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令和七年十二月四日提出
質問第一〇九号

特別児童扶養手当の所得制限に関する質問主意書

提出者  丸尾圭祐




特別児童扶養手当の所得制限に関する質問主意書


 特別児童扶養手当(創設当時の名称は重度精神薄弱児扶養手当)は、入所施設の不足を背景に精神又は身体に障害を有する児童について手当を支給することにより、これらの児童の福祉の増進を図ることを目的として昭和三十九年に創設された制度である。
 本手当については創設当初より受給資格に所得制限が設けられているが、例えば厚生労働省が提示している所得制限の表によると年収が六百八十六・二万円に達した場合、手取りが年額六十八・一六万円減少する、いわゆる「崖」が発生する(一級障害の子が一名、収入は世帯主のみの場合)。また所得制限を回避するために働き控えをする、または必要な福祉サービスの利用を控えるなど本来の制度の趣旨を没却させるような状況が発生している。創設当時の平均世帯人数が四・四一人から令和六年現在では二・八四人に減少していることが示すように、核家族化や女性の社会進出などの社会構造の変化により福祉サービスの重要性は高まっており、所得制限を撤廃して対象児童が公平に福祉サービスを利用できる環境を整備することが必要である。
 前記を踏まえて、特別児童扶養手当の所得制限に関して、以下質問する。

一 制度創設当時の審議における小林武治厚生大臣(当時)および黒木利克厚生省児童局長(当時)の衆議院社会労働委員会における答弁(昭和三十九年五月二十七日、昭和三十九年五月二十八日)によれば、当該手当の制度設計にあたり、その性格付けにおいて「所得保障」または「介護費」のいずれを採るかにおいて整理がつかなかったことにより、不本意ながら児童扶養手当と同様の体系が採用され、その結果として所得制限が導入された旨が述べられている。その後、昭和四十一年の制度改正に際しては、竹下精紀厚生省児童家庭局長(当時)により、手当の性格整理を改めて行い、「介護費」としての性格づけを行った旨の答弁があった(昭和四十一年五月七日衆議院社会労働委員会)。また鈴木善幸厚生大臣(当時)は、同手当の所得制限は本来設けるべき性質のものではなく、将来的に所得制限を撤廃する方向で制度改正に取り組みたい旨を明らかにしている(昭和四十一年五月十一日衆議院社会労働委員会)。
 以上の経緯を踏まえれば、当該手当の所得制限は性格整理との整合性を欠く状況にあると考えられるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
二 一方、前述した性格整理があるにもかかわらず、昭和四十四年の制度改正に際し、渥美節夫厚生省児童家庭局長(当時)は、当該手当について「所得制限の規定があるため、所得保障の一環という性格を持つ」という趣旨の答弁を行っている(昭和四十四年六月四日衆議院社会労働委員会)。さらに昭和四十五年の審議においては、坂元貞一郎児童家庭局長(当時)より、「当該手当は所得保障的性格を基本とし、若干、介護料的意味合いを持つ」との答弁がなされている(昭和四十五年五月十二日参議院社会労働委員会)。
 すなわち、昭和四十一年当時において介護費として整理されていたにもかかわらず、その撤廃が実現されていないことを理由として、制度の性格を介護費から所得保障へと変化させたかのような状況が観察される。しかしながら、所得制限は本来設けるべき性質のものではなかったのであるから、所得制限があることを以て手当の性格を所得保障と解釈することには無理がある。以上を踏まえるに、当該手当は所得保障ではなく介護費であると認識するのが妥当だと考えられるが、この認識について政府の見解を明らかにされたい。
三 令和七年十一月二十八日に開催された参議院こども・子育て・若者活躍に関する特別委員会における、小林さやか委員による昭和四十年代当時には所得制限は撤廃すべきものであるとする答弁を厚生大臣が行なっていたという指摘に対し、神谷政幸厚生労働大臣政務官は「障害福祉サービスがまだ未整備であった昭和四十年代当時における厚生大臣答弁を指しているものと承知しておりますが、障害児に対して障害福祉サービスなどの支援が大幅に拡充した現在と状況が異なるものであると考えております」と答弁した。しかしながら、厚生労働省「社会福祉施設等調査」によれば、障害児入所施設の定員数は医療型を除きいずれも減少傾向にある。また、同省「令和四年生活のしづらさなどに関する調査」に基づく推計によれば、特に精神障害者の施設入所者数は平成二十一年度以降一貫して減少しており、令和四年度と比較した場合、入所者数は八・一万人減、入所率は三・六七%減となっている。一方で在宅介護は増加傾向にあり、令和四年度の在宅介護率は九十五・八%に達し、現在では介護の大部分が在宅で行われている。
 このように、制度創設の背景である入所施設の不足という観点に照らすと、当初と比べて状況が大きく異なるとは言い難いように見受けられる。この点につき、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。

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