質問本文情報
令和七年五月二十日提出質問第一九二号
羽田空港新飛行ルートに関する質問主意書
提出者 松尾明弘
羽田空港新飛行ルートに関する質問主意書
羽田空港の新飛行経路、いわゆる羽田新ルート(以下、新ルート)の導入以降、東京都心部では航空機の騒音や安全性に関する懸念が広がっている。特に渋谷区や港区などの市街地上空では、低高度での飛行により住民らの日常生活への影響が顕在化していると承知している。
羽田空港の利便性強化や国際競争力向上を目的として導入されたはずの新ルートだが、機能強化の効果が薄く、住民の安心・安全とのバランスを欠いたまま運用が継続されていることは問題であると考える。
これらの問題意識を踏まえ、次の事項について質問する。
一 国土交通省航空局作成の「羽田空港のこれから〜ご質問についてお答えします〜v.6.2」において、現在のように、東京湾上空に飛行経路を設定し、海側から到着し、海側へ出発する方法(以下、従来ルート)では、一時間当たりの発着回数は現行の八十回から八十二回までしか増やすことはできない旨説明されている。
1 新ルート飛行開始以降、新ルートを運用している時間帯において従来ルートの飛行で一時間当たりの発着回数が八十二回を超えた日があれば、年ごとの日数及び一時間当たりの平均回数をそれぞれ可能な限り示された上で、超えたことによる悪影響があれば、悪影響の具体的な内容を伺いたい。
2 新ルートを運用している時間帯において一時間当たりの発着回数を八十二回から九十回まで増やす場合、羽田空港の発着回数は、年間で何回増えるか、可能な限り示されたい。
二 米軍ヘリが、新ルートを低空飛行する旅客機との接触を避けるために東京都心部を低空飛行で飛んでいるのではないかとの指摘に対し、令和三年五月二十八日の参議院本会議において赤羽国土交通大臣(当時)は、新ルートを運用している時間帯においても、周辺空域において、米軍ヘリが管制機関に連絡を行うことで任意の高度で飛行することが可能な仕組みとなっているため、新ルートの設定が米軍ヘリの飛行に影響を与えているとは認識していない旨答弁している。
1 東京都心部において、米軍ヘリが飛行可能な「任意の高度での飛行」に、新ルート運用時の特別管制空域又は航空法第八十一条に規定する最低安全高度以下での飛行も含まれるか否かを明らかにされたい。
2 任意の高度での飛行が可能ということは、米軍ヘリに対し、あらゆる高度での飛行を許容していることになり、新ルートを飛行する旅客機と交差することによる衝突事故の懸念があると考えるが、政府の見解を伺いたい。
3 政府は、新ルート導入前に、旅客機と米軍ヘリとの交差リスクについて十分なシミュレーションや評価を行ったのか。行ったのであれば内容と結果をそれぞれ示されたい。
4 政府は、東京都上空を飛行する米軍ヘリの飛行ルートや日時等をどのように把握しているか。また、その把握の仕組みは機能しているのか。
三 国土交通省航空局作成の「羽田空港のこれから〜ご質問にお答えします〜v5.1.2」における騒音の大きさを説明する資料に基づくと、新宿・渋谷などの東京都心部では、新ルートによる航空機の騒音レベルが六十八〜七十四デシベルに達しているとの実態があるとされている。この騒音レベルは、騒々しい街頭のレベルである七十〜八十デシベルに近く、品川区の大井埠頭や大井町付近では七十六〜八十デシベルになる。新ルート直下の住民からは睡眠障害やストレスの増加などの健康被害が報告されていると承知している。
1 このような実態を踏まえれば、航空機騒音の軽減に向けてあらゆる方策を検討する必要があると考えるが、政府は健康被害を受けている住民に対する補償や騒音被害を軽減するための追加的な対策を検討しているのか。検討しているのであればその具体的な内容を示されたい。
2 政府は住民が受ける航空機騒音をどのような方法で把握しているか、観測地点のみならず、騒音が収集される環境も併せて明らかにされたい。
3 航空機騒音の把握に際し、例えば、屋上のような開けた観測地点と、ビルの合間のような音がこもりやすい地点では聞こえ方が全く異なると考えるが、そのような観測環境の違いは考慮されているのか。
4 我が国の航空機の騒音を規制する基準について、地域類型T(専ら住居の用に供される地域)では時間帯補正等価騒音レベル(Lden)五十七デシベル以下、地域類型U(T以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域)ではLden六十二デシベル以下が望ましいとされている。一方、欧州地域向けの環境騒音ガイドライン(世界保健機関欧州事務局)は、航空機騒音をLden四十五デシベル以下とするよう強く勧告しているが、我が国がその基準を採用しない理由を示されたい。
四 新ルート直下の多くの住民が「都心上空を飛行しない海上ルートの活用」を求めていると承知している。政府は住民説明会において「住民の意見を踏まえて検討する」と述べているが、検討は行われたのか示された上で、それらの意見が具体的にどのような形で政策に反映されたのかそれぞれ示されたい。
五 国土交通省ウェブサイトの「羽田空港のこれから」によれば、羽田空港以外での国際線増便を実現するために検討された、成田空港を活用する方策について、国際線のニーズが高い時間帯は、「羽田空港のみならず、成田空港も既にフル稼働の状態にある」としている。しかし、平成二十二年十月十三日の成田空港に関する四者協議会において成田空港の年間発着枠を三十万回に拡大することで合意されたのに対し、令和五年までの成田空港の発着枠は最大二十六万五千二百五十二回しか使用されておらず、発着枠を全て使用している状態とはなっていない。また、令和七年一月二十四日の同協議会において、同年冬ダイヤから成田空港の年間発着枠を三十四万回で運用することで合意されている。
1 国際線増便に当たり、新ルートの運用より先に成田空港の年間発着枠を全て活用すれば新ルートは不要だと考えるが、従来ルートの発着枠と、成田空港の発着枠を最大限に活用してもなお新ルートが必要なのか、政府の見解を伺いたい。
2 従来ルートの発着枠と、成田空港の発着枠を最大限活用してもなお不足するということであれば、成田空港の発着枠を更に増やすために、同協議会において協議を行うことはできないか、政府の見解を伺いたい。
右質問する。