質問本文情報
令和七年六月二日提出質問第二一一号
米の需要見通しに関する質問主意書
提出者 井坂信彦
米の需要見通しに関する質問主意書
令和六年から、米の品薄が続き、価格が高騰している。政府は備蓄米を市場に流通させたが、価格の高騰に歯止めがかかっていない。「消えた二十一万トン」として、卸売業者が在庫を増やして価格を釣り上げているかのような印象を与える報道もある。しかし一部の専門家は、既に価格が上昇している中で売り惜しみする理由はなく、また在庫管理のコストなどを考えると、流通の問題よりも需要の上昇が理由ではないかという意見があると承知している。
政府は米の需要見通しについて、一人当たり消費量(推計値)に人口(推計値)を乗じる手段によって算出している。具体的には、過去の需要実績を当該年の人口で除して消費量を算出し、その数値を用いたトレンド(回帰式)で一人当たり消費量の推計値を出している。その結果、一人当たり消費量(推計値)はどんどん下がり続け、平成八/九年は七十五キログラムだったものが、令和七/八年では五十三・八キログラムまで減っている。
また、人口(推計値)も減少していることから、トレンド(回帰式)と人口(推計値)を乗じた数値は当然下がり続け、米の需要見通しは令和六/七年で六百七十三・八万トン、令和七/八年で六百六十三・四万トンと、どんどん減少している。しかし、令和五/六年の需要実績は七百五万トンとなっており、見通しと実績の乖離が起きている。一人当たり消費量(推計値)と人口(推計値)だけで算出する需要量に問題があるのではないかと考える。
見通しと実績の乖離が起こる要因の一つには、訪日外国人の増加が考えられる。令和六年の訪日外国人旅行者数は、約三千六百八十七万人である。観光庁の資料によると、平均泊数は十・一泊ということから、旅行者数で乗じると約三億七千万泊となる。一年間の日数で除すると、約百万人の外国人旅行者が常時滞在しているということになる。これに令和七/八年の一人当たり消費量の推計値を乗じると、訪日外国人旅行者で約五万四千トンの需要が計算されるはずである。
もう一つは輸出量の増加が考えられる。米及び米加工品の令和六年の輸出量は約六万八千トンとなっており、令和元年からおよそ倍増している。
この二つの数値を単純に合わせるだけで、少なくとも約十二万二千トンとなる。こうした訪日外国人需要・海外需要が、政府の需要見通しから抜けているのではないかと考える。米の需要見通しの算出方法が、現状と合わなくなっているのではないかと考え、以下、政府に質問する。
一 農林水産省によると、米の需要見通しはトレンド(回帰式)で一人当たり消費量(推計値)を算出する際に、インバウンドによる増加分を含んでいるとのことである。外国人のインバウンドを含んだ数字に、日本人の人口(推計値)を乗じるというという数式では矛盾が生じ、整合性が取れないのではないかと考える。別途、計算をする必要があると考えるが、政府の見解を伺う。
二 現在、大阪・関西万博が開催されており、今後も多くの外国人の来訪が予想されている。その他の観光地においてもオーバーツーリズムと言われるほど訪日外国人が増加している。こういったインバウンド需要向けに、ホテルや飲食店で使用、もしくはキープしている米が増えていて、一般家庭への流通が滞っているのではないかと考えるが、政府の見解を伺う。
三 海外への輸出量を米の需要見通しに加える必要があると考えるが、政府の見解を伺う。
四 和食は平成二十五年に、ユネスコの無形文化遺産に登録された。農林水産省では、登録五周年時点の実績として、海外における日本食レストラン数の増加、農林水産物・食品の輸出額の増加、訪日外国人旅行者数・旅行消費額の増加といったことをウェブサイト上でアピールしている。こうしたことから、米の需要が高まることが予見できなかったのか、政府の見解を伺う。
五 アメリカ在住の日本人歌手がSNSで、令和六年産の日本産の米が、五キログラム十九・九九ドルで山積みされて売られている画像を発信した。その後同様に、日本産の米が各国で日本よりも安く販売され、在庫もたくさんある様子を、海外に在住する日本人が次々とアップしていると承知している。政府は海外で日本米が安く大量に売られている状態を把握しているか。
六 米の海外での需要が高まっていることは、先述のとおり政府も認めている。減反・減産による生産調整ではなく、輸出量を調整することで、米の国内での需給と価格の調整をすべきと考えるが、政府の見解を伺う。
右質問する。