏まえ、政府に質問する。
一 政府は令和九年度から水田政策の抜本的な見直しを検討していると承知しているが、その前提として、これまでの水田政策について客観的な分析・検証・評価を行う必要があると考える。直近十年間における農業従事者数の推移、平均年齢、耕作放棄地面積の拡大状況等、政府が把握する統計的根拠を踏まえ、これまでの水田政策の妥当性をどのように分析・検証・評価しているか、具体的に示されたい。
二 水田から排出される温室効果ガス(とりわけメタン)について、政府としてその排出量をどのように把握しており、環境負荷低減に向けた農法の改善や新技術の開発をどのように推進しているのか。今後の国際的枠組みや日本国内での数値目標等を含めた政府の方針を明示されたい。
三 陸稲について、政府は現状どのような評価を行っているか明示されたい。特に水田農業と対立するものではなく、共存的な土地利用の一環として陸稲を政策的に位置付けることについて、政府の見解を示されたい。
四 陸稲について、生産・栽培技術の確立、栽培品種の改良、収量の安定化を図るため、政府は研究開発や普及支援をどのように検討しているか。
五 流通やマーケティング支援も含めて、陸稲栽培を希望する農家への支援方策を講じる意思があるか。
六 陸稲は水稲とは収穫時期や栽培方法が異なるため、農家にとっては労働力の分散や収益の多角化につながる可能性があると考える。このような可能性について、政府はどのように認識しているか、見解を示されたい。
七 陸稲の普及促進に当たり、全国各地域における栽培適性や土壌条件に応じた試験農場の設置等、政府が検討している具体的施策について明示されたい。
八 水田農業と陸稲栽培を同一地域で組み合わせ、輪作や作付転換を計画的に行う農業モデルの導入について、政府としてその研究や普及を検討しているか。検討しているのであれば、農家の経営安定と土地利用の最適化を両立するモデルとしてどのような形が現実的か、検討状況を示されたい。
右質問する。