質問本文情報
令和七年八月一日提出質問第一〇号
「青森県との高レベル放射性廃棄物搬出期限の約束を守る件」及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に関する質問主意書
提出者 山崎 誠
「青森県との高レベル放射性廃棄物搬出期限の約束を守る件」及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に関する質問主意書
平成七年(一九九五年)四月二十六日、青森県六ヶ所村の日本原燃(株)「高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)一時貯蔵施設」で、我が国電力会社の再処理委託で発生した、ガラス固化体が三十年間から五十年間の貯蔵期間の約束で貯蔵が始まり、平成二十八年(二〇一六年)十月までに千八百三十本搬入され貯蔵が続いている。
貯蔵期間は、日本原燃(株)と青森県、六ヶ所村との「六ケ所高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター周辺地域の安全確保及び環境保全に関する協定書」(以下、安全協定という。)に規定され、同協定で管理期間終了時点で、それぞれのガラス固化体を電力会社に搬出させるものとすると規定されている。
昭和六十二年(一九八七年)六月及び平成六年(一九九四年)六月に閣議決定された「原子力研究開発利用長期計画」(以下、原子力長計という。)で、三十年間から五十年間程度冷却のため貯蔵を行い、その後地下数百メートルより深い地層中に処分することを基本的な方針とする、としている。
さらに、平成六年(一九九四年)原子力長計では「国は、処分が適切かつ確実に行われることに対して責任を負うとともに、(中略)必要な施策を策定します」、「処分場の建設・操業の計画は、(中略)二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年代半ばまでの操業開始を目途とします」とある。
また、平成六年(一九九四年)十一月十九日付、田中眞紀子科学技術庁長官から、北村正哉青森県知事へ宛てた「高レベル放射性廃棄物の最終的な処分について(回答)」では、原子力長計に、「高レベル放射性廃棄物の処分に関する役割分担、手順及びスケジュールが示されており、処分方策を進めていくに当たって、国は処分が適切かつ確実に行われることに対して責任を負う」とある。
このような経緯から、先の安全協定が平成六年(一九九四年)十二月二十六日に締結され、貯蔵管理期間及び搬出先である最終処分場の選定、確保の第一義的責任が政府にあることから、搬出期限を守る第一義的責任が政府にあることは明白である。
国は、原子力長計の規定に則り、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下、最終処分法という。)を定め、これに基づき、最終処分計画を、平成十二年(二〇〇〇年)十月、平成十七年(二〇〇五年)十月、平成二十年(二〇〇八年)三月にそれぞれ閣議決定し、最終処分場開始時期を「平成四十年代後半を目途」としたことからも、搬出期限遵守の確実な実行が、政府に求められているのは当然である。
しかしながら、第一の約束の三十年目である本年四月二十五日には、六ヶ所村施設からの搬出の計画はおろか、遅れるとの説明も国等から一切なされず、また、第二の約束である、二〇四五年四月二十五日には、最終処分場操業開始の可能性が限りなくゼロに近いにもかかわらず、国等から具体的取組方針等について青森県、六ヶ所村及び県民に対して説明がないのは、政府の責任を果たしているとは言えず、看過できない状況である。
国策である核燃料サイクル政策に協力されている青森県、六ヶ所村及び県民の安全安心が確保され国策に対する不信、不安、疑問が解消されるよう、以下質問する。
一 先に述べたとおり、昭和六十二年(一九八七年)及び平成六年(一九九四年)の原子力長計及び平成六年十一月十九日付科技庁長官から青森県知事への回答文書で「国は処分を適切かつ確実に行われることに対して責任を負う」としていることから、青森県六ヶ所村の一時貯蔵施設からの搬出期限の約束を守る第一義的責任は政府にあると考えるが、政府の見解を示されたい。
また、政府が第一義的責任を負う以上、政府は搬出期限遵守について「事業者を指導」するだけではなく、全面的に主体的具体的に対応するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
二 安全協定で管理期間を規定するにあたり、日本原燃(株)は、平成六年(一九九四年)十一月十五日付、青森県知事に対する「六ヶ所村廃棄物管理施設における高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の管理」についての回答文書において、「弊社は、ガラス固化体を地層処分するまでの間三十年間から五十年間程度冷却のため貯蔵するとの国の方針に則り(略)ガラス固化体を三十年間から五十年間一時貯蔵管理すること」としています。さらに、各電力会社は平成六年(一九九四年)十一月十八日付、青森県知事に対する上記回答文書で「国の方針に則り、管理期間を三十年間から五十年間とし、管理期間終了時点でガラス固化体を最終的な処分に向けて同施設より搬出することとしております」としている。
日本原燃(株)及び各電力会社が管理期間を三十年間から五十年間とし、安全協定で規定したのは「国の方針に則った」ことは明白であると考えるが、日本原燃(株)及び各電力会社の青森県知事宛の回答文書に対する政府の認識と見解を示されたい。
三 最終処分場開始時期について、平成六年(一九九四年)原子力長計では「二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年代半ば」とし、平成十二年(二〇〇〇年)、平成十七年(二〇〇五年)、平成二十年(二〇〇八年)の最終処分計画では「平成四十年代後半を目途」とされている。
1 それらが、異なっている理由について政府の見解を示されたい。また、現時点で政府として目指している開始時期とその理由及びその実現の可能性について政府の見解を示されたい。
2 さらに、平成二十年(二〇〇八年)の最終処分計画では、平成二十年代中頃を目途に精密調査地区を選定し、平成四十年前後を目途に最終処分施設建設地を選定するとされているが、これらの実現の可能性について政府の見解を示されたい。
