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令和七年十二月四日提出質問第一〇七号
日韓の文化財返還問題に関する質問主意書
提出者 上村英明
日韓の文化財返還問題に関する質問主意書
日韓国交正常化六十年を迎え、両国間の友好・親善の一層の深化が望まれる。
日韓基本条約とともに「文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」も一九六五年に締結され、朝鮮半島由来の文化財の引渡しが行われた。外務省ウェブサイトに掲載されている同協定の合意議事録には、「日本側代表は、日本国民がその所有するこれらの文化財を自発的に韓国側に寄贈することは日韓両国間の文化協力の増進に寄与することにもなるので、政府としてはこれを勧奨するものであると述べた。」と記されている。
以下、質問する。
一 この合意議事録にあるとおり、日本国民が所有する文化財を韓国に寄贈するよう政府として勧奨した事案は、同協定の発効以来何件あるか。政府の勧奨を経て返還された文化財の件数及び一覧を示されたい。
二 韓国国会は二〇一三年十二月十日に東京国立博物館所蔵の朝鮮大元首兜・鎧の返還を要求する決議を採択した。同決議では、韓国政府が日本政府に調査を求め、不法搬出が確認されれば、直ちに韓国国立古宮博物館に返還するよう求めよとし、韓国政府に日本との交渉を促している。日本政府は同決議に基づく調査の要請を韓国政府から受けているか。もし調査の要請を受けているのであれば、日本政府はどのように対応してきたか。また、実際に調査がなされたのであれば、その調査結果とその後の対応についても明らかにされたい。
三 韓国国会は二〇一四年十二月九日に現在大倉文化財団が所蔵する利川五重石塔の調査と資料公開を韓国政府が日本政府に要請することを求め、日本政府にも積極的な取組を促している。日本政府は利川五重石塔についての要請を韓国政府から受けているか。要請を受けて、どのように対応してきたか。明らかにされたい。
四 今年五月に、二〇一二年に対馬の観音寺から盗まれた観世音菩薩像が十三年ぶりに韓国から返還され、六月には鎌倉・高徳院にあった観月堂の建物がソウルに返還されたことが発表された。欧州各国では二〇一七年マクロン仏大統領がブルキナファソ訪問時に美術品返還の方針を示して以来、各国の博物館・美術館・大学・研究機関から旧植民地・占領地に文化財を返還する動きが始まり、具体的に進展している。
複雑な経過の多い文化財の返還問題であるが、こうした内外の文化財返還の動きを受けて、日本政府としても、来歴を詳しく調査し、公表して、誠実に対応することが望まれる。旧植民地や占領地から我が国に持ち込まれた文化財、例えば、中国から「戦利品」として持ち出された文化財や琉球から持ち出された琉米修好条約原本等のうち、返還を求められているものについて、日本政府は現在どのように対応すべきと考えているのか。明らかにされたい。
右質問する。

