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令和七年十二月二日提出
質問第一〇〇号

旅費法改正の理念と実効性に関する質問主意書

提出者  八幡 愛




旅費法改正の理念と実効性に関する質問主意書


 国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号)は、長らく実費から乖離した定額支給制度のまま運用され、出張時に公務員が自腹で負担する事例が続発していた。
 これを是正すべく、令和六年四月に約七十年ぶりの大幅改正が行われ、いわゆる「上限付き実費支給」方式が導入されたと承知している。
 本改正法は、各会派の賛成を得て全会一致で可決された法案であり、その理念である「公務の円滑な運営に資するため、職務遂行に必要な経費を適切に補填する旅費制度の確立」という趣旨には、私も全面的に賛同するところである。
 しかしながら、改正の理念は、なお実務において十分に実現されていないとの指摘がある。特に近年は、世界的なインフレ、宿泊需要の急増、国際イベント開催時の相場上昇、さらに海外大都市圏における恒常的なホテル代の高騰が重なり、現地の宿泊費が従来の想定を大きく上回る傾向にあると承知している。
 こうした物価上昇局面にもかかわらず、旅費上限額が為替変動や実勢価格の上昇を反映していない結果、会議開催地近傍に宿泊できず、交通費・移動時間・安全リスクを増大させる本末転倒な事例が生じている。
 このような運用は、「公務の円滑な運営に資する」という旅費法の存在目的と乖離しており、制度改正の意義そのものが形骸化しているおそれがあると考える。
 よって、政府の見解を問う。

一 理念と現実の乖離について
 令和六年改正旅費法は、国家公務員が自腹を負担せずに任務を遂行できる環境整備が趣旨の一つであると承知している。しかしながら、近年のホテル代の世界的な高騰を踏まえない上限額設定により、結果として「業務効率・安全性・健康確保を犠牲にしてでも上限を遵守せざるを得ない」事例が生じている。
 政府は、旅費法の改正理念が実務で実現されていないという指摘をどのように受け止めているか。
二 公務能率と旅費制度設計の関係について
 出張時における宿泊地選定は、公務能率・安全確保・体調管理に直結するにもかかわらず、宿泊費上限を優先する結果、移動に長時間を要し、結果的に公務遂行時間の短縮・生産性低下を招くような制度運用は、「旅費節約」という目的を超えて行政の非効率を制度的に助長することになるのではないか。政府は、旅費法が「総費用(宿泊費・交通費・時間コスト等)の最小化」ではなく「宿泊単価の抑制」に偏している現状を是とするのか、認識を示されたい。
三 上限額の円建て設定について
 海外出張における旅費上限額が、現地通貨ではなく円建てで設定されているのはなぜか。
 特に近年の円安を踏まえると、円建て上限は実勢価格との乖離を拡大させ、会議開催地近傍で宿泊できない事例を生み出している。このような不整合を承知の上で円建てを維持している理由を示されたい。また、円建てを維持することが旅費法の理念である「公務の円滑な運営に資する」を損なうおそれはないか。
四 制度設計の根本的理念に関する認識について
 旅費法は、本来、公務員が任務を遂行するための最低限必要な費用を補填する制度であり、過度な節減を目的とするものではない。にもかかわらず、現行の制度運用が「節約のための制度」として機能しているとの批判があるが、政府として、旅費法の目的をどのように位置づけているか。
 旅費法の目的が公務の円滑な遂行にある以上、現行の運用がその理念を実現していると考える根拠を示されたい。
五 今後の見直し方針について
 令和六年の改正をもってしても、現場での運用が理念と乖離しているとの指摘が相次いでいる。
 特に、近年の海外主要都市における宿泊費の上昇は構造的なものであり、従来の上限額や円建て方式では対応が困難な状況が続いている。
 政府として、@制度設計の理念と実務の齟齬の検証、A為替変動や物価高騰への柔軟対応、B「近接・安全・効率性」を考慮した支給基準の再構築を検討する意思があるか。

 右質問する。

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