3 最終処分場操業までに、調査、建設工事で三十年程度必要とされていることから、六ヶ所村の一時貯蔵施設からの搬出期限である二〇四五年四月までには、最終処分場操業は間に合わないと考えるが、政府の見解を示されたい。加えて、最終処分場操業開始が間に合わない可能性が高い状況を踏まえ、処分場以外に搬出する方策及びそのためのロードマップ策定について、政府として、主体的、具体的に期限を区切り検討すべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
四 経済産業大臣は、電気事業連合会に搬出時期遵守の検討を求めているが、これまでの検討内容について、政府は電気事業連合会からどのような説明を受けているか、明らかにされたい。また、この検討について政府として期限を区切り、内容を具体的に示す必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
五 青森県の一時貯蔵施設からの搬出期限は、二〇四五年四月二十五日であるが、東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した除染土を福島県外の最終処分場に搬出する期限は二〇四五年三月である。除染土については政府として搬出期限を法で定め、全閣僚会議でロードマップを策定し、政府が主体的全面的に取り組むことになっている。このことを踏まえれば、青森県からの搬出時期約束を守るために、政府として「貯蔵期間」「搬出期限」を法で定めるべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
六 最終処分法で最終処分計画を五年ごとに十年を一期とする計画を定め、公表しなければならないと義務づけしているにもかかわらず、平成二十年(二〇〇八年)三月以降策定していないのは政府の怠慢である。
政府関係者からは、平成二十七年(二〇一五年)、令和五年(二〇二三年)に基本方針を策定しているとの説明も聞くが、基本方針には、最終処分計画に記載されている放射性廃棄物の発生見込量や最終処分開始時期及び各種調査、処分地設定スケジュール等が示されていないことから、基本方針を策定したからとして、法律で義務づけられている処分計画を策定しなくていいということにはならない。
1 策定してこなかった理由及び策定時期について政府の具体的対応について説明されたい。
2 最終処分法第五条で、原子力発電環境整備機構が、概要調査を実施するために実施計画を策定する必要があり、その計画は「最終処分計画に従い」と規定されていることから、平成二十年(二〇〇八年)の処分計画に代わる新たな処分計画を策定しなければ、現在、文献調査を実施している地域での概要調査への移行は困難で、処分場開始時期は更に遅れると考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
3 処分計画で、ガラス固化体発生量及び最終処分施設の規模、調査、建設、開始時期のスケジュール等を公表することになっていることから、これらの最新の計画を国民に説明しなければ処分場に関する国民の理解、協力は進まないと考えるが、政府の見解を示されたい。
七 政府はこれまで、最終処分場建設工事に、十年間程度必要と説明している。地下三百メートル以深に、約二百〜三百キロメートルのトンネルを掘る工事が十年程度で可能なのか。また、自治体によっては、住民投票等の手続が必要との声もあり、これら手続に要する時間をどのように見込んでいるのか、各々政府の見解を示されたい。
八 最終処分場に関する安全審査の基準等については、場所の地層、地質によって決定されるとの政府関係者の説明があるが、これを是とするならば、場所が決定してから基準を定め、施設の設計を行い、申請された内容について安全審査することになるため、その所要時間が極めて不透明で、処分開始時期も不透明とならざるを得ない。
1 施設の設計、申請、安全審査、認可、着工に要する期間をどのように見込んでいるのか、政府の見解を示されたい。また、現時点は「三十年間程度」の間のどの工程にいると見込んでいるのか、政府の認識を説明されたい。
2 最終処分場の調査、建設に三十年間程度必要と説明してきたが、既に文献調査が四年以上経ち、建設工事を十年程度と見込んでいるものの、安全審査期間及び場所によっては、用地買収や各種開発行為許可事務手続、工事用道路等整備に要する時間等が必要になるため、「三十年間程度」とする期間を全面的に見直さねばならないと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
3 最終処分場の完成時期が延期を重ねている状況を踏まえれば、政府は、最終処分場が完成しない場合や最終処分の開始時期が確定しない場合を想定して、放射性廃棄物の貯蔵、搬出の計画を検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
九 多くの自治体で核のゴミ拒否条例を制定され、青森県の四代にわたる知事と文献調査が実施されている北海道、佐賀県の両知事も最終処分地を拒否しているほか、先に共同通信社が行った全国四十七知事アンケートでも、処分場受入れに賛成の知事はゼロであった。また、文献調査実施地区に名前が上がった島根県益田市長及び同県知事と長崎県対馬市長、さらには益田市に隣接する山口県萩市長が反対の意思を表明している。多くの自治体が最終処分地を拒否する理由について、政府はどのように認識しているのか、見解を示されたい。
十 これまでの原子力長計で示されてきた最終処分場開始時期や第二再処理工場、MOX燃料用再処理工場計画及びプルトニウム利用計画等の重要な原子力政策は、いまだ実現していない。
1 このことから、政府の原子力政策に対する国民の信頼が失われ、国策としての妥当性と正当性が問われていると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 最終処分場の見通しが無い中で、今後六ヶ所再処理工場の本格操業や将来、むつ中間貯蔵施設由来の再処理及び、使用済MOX燃料の再処理も六ヶ所再処理工場を想定していることは、最終処分の目途が立たない核のゴミが、「一時貯蔵」との名目で、長期的に青森県に置かれることになり、県民の不安が募り、県政の苦悩が続き、青森県のイメージダウンを招きかねないとの県民の声があるが、これに対する政府の見解と対応を示されたい。
また、最終処分場操業の目途がつかない状況では、六ヶ所再処理工場の本格操業は見合わせるべきとの県民の声もあるが、これに対する政府の見解と対応を示されたい。
右質問する。